女剣豪×探査機=小旅行Ⅲ

女剣豪×探査機=小旅行Ⅲ

名無し

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ブーディカ「という訳で、孔明先生もとい名探偵ロード・エルメロイⅡ世さんに来てもらったよ」


エリセ「え、エルメロイⅡ世さんって探偵だったんですか?時計塔で教鞭を執られていたって話じゃあ」


エルメロイⅡ世「……元いた世界であれこれ立ち回った結果として探偵の真似事になった事はある。


ですが、ミスブーディカ。

私はあくまで魔術師です。名探偵なんて称号はまるで似つかわしくありませんよ。」


ブーディカ「ふふ、ごめんごめん。でも私からしたら君も遠ーい子孫である事は間違いないからねー。つい孫可愛がりしちゃうんだ。まぁ、大目に見てよ。」


エリセ「それでエルメロイⅡ世さん、ボイジャーは……」


エルメロイⅡ世「 ああ、話は聞いている。

まずは状況を整理しよう」


エルメロイⅡ世「断言はできないが、件の宮本武蔵は十中八九本人と見なしていいだろう。


外部犯が武蔵に成り済まし、

姿を現すメリットは薄い。


陽動やカルデア内部のサーヴァントによる成り済ましの線も考慮し、千里眼を持つマーリン氏に道すがら聞き込みをしてきたが、そういった怪しい動きはその時刻には無かったらしい 」


藤丸(……オベロンならマーリンの千里眼を掻い潜れるだろうけど、動機が思い付かないな。

念のため本人に何か問い詰めても──いや、やめとこう今日は機嫌が悪いだろうから。最後の方の手段にしとこう)


エルメロイⅡ世「また、マーリン氏は、武蔵とボイジャーが同時刻の世界のどこかに転移したり、虚数空間に潜伏している様子は観測できないとも言っていた。

であれば、あの二人の消失は話に聞くドリフトという芸当によるものなのだろう」


エリセ「千里眼でそこまで見通せるのか……、さすがは音に聞こえし大魔術師だ」


エルメロイⅡ世「……そうだな、ああいう者こそが冠位の術者として相応しいのだろう。」


エリセ「あ。えと、すみません!当て付けとかじゃないんです!」


エルメロイⅡ世「あぁいや、すまない。

こちらこそ大人気無かった。


私は非才の身なれど自分の戦場を自ら選んで決めた人間だ。

そんな輩の個人的な感傷など、

否応なく立ち位置を定められて苦悩していた君の前で見せるべきものではなかったな。」


エミヤ(…………)


エリセ「……お気遣い感謝します、エルメロイⅡ世さん。

でも、その人がどれだけシリアスなのかは他人が勝手に決める事じゃあないですよ。 


まぁ、これは友達の受け売りなんだけどね」


エミヤ「……ふっ……これは一本取られたな、ロード。」


エルメロイⅡ世「ああ。レディ宇津見は素敵な友人をお持ちのようだ」


藤丸(……あれ?先生はともかくとしてエミヤの声と表情も心なしか柔らかいような……?)

 

エルメロイⅡ世「マーリン氏の証言は先程のもので全てだ。これ以上は"紋様の美しさが損なわれてしまいそうだ。"と言って黙秘された」


ダヴィンチ「へえ。でも彼にしてはえらく気前が良いね。いつもはよっぽど危ない時か楽しめそうな時しか出張ってこないのに」


エルメロイⅡ世「" かつての周回仲間のよしみだ。虚言は抜きで教えよう。"との事だ」


藤丸「その節は大変お世話になりました!」(お辞儀)(直角)(シームレス)


ゴルドルフ「(ゴホン!)あー、君たち、雑談も結構だがそのあたりにしたまえ。」


エルメロイⅡ世「失礼。話を戻そう。


繰り返すが、ボイジャーを連れ去った人物が宮本武蔵本人であるという説が濃厚だ。


武蔵が何かに乗っ取られてる という可能性も現時点ではゼロにはできない。

だが、今はそこを掘り下げるよりも"なぜ宮本武蔵が召喚されたのか"について考察した方が事態解決に結び付きやすいと私は考える」


マシュ「先生お得意のホワイダニットですね」


エルメロイⅡ世「その通りだ、レディ。

さて、ここからは講義の時間だ。

マスター、食堂の監視カメラの記録映像を見返した上で武蔵の言動に気になる点は無いか?」


藤丸「う~ん、ボイジャーを連れ去った事……いや、そこはそもそも武蔵ちゃんだしなぁ」


エリセ以外((それは、まあ……うん))

