女体化-壱-

女体化-壱-



開け放たれた扉は、はっきりと目に見える形で"後戻りはできない"と突きつけてくる。


しかし2人の間には、形容し難い高揚感のようなものがあった。


部屋の中を照らすのは月明かりのみで、広がる影も手伝って人の痕跡らしい痕跡が見当たらない。

その生活感のなさに、日車は本当にここに寝泊まりしているのか?と虎杖の頭に疑問が浮かんだ。


部屋を満たす雰囲気に気を取られている虎杖を脇に置き、日車は真っ直ぐとベッドへ向かいそこに腰を下ろす。


日車「どうした?」


内心余裕はなかったが、努めて冷静に振る舞った。


虎杖「え?…ああ…」


慌てて扉を施錠し後に続く。


ベッドに腰掛ける日車の姿は見た目も声も壮年の女性だったが、その所作から滲む雰囲気は確かに日車のものであり虎杖を混乱させた。


日車「早速始めよう」


そう言って日車は肌着ごと一気に服を脱ぎ、あっという間に全裸になってしまった。


虎杖「うおっ!?」

日車「?…汚しては悪いからな」

虎杖「いやその心遣いは嬉しいけど」


日車「…すまない、どうも勝手が分からなくてな」

虎杖「………」


早く終わらせてしまった方が虎杖のためになる。そう思って日車は淡々とことを進めようとした。


しかし自身の纏う雰囲気と魅力に無自覚な日車の言動は、着実に虎杖の情欲を煽り、高めていった。


日車「何か注文はないか?」

虎杖「ない、普通にしてて」


虎杖「…あの、こうしろああしろってのは特にないんだけど…」


虎杖「………触っていい?ほら…日車がその体に慣れるって意味でも…」

日車「…ああ」


虎杖の言葉に対し躊躇いを見せず、ベッドの中心へ無防備に横たわる。


その姿に"なんで日車からは無知シチュみたいな空気が出るんだ…?"と虎杖は不思議に思った。


虎杖「…触るよ」

日車「ん…」


虎杖の手が、日車の存在を確かめるような手つきで肌を滑る。


日車(ある程度は馴染んだが…やはりまだ違和感がある)


虎杖「くすぐったい?」

日車「少し違うな」


女体化して少しぼやけていた自らの輪郭が、撫でられた箇所から徐々に定まっていく感覚


今の自分は女なのだと、虎杖の手で教え込まれているかのような


日車「…ふ…っ…………っん」

虎杖「声、抑えなくていいよ」

日車「っああ…わかっ…た」


日車(違う、気を遣っているわけではない)


日車(…恥ずかしいな、これは)


優しく撫でられているだけだというのに甘い声が漏れ出す。


日車「っあ………んん…うんっ…」


虎杖によって形作られた器の中に快楽が注がれていく。女体化の際とは違い、それをハッキリと知覚できた。


虎杖「大丈夫?」


ふと、その身を案じた虎杖が日車の目を覗き込んだ


日車「っう゛…♡」


反射的に目を瞑り、顔を逸らしてしまう


虎杖「………」


虎杖「そういう感じ、やめろよ」

日車「…?」


虎杖「…うまく言えねーけど」

虎杖「その…俺から遠ざかろうとする感じ」


そんなことはない、と自身を偽ることはできなかった


虎杖「目ぇ見て」

日車「待ってくれ…!」

虎杖「あの時は見てくれたじゃん」

日車「っあ…分かっ…たっ」


虎杖にとって、俺との行為は罰のようなものになるのではないかと不安だった。


しかし虎杖は俺を本気で抱き、そんなことを感じさせない。


急に恐ろしくなってくる。


自分が自分でなくなっていくのではない。


自分のままでありながら、何かが変えられていく。


虎杖「どこが気持ちいいとか…ある?」

日車「あっ…ん…分か、らない…っ」


日車は虎杖に触れることを躊躇っていたが、気付けば抱きつき服を握りしめていた。


日車「虎杖っ…っあ゛…ぐっ…」

虎杖「我慢しないで、そのまま」

日車「〜っ♡」


腹部を優しくさするだけの愛撫。


優しく諭すような手の動きからは想像もつかない快感が、器の内から大きく溢れ出し、その外側を濡らす。


日車は、ただ肌を撫でられただけで達した。


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