女剣豪×探査機=小旅行 Ⅰ
名無しマスターはおにいちゃんだし、エリセをまかせてもよいとおもうんだ
だからぼくはキッチンであまいものをたべにいくね…
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~食堂にて~
ボイジャー「……もっ……もっ……」(どこか憂いげな表情でドーナッツを頬張ってる)
ブーディカ「どうしたの?元気ないねー?
いつもなら目をキラキラさせながら食べてるのに。もしかして……今日の手作りドーナッツ、美味しくなかったかな?」
ボイジャー「ううん そうじゃないんだ しんぱいさせてごめんね ありがとう ブーディカ」
ブーディカ「じゃあ、何かあったの?」
ボイジャー「……うん エリセと……マスターのことなんだけどね、」
ブーディカ「うんうん」
ボイジャー「エリセは まえから えがおをうかべるこではあったけど どこかずっととげとげしてて こごえているようでさ でも ここにきてから マスターとなかよくなってから やわらかく ぽかぽかしたふんいきになったんだ」
ボイジャー「そうなってよかったなぁって ほっとしているのだけども なぜか さびしくもあるんだ これって "しっと"っていうものなのかしら」
ブーディカ「そっかー、なるほd
武蔵「 話 は 聞 か せ て も ら っ た わ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
ボイジャー「わっ!?」
ブーディカ「わっ、ってええ!?あなたデータロストした筈じゃあ──」
武蔵「ふっふっふ、細かい事は言いっこ無しなのです」
ボイジャー「えっ!?ふ、ふーあーゆー?」
エミヤ「む、何事だ?……!?ボイジャー!
その女から離れるんだ!早く!!」
武蔵「へぇ、君、ボイジャーって言うんだ」
(ボイジャーに近寄りしゃがみこむ武蔵)
エミヤ「それ以上動くな!」
武蔵「食堂のお兄さんは相変わらず固いなぁ、かつての同僚の生還を祝ってくれてもいいんじゃない? あ、うどん作ってよ、君の作ってくれたやつ美味しくて好きなんだ」
エミヤ「かつての味方に擬態した敵、という線も大いに有り得る。仮に本物だとしても君をいたいけな少年に近寄らせるのはよろしくない」
武蔵「本物だってばー」(レイシフトの機械がある部屋まで辿りつくのは簡単じゃないかぁ、押し通るか。
いっそドリフトで──いやそれじゃあこの子を連れ──)
瞬間、ボイジャーから金色の光と風が巻き起こる
エミヤ「──なっ!?」
武蔵(ん、この感じ……前に聖杯にうどんをよそって食べた時に似ている……)
武蔵「ねぇ、ボイジャー君。もしかして聖杯持ってたりする?」
ボイジャー「う、うん。ぼく せいはいなら もってるよ」
武蔵「なるほど!それなら!
お姉さんにしっかり捕まってて!」
ボイジャー「う うん でも どこにいくの?」
武蔵「君の心が、晴れる所に!」
エミヤ「待て!」
武蔵「よーしそれじゃ行くよー!
あと言い忘れてたけど、私の名前はね──」
武蔵「マイ! ネエェーーム! イズ!!
ムサシ ミヤモトオォーーーーー!!!」
かくしてドリフトは敢行され、
女剣豪と少年とのつかの間の旅が始まった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
武蔵「──っと」
ドリフトで辿り着いた先、
そこには鳶の鳴き声が響いていた。
ボイジャー「ここは──」
淡い晴天の下、それに釣り合うような若草色が広がっている。そして遠くに朱色がふたつ。
武蔵「むっ。あそことあそこにあの鳥居があって……後ろは、この山。そしてあの道……
唐突に思い出した!京都だわ、ここ。」
ボイジャー「……その くちぶりだと ゆきさきは わかっていなかったのかい?」
武蔵「うっ」
ボイジャー「……みきりはっしゃ?」(じとー)
武蔵「そんな事もあります! いや無いっていうか……!……私のドリフトはいつもそうなのです。ごめんなさい、聡い子なのね、君」
ボイジャー「ふふっ、いいよ。ぼくだって あてのないたびには なれっこさ。こんなすてきなばしょにつれてきてくれて ありがとう むさしさん」
武蔵「い、いえいえ!どういたしまして~
(……天使かな?)」
武蔵「でも君、自分で言うのもなんだけど、よく私について来る気になったわね。食堂のお兄さんの言い分ももっともなものではあったと思うけど、どうして?」
ボイジャー「きみも さびしそうにしてた きがしたから。ながいたびをしてきたひとのように
おもえたんだ」
武蔵「……参っちゃうな~そこまで分かっちゃう?
