奴隷x無敵奴隷

奴隷x無敵奴隷


夢というかモブ視点というか

尻切れトンボ










巨人族ではない、れっきとした人間の両親から産まれたはずが、五メートルに達する背丈。周囲との違いを疎んで外海へ飛び出したはいいものの、金に困った身を売られ、巡りめぐって男は聖地マリージョアにいた。悪趣味な“神”に付き従い、彼らの馬や見世物としての役割をこなして日々をやり過ごす。焼きごての痕の疼きにのみ生の実感を得る毎日。

そんなとき、ある奴隷が男の主人の元へやってきた。何やら貴重で人気のあるそれは、彼らの間でレンタル品として使い回されているらしい。上機嫌な主人に呼びつけられた男は、その姿を一目見て驚愕した。

王下七武海、“暴君”バーソロミュー・くま。若く世間知らずな男でさえその名と姿を知っていた。冠する末恐ろしい異名にふさわしい巨大な体躯が、太った主人を背に乗せて地を這っている。あわれな暴君を唖然と見下ろす男に向かって、主人は刀や矢の突き立てられた背から下りながら命じた。

「おまえ、これを抱くえ」

「は、はあ?」

「はー?じゃあないっ! おまえは要領が悪いえ! いつもみたいに犯してやれと言っている!」

「か、かしこまりました……!」

男は主人が購入した獣や身ぐるみを剥がされた屈強な海賊なんぞを相手に、そういった余興をさせられることがままあった。それらはくまとは違い、男と同様に、到底名のある者ではなかったから、無知と恵まれた体躯を活かしてさほど恐れず屈服させて主人を喜ばせることができた。

しかし、今回の相手はくまだ。強くて恐ろしい存在だからこそ七武海なのだと、男は知っていた。

男は目の前に差し出された四つん這いのくまに、おそるおそる手を伸ばした。服の裂け目からは焦げた皮膚と機械的なパーツが覗いている。あの七武海とはこういうものなのか? 同じところへ落ちてきたというのに得体の知れないこの暴君に、犯すことのできる器官が備わっているかも疑問だった。

ぼろぼろの衣服は、これでも天竜人の施しという扱いであるから、丁寧に脱がせる必要がある。男はくまの衣服に手をかけた。彼の皮膚に滲む体液でショートしたのだろうか、バチッ、と指先で散る火花。

「うわあっ!?」

「……」

男の大声に、豪奢なソファで寝そべった主人は「うるさい」と眉をひそめた。くまは天竜人の不機嫌に対してさえ、一切の反応を見せない。

七武海の貫禄なのか知らないが、無体をはたらこうとする奴隷相手にこうまで構わないのは、人格というものがまるっきり存在しないのではないかと疑うほど不気味だ。今まで、男が相手にした他の奴隷たちは、いかに恐ろしい見た目をしていたって、こうではなかった。泣きわめいたり、多少はあれど威嚇したり。

くまの衣服を慎重に脱がせると、その身体はほとんどが機械でできていた。衣服を着込んだ状態で露出する首周りや顔、手足首から先の他は、すべて鋼鉄やビニルパイプで構成されている。素人目にも丁寧に工作されていて、肉の断面などは見えやしないのに、ひどくグロテスクだ。

男は主人には見えないよう、這うくまの背に顔を伏せてえずいた。空の胃袋からせり上がった胃液が、なにかの数値を示すメーターに垂れ落ちて、隙間へ伝っていった。

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