女性死神の会合
その豪華絢爛な姿を、なんというべきか。麗しい女性死神達の華やかさ、親しみと慈しみを込めたくなるもの。
「このお菓子美味しい〜」
「ちょっと溢さないでくださいよォ!」
「コーヒー飲む人、淹れるから手をあげて…朽木さんは駄目よ!!」
「こ、これは……何とかわいい…!!」
うん、姦しいやな。女性死神協会の賑やかなざわめきは続く。
平子は座布団を枕にして寝そべったまま、あくびを噛み殺した。うららかな午後、朽木白哉邸に集められ行われているのは女性死神協会の定例会議。
特に議題は決まっていなかったが、乱菊が「定例会ですんで」と提案したものだから出席すると……こうして一所に集まり、近況報告に花を咲かせていた。誓ってサボりではない。これも立派な仕事のウチである。
平子としてはルキアの懐妊話に興味があったのだが、彼女たちの話はそちらには向かない。リサや白はーーと視線を移せば、我等若者に関せずと持ち込んだ本や菓子に手を伸ばしている。さすがマイペース。平子も含めて仮面の軍勢は、女性死神が話し終わるのを待っている。
不平をこぼすつりはない。しかしこのままでは本日の議題はいつまでも決まりそうもない。
早く終わってくれないだろうか。つわりも終わり、胎動がわかるようになったが相変わらず薄いままの腹を撫でながら平子は思う。腹の子を特に心配している訳ではないが、もういっそスポーツか音楽の話を振ってくれないだろうか。未だ何の話題を振られない顧問である。
「……花摘み行ってくるわァ」
「平子隊長、場所は分かりますか?」
毛並みのいいタオルケットを腹に掛けたルキアに問われ、平子は起きあがりつつ視線を返す。
「大丈夫やでェ。ルキアちゃんはあんま動かんとき」
適当に手を振り、扉をパタンと閉める。広い廊下を進みつつ、(俺は流石に無理でも女性死神協会からルキアちゃんの出産祝いはしてやるんやろうか)などを考えていた。
「で、修兵がさあ〜。おっと、もうこんな時間?」
平子がトイレから戻りゴロゴロとしている間に結構な時間が立っていたらしい。乱菊が時計を見るなり立ち上がる。
「何かササッと考えましょ…何か懸案事項ありませんか平子隊長」
「何で俺名指しやねん」
「顧問、何でもいいですよ」
「ブチかましちゃいな〜シンジ」
「………ナイなあ。強いて言うなら、この座布団寝心地悪いわ。新しいの買わんか?必要経費やろ」
平子の言葉に女性死神協会の面々は、顔を見合わせる。
「……その、備品類は前会長が揃えたものでして」
「さよか…思い出の品やなァ」
平子は姿勢を正し、座布団の上に腰を下ろす。
女性死神協会前会長であった草鹿やちるは、護神大戦後行方不明のままだ。関わりが多かった訳ではないが、明るく元気な笑顔を見せていた、少女然とした死神を思い出す。
「そんなら、俺からは無いわ。今日は解散や」
「もっと気張りやシンジ」
「じゃあお前に…振ってもアカンな。任せたスーパー名誉顧問、いてこましたれ」
「アタシはね〜〜、ない!!」
平子の投げやりな態度からバトンタッチされた白は声を張り上げる。
「そろそろ隊長に怒られそ…時間も時間だから一月後に集まりません?それまでに議題を1人一個持ってくるってことで」
「……異議ナァシ」
本当はルキアの妊娠に併せて、自分の経験を交えながら「女性死神の妊娠出産とそれに伴う長期休暇」をテーマにした細則の作成でも議題にあげようと思ったが、女性死神協会幹部を見るにこのテーマはまだ早そうだと判断した平子は無難に肯定し、その場はお開きとなった。