女神魔性転生 クルクシェートラ9

女神魔性転生 クルクシェートラ9

 

 

 

それは本来であれば大地を不毛にする二次被害を起こすような武器であった。投擲武器として使うそれを至近距離でアシュヴァッターマンが打ち込んだ。

 

『帰命せよ、我は障害の神なり』

 

幾重ものテクスチャが、女神とアシュヴァッターマンの間を遮っている。爆炎に包まれた巨大な怪物は、自壊を起こしていた。

「おい、生きてるか?」

「大丈夫だ。」

足場の花が散ってしまったがアシュヴァッターマンはビーマがなんとか回収してくれている。体が軋むが、もう少しなら問題ない。

「アシュヴァッターマン、無茶が過ぎる。」

「アーユスも大概だろ。」

実のところカルナの支えなしには立てないが、お前も同じようなものだろう。

「無事でよかったっす。ところでこれいつまで続くんすか?結界の維持大変なんすけど。」

「聖杯もまだあの中なんだよね・・・。」

「燃え尽きるのを待つしかあるまい。」

自壊しているが、まだまだ内部爆発は終わらない。

「これで終わりっすね。」

ガネーシャ神が言う。

「いや、まだだが?」

湿度の高い声、響く音だけなら心地いいかもしれないが、胡散臭さが台無しにしている。いつの間にか姿を消していたシャクニがそこにいた。

「おっと、暴力はよせ。わしは味方ではないか。」

そう思うなら胡散臭さを消してから言った方がいい。

「わしは嘘など言っておらん。そうだろう。カルナ。」

カルナは無言だったがそれが答えだった。

「わしが本当のことを言って、お前たちは信じんだろう。悪役は悪役にしかなれんと相場は決まっておる。なれんことをすると失敗するからな。」

「・・・まだ、とはどういうことですか?」

立香の問いに、首をすくめながらシャクニが当然のことのように言う。

「半身は生きているじゃないか。」

「それについては問題ない。燃え尽きる頃に花は散る。」

カルナの支える手に力が入る。仕方ないだろう、あれを止めなければカルナの未来も終わるのだから、頑張るしか無かったではないか。

「お前は、わしの甥だろう。欲しがっておけ。」

シャクニが嗤う。ああ、それは、誰かを貶める嗤い方だ。

「そこの青いのが言っただろう。クル族の戦いだと。おい、カルデアのマスター、クルクシェートラは、どうやって終わるんだ?」

「言わずともよい。」

言ってはいけない。ユディシュティラとの約束が守れない。

「答えろ、カルデアのマスター。誰が、誰を殺すんだ?」

「駄目だ、言うな。」

シャクニは賭けだと言った。その賭けは、俺とドゥリーヨダナで成り立った。シャクニは俺が勝ったと言ったのだ。

「ビーマが、ドゥリーヨダナを一騎打ちで、倒す。」

ビーマの目が、俺に向く。そうだ、わかったか、俺に向ける因果はこれだ。カルナとアルジュナと同じ、正史が辿った因縁だとも。

「よく言った。」

空気が、変わる。それはドゥリーヨダナと二人だけの空間に閉じ込められた時と同じものだ。シャクニの領域だった。

「さぁ、今こそ清算の時だ。ようやくお前の出番だ、ドゥリーヨダナ。」

「待て、俺は賭けを了承していない、無効だ!」

「いや、お前は賭け場にきた、わしの宝具が発動した。それだけで十分に成立するとも。」

そう言うのを事後承諾と言うんだ。

「待て、俺が、ビーマに、」

「ダメだな、お前はスヨーダナだ。」

それは、新しい定義付けだ。百王子の長兄の立場、機構としての役割を追われ、どこにも居場所がなかった自分の存在の裏打ちをするものだ。

「そしてお前はドゥリーヨダナ。クルクシェートラの戦いを引き起こした災いの化身。凶兆の申し子よ。」