(仏かな? アルカイックスマイルってやつかな?)
ボイジャー「ところで きょうとって……たしか ますたーが すんでいた くにの ちめいだったかしら」
武蔵「ええ、そうよ。詳しいのね。」
ボイジャー「きんとき たちも いいところだっていってた。 かぜが きもちいいね」
武蔵「えらく素朴なところに魅力を見出だすのね。(かわいい……)
でも、此処の良いところはそんなもんじゃ収まらないわよ!」
(むんず)
ボイジャー「わっ かたぐるま かい?」
武蔵(はぁ~おみ足すべすべ~
ふわふわしてていい匂い~
やっぱ美少年って最高だわ)
ボイジャー「むさしさん?」
武蔵「ハッ!いけないいけない!
よーし!目指すは山頂……の辺り!道中かっ飛ばしていくわよー!」
女剣豪は山を駆け始めた。
その勢い、魔猪の如し。
だが足場が安定せず、障害物も多い山で速さを成り立たさせる代償として、少年の快適性は犠牲となった。
ボイジャー「わあ↑あ↓あ→あ↓あ→あ←あ!」
武蔵「ところでボイジャー君!さっき英語喋ってるみたいだっただったけど君ってアメリカ人?イギリス人?」
ボイジャー「あ めりかっ だよっ」
武蔵「合点! ところでごめんねー!時間もそれほどあるわけじゃないから、悠長に歩いていられないの!」
ボイジャー「これも たっ たのしいよっ け←ど↓ あと で きゅう
けい させっ」
武蔵「っといけない熊だ右折ゥ!」
ボイジャー「(~~~~~~!!) 」
~一方、その頃~
藤丸「武蔵ちゃんが突然現れて、ボイジャーを連れ去った……!?
嘘じゃないんですよね!?」
エリセ「それで、ボイジャーは無事なんですか!?」
ダヴィンチ「ごめん、現時点では何もわかっていないんだ。」
マシュ「トリスメギストスⅡで目下捜索中ですが、目ぼしい手立ては無いのが現状です……」
エリセ「……そんな……」
エミヤ「面目ない。弓を引くのをどうにも躊躇ってしまった。」
藤丸「エミヤは悪くないよ
あと、エリセ、安心して。
武蔵ちゃん本人なら危……命が脅かされるような目には合わないよ」
エミヤ(言い直したな……)
ブーディカ「私も敵意や害意みたいなものは感じなかったんだどね」
ゴルドルフ「ええい、そんな甘い考えでどうする!
……確かに剣豪・宮本武蔵にはロシアでもオリュンポスでも助太刀をしてもらった。
並々ならぬ恩があるが……本物である保証など無いのだぞ」
シオン「ゴルドルフ氏の主張もわかります。
ですが、悪意があると仮定すると武蔵氏が食堂で自らの存在をアピールするかのような振る舞いを見せたというのは不可解です。
何か悪事を目論むなら隠密行動の方が得策ですから。
それに正体を装って潜入するならアバターとして武蔵氏をチョイスするのは不適当なんじゃないでしょうか。
なんたって『本来いない筈の人物』な訳ですし。」
エリセ「……私は直接、宮本武蔵本人にお会いした事は無いですけど、
皆の言うとおり安心できる人物だったとしてもボイジャーの帰りをただ待つ事には抵抗があります。私にできる事は何かありませんか。」
ゴルドルフ「~~ぬう!経営顧問!君の意見を聞──、いや、失礼、間違えた」
一同「……」
ゴルドルフ「すまない。つい」
ブーディカ「はいはい!しょぼくれないの、ゴルドルフさんも皆も。彼がいないのはもちろん哀しいけど、頼れる探偵さんは他にもいるじゃない!さっき声掛けたからそろそろ来てくれる頃だよ!」
エリセ「……探偵?」