エリセ(えっ 皆して何その反応)


その時、不意に藤丸は思い至った。

藤丸「……"君の心が、晴れる場所に"」


エルメロイⅡ世「そうだ。その言葉にヒントが隠されている。では、"マスター"が存在する場合、喚び出されたサーヴァントにはどんな現象が起こり得る?」


藤丸「…………マスターの性格がサーヴァントの思考に反映される──つまり今回の武蔵ちゃんのマスターは、ボイジャーが元気付けられる事を望んでいる?」


エルメロイⅡ世「合格点だ。

そして、そのように望むのはボイジャーに近しい、縁深い人物だと想定するのが自然だ。

したがって、武蔵のマスター候補として最も有力なのは──」


エリセ「……私?」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


山を登ってきた武蔵とボイジャーは竹林の中の開けた場所に行き着いた。

昼下がりの陽光が地面をほんのり黄金色に照らしている。


武蔵「よし!それなりに登って目的地に近付いたし、ここいらで一旦休憩!ご飯食べようか!」


ボイジャー「ここまで はこんでくれて ありがとう むさし。でも なにか たべもの あったかしら」


武蔵「ええ。ここに、小さくてとびきり美味しいのが。」


ボイジャー「?」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



武蔵「~ぃよっとぉ!」


ボイジャー「わっ ぬけた 」


武蔵が地面から引き抜いた物体を両手で受け取り、ボイジャーはそれを興味津々な様子で見つめる。


ボイジャー「これは、なにかしら?」


武蔵「これはねぇ "タケノコ"っていう食べ物なの。周りにたっくさん生えてる、真っ直ぐで、背が高くて細い緑色の木あるでしょ。これは"竹"って言う植物で、タケノコはその子供なの」


ボイジャー「へえ きみ こどもなんだ。 すまないけど…… ありがたく もらうね」


武蔵(食材に自然に話し掛けてる~!愛おしい~……!)


ボイジャー「でもこれ どうやって たべるの? そのまま いくかんじ?」


ボイジャーの疑問に、

武蔵は神妙な顔で答えた。


武蔵「刺身で、頂く。」


ボイジャー「さしみ。」



★武蔵ちゃんの剣豪クッキング★



武蔵「まず火を起こォす!」

ボイジャー「ついた」


武蔵「湯を沸かす!」

ボイジャー「あかいなべだ」


武蔵「皮を剥く!」

ボイジャー「むく」


武蔵「ちょいと切る!」

ボイジャー「きる」


武蔵「煮る!」

ボイジャー「にる」



静かな竹林の中、

くつくつ煮立つタケノコを眺めるふたり。



武蔵「待ちましょうか」


ボイジャー「うん」



二人は横に並んで地面に腰を下ろし、丁度よい大きさの岩に背中を預け、しばし体を休める事にした。


竹林は沈黙を保つかのように思われたが、凪もつかの間、一陣の風が訪れ、少年の頬を撫でる。


さわさわと葉っぱが揺れる音に続いて、かこん、かこんと優しく響く音が周囲にこだました。


ボイジャーは目を閉じ、耳朶を打つ快い調べを深く味わおうとする。


その様子を横目に見た武蔵も少年と同じものを感じてみようと目を瞑り耳を澄ませた。


ボイジャー「このおと…… いいね。 きいてて とても おちつくし きもちいい」


武蔵「乙な趣味してるじゃない……風に揺られた竹同士がぶつかる時の音……私も好き」


ボイジャー「たけの おとなんだ……。

たけって すごいや。たべられるし おんがくも じょうずときた」


武蔵「あはっ、そうよー。コップにもできるし、建物にもなるし。

あと、えーと確か前にマシュちゃんが言ってたんだけど……エジソンさん、いるでしょ。カルデアの」


ボイジャー「うん、ぼくが うまれた きっかけとも いえるひと」


武蔵「あの人が昔、電球を作ろうとした時、その材料として京都の竹を使ったそうよ」


ボイジャー「そうなんだ……!

たけも きょうとも すごいや。

むさしの いってた とおり きょうとは まだまだ そこがしれないね。」


武蔵「ええ。なんたってまだとっておきが控えてるんだから。真髄の『し』の字も見えちゃいないのです。」


ボイジャー「これより……うえが……(ごくり)」


柔らかな陽光の下、共に瞼を閉じながら、少年と女剣豪は他愛のない話に花を咲かせる。


──そんな中、ふたりに忍び寄るひとつの影が在った。

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