好き嫌い

好き嫌い


ぬいクルーシリーズとは別次元のifローさん(麦わらの一味に保護されたルート)が過去の話をするだけの話です。誤字脱字キャラ崩壊あると思いますがご容赦ください。麦わらヒーリングでifローさんの性格は明るめです。


「ローもやっぱり梅干しは嫌いなのか?」

昼食におにぎりを作りながら黒足屋が尋ねてくる

「あぁそうだな……」

作って貰っているのに好き嫌いする事を申し訳なく思い少し俯きがちに答える

「まぁ同じ人間だから当たり前か。んじゃあこの皿は手付けるなよ」

そんな俺の様子に気づきつつなんでもない事のように流しながら梅干し入のおにぎりの皿を横へと避ける。まぁここの連中は注文が多いから慣れてるだけかもしれないが細かな気遣いを感じホッとする

「別に食べられない訳じゃないんだがな……」

「そうなのか?トラ男が間違えて食べた時はすごい顔してたけどな」

「苦手は苦手だが多分もう一人の俺も食べようと思えば食べられる筈だ。昔は普通に食べてた」

「なにか嫌いになるきっかけでも……あっいやいい」

純粋に気になったのだろう食べなくなった訳を聞こうとした黒足屋だったがトラウマ由来かもしれないと思い踏みとどまったようだ

「別に暗い話でも何でもない。まぁ少し恥ずかしい話ではあるか……人間嫌いだって言い続けると自己暗示にかかってほんとに苦手になってくるらしい」

俺はぽつりぽつりと梅干しが“嫌い”になった訳を話し始めた


・~~~~~~~~~~~~~~~・ あれはコラさんと珀鉛病の治療の為に旅をしていた頃だ。白い痣が浮かんだ身体のせいで俺は気味悪がられることも多く街での物資調達は殆どコラさんがしてくれていた。

「ロー!今日の昼食はなんとおにぎりだ!お前好きだったよな!?」

物資調達から戻ったコラさんが嬉々とした顔で懐から包みを取り出す。手を滑らせて危うく落っことしそうになったがそれは何とか俺が受け止めた。

「悪いっ手が滑っちまって……」

「コラさんしっかりしてくれよ。大事な食料なんだから」

「悪ぃ悪ぃほら食べよう?」

コラさんが包みを拡げるとそこには大きめのおにぎりが4つ入っていた。一つを手に取りコラさんが頬張ってみせる

「定食屋のお嬢さんに頼んで作って貰っ酸っぱ!」

ドジって齧りすぎたコラさんが梅干しの酸っぱさに噎せ返る。話しながら齧ったせいもあって変なところに入ったらしい

「あーもう話しながら食うからだ」

「いやーサンキュ死ぬかと思った」

背中を叩いてやりながら苦笑を零すとコラさんも目の端に涙を貯めつつケタケタと笑った

「でもやっぱおにぎりは梅干しだな。この酸っぱさが美味い。しっかり漬かってるし」

にこにこともう一口齧り始めるコラさんにそういえば梅干しが好きなんだったか、と思い至る

俺はこの身体のせいでコラさんに迷惑かけてばっかだし腹だって身体のデカいコラさんの方が子供の俺より減るだろう。そして何より大好きな恩人に好物を腹いっぱい食べて欲しかった

「……なぁこのおにぎりはコラさんが食べてくれ」

そっと手に持っていたおにぎりをコラさんに差し出すとコラさんはギョッとした顔をして慌て出す

「どどっどうしたロー!?お前おにぎり好きだろう!?気分悪いのか?それとも腹が痛いとか!?」

どうやら体調が悪いと勘違いさせたらしい。正直にお世話になってるからと言えばコラさんはそんなこと気にしなくていいと言って受け取らないだろう。どう言い訳しようかと考えているとコラさんが益々心配し始める

「その俺……」

「あぁ!どうした何処がしんどい!?」

「違うくて……俺その……梅干しが嫌いで食べれないんだ……」

「へ?」

大好きな人に嘘をつく罪悪感から目を反らせば返ってそれが恥ずかしがっているように見えたらしくコラさんは笑い始めた

「そうかそうだったのか。いやすまねぇドジっちまった。誰だって好き嫌いはあるよな。待ってろなにか別の物……」

「いっいやいい、そんなにお腹空いてないし」

「そういう訳にもなぁ……あっ!いいこと思いついた」

そういうとコラさんは残ったおにぎりをちぎり始めた

「ほらこれなら梅干し入ってないからローも食べられるだろ?ちょっと味は薄いかもだけど海苔巻いてるし」

確かに具の入っていない部分なら梅干し嫌いでも食べられるだろう。これ以上の言い訳が思いつかず俺はちぎられたおにぎりを受け取る。でもそれって具の部分だけのコラさんは辛いんじゃ……そう思いコラさんを見つめると案の定

「これでローも食べれるなぁ、って酸っぱ!」

再び梅干しの酸っぱさに噎せ返ることになっていた

・~~~~~~~~~~~~~~~・

「とまぁ恩人に好物を食べて欲しいが為に嫌いだと言い始めて食べないようにしていたら本当に食べられなくなってたって訳だ」

「随分と可愛いエピソードだな」

黒足屋に微笑まれてなんだか小っ恥ずかしくなる。これだからあまりこの話はしないのだ

「まぁでも恩人に何かしてやりたくなる気持ちはわかるぜ」

何処か懐かしそうにしながら黒足屋がそう言葉を漏らす

「黒足屋にも恩人がいるんだな」

「あぁクソジジイだけどな」

そう言いつつもその顔はとても晴れやかで今度はこちらが微笑ましくなる

「っとほれ昼飯出来たぞ。悪いが他の奴ら声掛けてくれねぇか?」

黒足屋も恥ずかしくなったのだろうサッと顔を逸らしながら机に昼食を並べ始める

「分かった」

照れて耳まで赤くなった黒足屋を見ながら今回は痛み分けという事にしておく。俺は黒足屋に頼まれた通り皆に昼食を知らせにダイニングを後にした

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