身体から、何かが抜ける。そして入る。色の抜けた髪は元の色を取り戻す。活力に溢れてくる。反対にドゥリーヨダナの色彩が死んでいく。

「呪いは祝いに、凶兆は吉兆に、因果が変わる。」

不調は一切消えていく。カルナに頼らなくても足に力が入る。

「こいつがドゥリーヨダナだ。そこにいるのはスヨーダナ。悪魔でも凶兆の化身でもない。ただのわしの甥だ。あとはついでにおまけをつけてやろう。」

アシュヴァッターマンの姿が元の幼い姿に変わる。禍々しかったその身に宿る異常な力も抜けている。

「いいだろ、どうせ死ぬんだ。全部引き受けて死ね。」

シャクニはいい笑顔だ。弟を盾に取られている。

「ビーマセーナ、一騎討ちだ。」

「やめろドゥリーヨダナ!」

スヨーダナ、そう言おうとしたのに、実際には別の言葉になった。覚悟をした顔をするんじゃない。欲しがれとは言ったが凶兆まで欲しがる奴があるか。ビーマ、お前もだ、一人で決めるな背負ったりするな。

「私はドゥリーヨダナ、百王子と王女の、クル王家の長男である!!」

「待て、ビーマ!!」

お前の因果は俺だろうに、風のようにビーマの拳がドゥリーヨダナの胸を貫く。血飛沫は花弁になってビーマの風に舞う。瞬きの間にその体も花になって風に乗って飛散していく。

「言い訳はしねぇ。」

お前は正しいことをする側なのだから、そんな顔をしないで欲しい。半ば強制されたことを、必要であったことをなしただけで、多分ユディシュティラはそうですかの一言で許すだろう。

「・・・兄の願いを叶えてくれたこと、感謝する。」

全部、持っていかれてしまった。宙に浮いた存在だった自分は今地に足がついている。

「半身は死んだが、もう一つ問題だ。あれはあくまで大地の女神の分霊に過ぎない。核さえあれば時間をかけて復活するだろう。カリの生産は終わらない。地面を見ろ。それはあれの骨格の一部だ。結界で本体とは切り離されているが本質的に無かったことにはできない。いずれ年月をかけて半身を再生し、人類を殺し尽くすだろう。」

体が死んだくらいで機構は止まらない。細切れに僅かに残った肉からそれは再生される。

「これについては簡単だ。核を誤認させればいい。ほれ。」

気がつけはシャクニの腕の中に端々が燃えているドゥフシャラーの身体があった。途端に一気にテクスチャの内側の自壊が進む。テクスチャ自体も小さく萎んでいく。炎の勢いが強くて誰かの断末魔の声は聞こえない。

「もう一つの清算が残ってただろう。あの女は許しておけん。」

「あの人に召喚されたんじゃ。」

「バカ言うな。あの女の声になんぞ答えるはずないだろう。死に際に、願われた。それだけで、わしにとっては十分だったということだ。」

お前はそういう男だったな。姉を殺した原因を作った女を生かしておくほどの度量はない男だ。

「心配するな、スヨーダナ。マハーバーラタは起きたとされる叙事詩。将来的に、そういうことにすればいい。適当に書き綴れ。いくらでも書き換えろ。それでどうにかなるならいいだろう。」

「・・・人数削減してなくないっすか?」

「問題ない。準備期間は十分だった。女神の調節で6億人はあの女が殺したぞ。」

「6億足りないっす。」

「パラシュを投げただろう。大地の補強になっている。父神の加護を信じろ。蔓延ったカリもいい補強になる。よかったな。」

緩やかに燃焼している炎は徐々にシャクニの体も焼いていくにもかかわらず、その表情は穏やかだった。

「愛しい甥、因果はあれが全部持っていった。無理さえしなければ人して生きれるぞ。お前の眼は、姉さんに似ている。その眼で世界を見て、生きておけ。」

この体は、母が身を挺して守った。その母の死に際の念がシャクニを呼んで、長い間それに報いたことは本当のことなのだろう。これは彼が見ている泡沫の夢、そして夢の終わりが今なのだろう。

