女子会、後の飲み会

女子会、後の飲み会


「はい!はいはい!第1回スノーフィールド警察署女子会〜!いえーい」

「い、いえーい……?」

閑散とした会議室。

可憐な女子が3人ほど。

「あ、ケーキ買ってきたんだけど食べます?はいエリス、あーん」

シチャー・サツキ。

時計塔に脅されてスパイをしていたけどそれとは別に実は聖堂教会の代行者だったり……あと料理が下手。

まじで酷い。

食べる産業廃棄物、署長を3回殺してるらしいぞ。

「……ん、美味しい。というか、いつの間に名前呼びに……」

エリスちゃん。

苗字は?って聞いたら本人が答える前に「そのうち彼氏の苗字になるだろ」ってクランカラティンの子が爆笑してた。

でもあれ本人達はみんなに秘密で付き合ってる気らしい、もう署内ではバレてるとか言えない……。

「で、そこの時計塔の奴は?ケーキ食べます?」

……キレ気味。まぁしょうがない、私時計塔所属だし。

私はカリュー・シュバインオーグ。

最近レッドライダーも馴染んできた、彼氏との仲は……まぁ……良好……かも。

「まぁいいや。ほら!せっかく集まったんだし恋バナしましょうよ!」

「えー……」

「む……」

「反応悪……な、なんですか……2人とも彼氏持ちでしょ?」

「ま、まぁ……そうですけど……恥ずかしいっていうか」

「私は……話すほどのこともないからな」

「えー!味気なーい!」

「そういう君は?何かあるのか、サツキ」

とりあえず聞き返してみる。

……あんまり想像つかないが彼女にも何かあるのかもしれないし。

「そうですね……署長に手作りのお弁当届けたらキャスターさんから苦情来ました。兄弟を毒殺する気かって」

「あぁ……あれ……」

エリスは何かを察したようでそっと目をそらす。

「……?どんな酷い弁当を……」

「酷くないですー!署長は美味しいって言ってくれたし!」

「署長が甘やかすから……」

苦々しく呟くエリス。

「な、なにおう!そういうエリスはどうなの、彼氏とは!どうせまだちゅーもしてないんでしょ!?」

「……そ、それくらいならあるし」

「……え?」

「は?」

「な、なんですか……別に、もう付き合って1ヶ月ですし。それくらい余裕でありますから」

「えー!!やだ!エリスの破廉恥!!」

「う、うるさいですね……もう……そういう貴方は?署長となにかないんですか、毒殺未遂以外で」

「毒殺未遂した覚えはないんですけど……」

「したでしょ」

「してなーい!……うーん、署長と……」

沈黙。

そのまま30秒ほど経過する。

「……無いんですね」

「無いのか……」

哀れむような視線を向けられたサツキが騒ぐ。

「い、いや無いわけじゃないし!なんか……なんかあるかもしれないじゃん!」

「何か……あぁ、そういえば署長がサツキの料理」

「待ってそれ聞きたくない!知ってる!!クソ不味いって言ってたんでしょ!?!?同僚から聞いたから!!!」

机に突っ伏してしまう。

多分今ちょっと涙目だなあの子……。

「いえ、最近ちょっと上手になったって褒めてましたよ」

「……マ?」

顔を上げる。

「マジです」

「やったー!署長優しい!最高!」

「……はぁ、私は甘やかしすぎだと思いますけどね。そろそろデュマさんのところにぶち込んでお料理教室させるべきでは?」

「冗談も程々にしてください。私の料理の腕は教会で鍛えられてるので大丈夫です、得意料理は麻婆豆腐」

「何も大丈夫じゃなさそうだな……」

教会の料理……というか、聖堂教会の奴らは味覚がおかしいと思う。

なんたってあんな辛いものばかり……。

「……教会、といえば!最近スノーフィールドの教会に新人の代行者が来たんですよなんでも南米の大蜘蛛を追い返した天才だとか」

「例の水晶蜘蛛か?」

信じられないと同時に頭が痛くなる。

教会怖すぎ。

「そうそうそれそれ、空中殺法で新参の二十七祖を追い返したとかなんとか。でもほら、あのアサシンのマスターにストーカーされてるらしいとか」

「あぁ、警察署で高らかに愛の告白をしてたとか言う死徒。嫌なのに惚れられてるな……」

「あれでも本人は満更でもないっぽいって聞きましたけどね」

「マジ????」

「死徒……確かジェスターとか言いましたっけ。あいつが言ってましたよ」

「なんだただの偏向報道か」

「く、くも……?にじゅうななそ……?」

「って、エリスは知らないか……まぁ知らない方がいいですよ」

「知っててもいいことないしな……というか、もう20時だがエリスは帰らなくてもいいのか?彼氏が心配するぞ」

「えっ、あ、その、それは……」

顔を真っ赤にして俯いてしまう。 

「おお、効いてる効いてる……あ、今メールしたらジョンさんが迎えくるって。良かったですねー」

「!?」

「はは、にしても羨ましいな。私の恋人は今頃ロンドンだし、サツキは彼氏いないし」

「やかましいですね時計塔のカスが。姉さんを人質にとって私を脅したのも全然忘れてませんからね」

「アレやったの多分法政科だから……」

「マ?……じゃあ許す、でも彼氏はそのうちできるからな首洗って待っててくださいよ!」

「はいはい……」


「こんばんは……エリスの迎えに……」

「あ、ジョンさん。夜中までお疲れ様でーす」

「む……君は義手の警官、元気そうでなによりだ」

「あぁ、いえ、お二人もお変わりないようで良かった。……エリス、帰ろう。もう遅いから送っていくよ」

「あ、あの、その為にわざわざ……?」

「あぁ。今の街は危険だし、この間みたいに死徒や他のマスターと会ったら危ないだろ」

「……うん、ありがとうジョン君」

「気にしないでいいよ」

2人とも笑っている。

……微笑ましいな。

「あ、そうだ。帰りにケーキ買っていこうか。良かったら上がって行って、2人で食べよう?」

いつの間にかエリスは照れ臭そうに義手の警官と腕を組んでいる。

……見てるこっちが恥ずかしくなるな、これ。

「む……それならこれを持っていくといい。たまたま作り過ぎたんだ」

2人分のケーキを押し付ける。

「いいんですか?あの、お二人は?」

「私たちか?私たちはこれから二次会だからな」

「は?聞いてない……いや、二次会……ってことは酒ですね!奢れ」

こちらもニコッと笑って私の背中をバシバシ叩いてくるサツキ。

……まぁ愉快な子だし、彼女となら場末の居酒屋で酒盛りもありかもしれない。 

「……ってことで!一旦解散!エリスおつかれー、彼氏と仲良くねー」

「う、うるさいですね……それじゃあ、お疲れ様でした」

「あ、カリュー……だっけ?呼び捨てでいいですよね。あの子誘いましょうよ、最近入った代行者の子。ORT撃退とか超気になるし!」

「そうだな……2人で飲むのもアレだし、誘うだけ誘ってみるか」


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