妄想 マリマイの出会い
〈マイマイ着いたよ〉
「あら…?雪……?」
バ運車に揺られてとある地へやってきたのはマイマイことマイティーだ。同伴してくれた者の声によると目的地にはすでに到着した様子である。
マイティーが毎日レッスンに励んでいる場所__栗東トレセンはここ毎日極寒ではあるが、ここまでの雪は記録してない。しかし、彼女の目に広がったのは、一面真っ白な大雪である。
「北海道かしら…。でも知らないところ……?えっ?こっち?」
彼女をエスコートする厚着のコートを羽織った者たちは、広大な土地へマイティーを案内する。自由に走っていいよ、過ごしていいよと合図を送ると、マイティーは数日前を思い出すかのように走り出した。
「やっぱり知らない場所だわ…それに知らない子たちもたくさん……私大丈夫かなぁ…」
不安な気持ちを身体で表すかのように、その足取りは軽々しさを失っていく。
「あら、ついたのね。ここが私の新しいロケ地……なんてね。女優はもう引退したんだっわ」
真っ白な雪に美しい栗毛がゆらゆらと揺れている。太陽と雪に反射して眩しいほどに綺麗なブロンドヘアーの美しさに言葉を失うほどだった。
(わぁ…すごく綺麗な子…オークスやエリザベス女王杯で一緒だった“あの子”みたい…)
その美しさに圧倒されるのは例外ではなかったようだ。マイティーは恋に落ちたかのように、彼女を見つめていた。
「そこの綺麗な芦毛さん。」
「わ、私ですか…!?」
女優、いや元女優が、マイティーに声を掛ける。広い放牧地でぽつんとひとりぼっちだった彼女が目に入ったのだろうか。
「私、マリリンって言うの。私ここはじめてなんだけど、もしかして貴方も?
もし良ければお友達になりましょう。」
「…私でいいの?私なんかより素敵な子はたくさんいると思うけど…」
「私は“貴方”が良いの」
(だってその端正な顔立ちと芦毛を見ていると“あの子”を思い出すから…)
スタスタと歩いていく歩く元女優を必死にマイティーは追いかける。
「マ、マリリンちゃん待ってーっ!」
これがマイティーとマリリンの出会いだった。