「カルナ。燃やし尽くしてくれ。」

カルナが弓を弾く。ヴィジャヤの炎が、シャクニと異形の身体を灰さえ残らず焼いていく。そして浮かぶ魔力の塊、聖杯だ。

「これが目的だろう?」

ふよふよ浮かんだ魔力の塊を立香が回収する。

 

『聞こえるかい!!やっと通じた!・・・もしかして、全部終わってる?』

 

声は、伸びやかに高い、異国の服を着た少女が宙に映し出された。これがカルデアのものか。

「今、終わったところ。」

『そうかい。でもすまない。ジャミングがなくなった途端にそちらへのレイシフトも不安定になった。早急に調節しているから、残り5分くらいは時間はあるよ。』

「ありがとう、ダヴィンチちゃん。」

『いいよ、忙してすまない。帰ってきたら、君の話を聞かせてくれ。』

宙に浮いた画像も消える。

「さよならだね。」

「ああ、世話になった。お前たちがいなければ、どうなっていたかはわからん。」

「俺からも、兄ユディシュティラの代わりに礼を。今回の助力、誠に感謝する。」

5分は短い。すぐに立香の周囲に青い粒子が舞う。

「立香。カルデアには俺の亜種がたくさんいるんだろう?もし、ドゥリーヨダナが召喚された時には、よろしく頼む。」

「もちろん!待ってるよ。」

光に包まれて、カルデアが消える。向こうに戦車が見えた。ドゥフシャーサナとヴィカルナがいた。終わりはしたが、問題は山積みなような気もするが、ひとまずはこれでいいのだろう。全部シャクニの手のひらの上のような気がするのが一番嫌だが、それには目を瞑ろう。

これからが、記録されない叙事詩の始まりなのだから。

 

 

 

 

 

光が見える。縁を辿り導かれる。虹色の光の中目を開けると、懐かしい顔が見えた。

「スヨーダナ・キャスター。六王子長兄の義弟であり百王子の長兄である。名前が長ければスヨキャスでもアーユスでも好きに呼ぶと良い。兄様と弟は来ているか?」

もう少しの間、お前たちに力をかそうではないか。

 

 

 

余談

 

 

正しくあることをできなかった時点で、この結末は決まっていたのかもしれない。

全ての業がこの体に収束する。枯れかけているスヨーダナの因果も、シャクニに負わされたシヴァの化身の因果まで入ってくる。力が抜ける。立っているのもやっとだ。それでも叫ぶ。

「私はドゥリーヨダナ、百王子と王女の、クル王家の長男である!!」

私はドゥリーヨダナ、クル王家全ての凶兆を引き受ける者、スヨーダナはこれから望まれる百王子の長兄、それでいい。クルクシェートラはビーマにドゥリーヨダナが殺されることで終息するするなら、それでいい。スヨーダナ、お前の因果で既に死にそうだ。早く、私を殺せ、ビーマセーナ。

 

「がぁっ、」

 

一瞬のこと、拳が胸を貫く。意識は闇に埋もれていく。それでいい。ああ、本当に、最後くらいは、長男としてあれただろうか。

 

 

 

思考が、戻る。光に導かれて、視界が開ける。

「私はドゥリーヨダナ。ドリタラーシュトラの長男、百王子と王女の兄である。大地の導きのより召喚に応じた。よろしく頼む。クラス?プリテンダーだが?」

ここから、新たな関係を始めることが出来るだろうか。

 

クリア報酬星4プリテンダー

ドゥリーヨダナ(ユユツ)

Q全体宝具、『一より分かれし百王子(ジャイ・カウラヴァ)』

概ね素ヨダナと同じだが、出てくる百王子はカリである。

クリア後フレポから出るよ。再臨、スキル素材は素ヨダナと一緒。

ユユツオルタからの反応だけが心配。

カルデアで幸せになってくれ。

 

実装あるとしたら下の通りだと思っています。

 

スヨーダナ・キャスター 星5キャスター 期間限定

性能?アーツ版オベロンです。

シャクニがスヨーダナと定義するまではアーユス(プリテンダー)でプレイアブルだったが、全ての業をユユツに被せることにより花の体なのは変わらないがきちんと物語の人物になったため存在が確立した。そのためプリテンダー(カルナの弟)としての召喚ができなくなった。元々ユユツに百王子の長兄、ドゥフシャラー(仮)に機構としての役割を持っていかれているため、歴史として存在が不要とされていたためいつ神様の気まぐれで回収されたりただの花になって消えてもおかしくなかったがカルナが太陽神の子であり、半神に望まれたため現在まで存在を確立できていた。シャクニのおかげで制限は無くなった。

キャスターなのはインドでは苦行をすると神通力が上がるシステムらしいので、王子でありながら平民として顔を隠して生活していたことが苦行認定されたこと、シャクニがキャスターだったことが関連。

ヨダナ属だが弟を搭載できないタイプ。

 

カルナ 星5アーチャー スト限

アーユスが召喚されていない場合召喚サークルに手を突っ込んで引っ張て無理に召喚するタイプ。

自分が召喚されていない場合は呼符で気合いでこようとする。言葉が足りなくても弟には通じるため通常よりも口数は少ない。長く話すとCCC前のカルナ語なのでキレッキレ。

 

アシュヴァッターマン 星4ランサー スト限

第一臨 出会った頃のショターマン、第二臨修行後、第三臨食育のおかげで195cmになったアシュヴァッターマン

スヨーダナとジュナオのだっこ形態をみて俺もしたいと言って自分が第三臨になってアーユスを抱えてご満悦する。兄上は自分がジュナオの方だと思ってたため宇宙背負ってる。

 

ドゥフシャーサナ・ヴィカルナ 星4アルターエゴ 二人一組サーヴァント。徐福系アルターエゴなので兄愛特化。97人内包済み。 恒常

ビーマ 星4セイバー 拳で戦う方 恒常

百王子とビーマについては共通の敵ができたことで敵の敵は味方理論で喧嘩しつつも決定的な不和はない。むしろ悪童同士になっているため、もしスヨーダナ・キャスターと百王子、ビーマのみが召喚されたカルデアでは従兄弟同士で仲良く戯れ合っている姿が見れる(百王子長兄としたい千のことを実行中)。その姿を見て五王子オルタたちやノーマルビーマの頭にバグが起こりうる。

もしカルデアにビーマ、アルジュナのみでパーンダヴァしかいない状態でスヨーダナ・キャスターとセイバービーマのみが召喚された場合、食べ物をセイバービーマにあげようとしてビーマが善意でスヨーダナ・キャスターの右手を吹き飛ばす可能性はある。

 

シャクニ 星3キャスター 物語で召喚したのはガーンダーリー(真) 恒常

姉を死なせたやつは許さない。姉に似ている長男の立場を奪った奴も許さない。ガーンダーリー王妃の味方。細々とした道筋を彼がつけてくれたおかげで色々な神や大人の介入が最小限で済んだ。

 

ドゥフシャラー(プリテンダー) 別イベント配布

かなり時間をかけて大地の女神の受け皿として調節されていたが、時間がかかった理由は別の魂が邪魔をしていたから。

完全な羽化ではなかったのも中の人が頑張っていました。そうです、序盤でお亡くなりになったガーンダーリー王妃です。

川に投げ出された時、アーユスが川底に沈んでいればそれを女神が回収して同化、即人類滅殺になっていた。命を持って阻止した代わりに魂ごと取り込まれてドゥフシャラーの肉体が大地を結ばれた時点で体に潜り込んでなんやかんやしていました。

魂は擦り切れかけていて限界だったのでこのような展開に。

 

個人的にオーディールコールにプリテンダーがあったらというifで書かせてもらいました。

ユユツ、ドゥリーヨダナ、ガーンダーリー、ユユツの母親が別の役を被っているので。

 

このあとドゥフシャラー(プリテンダー)分離イベントが起きるかもしれない。

 




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