女ヶ島編おまけ2

女ヶ島編おまけ2


 柔らかい布団の中で目を覚ます。起き上がり隣を見るがいつもはそこにある顔が無い。わたしと一緒の部屋で寝起きしてるルフィは今、特別任務についていた。内容は召集に応じた王下七武海の送迎。クロコダイルが王下七武海を降ろされその穴埋めの為の会議がマリージョアで行われる。本来ならわたしも行かなければならないのだがセンゴクさんやガープさんがわたしの海賊嫌いを考慮して送迎時の護衛から外してくれた。

「ルフィ…」

 目が覚めて彼が隣に居ない事に違和感を持つが彼は決してわたしを置いていったりはしないので気持ちを切り替える。ルフィが現在向かってるのは女ヶ島。"海賊女帝"の治める島だ。マリンフォードにある海軍本部からは4日もあれば着くだろう。つまりこの違和感も8日経てば解決する。もう一つ、あの島には海軍内で妙な噂があるがルフィの事だ。心配はしてない。

 鏡に向かい身だしなみを整える。七武海の護送に参加しない代わりに海軍が出した条件が配信だった。わたしはルフィが帰ってくるまでの間に毎日配信する事になる。これもきっとセンゴクさんが見つけてくれた妥協点なのだろう。着替える服はいつもの海兵としての服。配信する時は歌姫UTAとしてやる事が多いが今回はマリンフォードで、任務としてやるのだ。わたしは正義のコートを纏いウタ准将として部屋をでた。

ーー4日後ーー

 最悪の知らせがあった。ルフィが海賊女帝に目をつけられ女ヶ島に連れてかれたのだと。つい連絡してきたモモンガ中将に怒鳴ってしまった。なんでもルフィは石化された部下を助ける為に連れてかれたらしい。とてもあいつらしい。ルフィならきっと帰ってくると信じてはいるのだが、不安は表に出ていたらしい。ライブの見てくれてたファンのみんなに心配された。サカヅキさんから配信の中止が命令された。まずは体調を整えろと。それでもじっとしてると不安になるから急いでペンを取り出し作曲作業にうつる。楽譜に向き合ってる間だけ、不安を忘れられた。

ーー8日目ーー

 港で軍艦を待っていたが、望みの船は来なかった。もう3日も配信してない。それも単に作詞作曲で時間を忘れたせいなのだが。仕方ないので港で船を待ちながらやけ食いをする事にした。その途中でガープ中将にルフィなら1日足留めされたから帰ってくるにしても明日だと言われた。どうやらそんな簡単な事にも気付けない程わたしは弱っていたらしい。それでも明日ルフィに会えると思ったら自然と足取りが軽くなった。せっかくだしルフィが帰ってきたらライブをしに行こうと地図とファンの位置を確認する。ライブ用電伝虫はコメントをくれた電伝虫の場所がわかるようになっている。そして、わたしは歌姫特権で許可さえ貰えれば好きなところでライブをする権利を持っていた。コメントの情報と地図を持って部屋にこもる。はやくルフィ帰ってこないかなぁ。

ーー9日目ーー

 配信をしたらみんなに喜ばれた。なんでも生き生きしてるらしい。あのバカが帰ってくるだけでそこまで変わるのかとわが事ながら辟易する。せっかくだしこの数日で作った新曲を発表したらセンゴク元帥から呼び出しを食らった。作った曲は上に確認とってから出すというルールを完全に忘れてたわたしのせいだ。

 結局、その日はルフィは帰ってこなかった。もうすっかりルフィの温もりがなくなった布団で1人寂しく眠る。あー、冷たいなぁ…

ーー10日目ーー

 目が覚めてもルフィは居ない。鏡に向かってどれだけ笑顔を作ってもテンションは上がらない。このまま置いてかれるんじゃないかとトラウマが脳裏をよぎる。その不安を抑え込むようにルフィの私服に顔を埋める。もうちょっと頑張れるだろうか?

 昼ごろにモモンガ中将とあった。これからマリージョアに"海賊女帝"を迎えに行くのだと言っていた。ルフィの事を聞いたらなんでも"海賊女帝"に惚れられきっての頼みでマリージョアまで護衛させられてるらしい。海賊如きが海兵を護衛につけるなとか、マリージョアに連れてって天竜人に目をつけられたらどうしてくれるんだとか色々言いたい事はあったが飲み込んだ。きっとわたしは酷い顔をしている。


 ウタはモモンガ中将の軍艦に密航しルフィを迎えに来ていた。もちろん誰にも許可はとってない。知り合いに頼みとびっきりのおしゃれをして軍艦に潜り込んだ。この程度の悪戯ならもはや朝飯前だ。そして、その時が来る。

「お疲れ様です!ルフィ大佐!」

 海兵に迎えられるルフィをウタは物陰から確認する。忌々しい事に"海賊女帝"はルフィに腕を絡み付けていた。本当なら今すぐにでも出て行き所だがここででてマリンフォードに突き返されても困るので耐えるつもりだった。

「ならばルフィ。わらわの部屋へ。」

「おう。後でな。おれもこいつらと少し話したいんだ。」

 その瞬間ウタは飛び出していた。海賊如きがルフィと腕を組む時点で大罪なのにあろう事か自らの部屋に連れ込もうという。しかもあの幼馴染は拒絶しない。ならば強引にでも引き剥がすしか無いのだろう。

「ルフィ〜!」

「ウタ〜!」

 甘ったるい声を出しながらウタはルフィに突撃し、ルフィは嬉しそうに優しくウタを抱き止める。ウタの特徴的な髪の毛は激しく乱高下を繰り返しまるで犬の尻尾のようだった。そしてルフィ側もウタを拒絶する事なく受け止め頭を撫でたり背中を優しく叩いたりする。たまにお互いに頬ずりしてるように見えるのはきっと気のせいだろう。だが、この状況で黙っていない者がいた。

「なんじゃ!この女狐は!わらわのルフィに触れるでない!!」

 海賊女帝、ボア・ハンコックである。ハンコックは突然現れたウタに驚き、その行動に目を向き、怒りのままにルフィとウタを引き離そうとする。だが、ウタとルフィはお互いにしっかり抱き合い離れようとしない所か2人の世界に入っておりハンコックの存在に気付いていない様だった。当然ハンコックは怒り狂い2人を引き剥がす為に躍起になる。

「なぁ。おれ達は何を見せられてるんだ?」

「世界一幸福な男の姿じゃないか?」

「ちげぇねぇ。ハッハッハ」

 それを遠巻きに見ていた海兵はわりかし全てのことがどうでも良くなった。ついでに抱擁は10分ほど続きモモンガ中将の拳が落ちるまで続いた。無視され続けたハンコックは部屋に篭った。


「それで、どうしてこの様な事をしたのか教えてもらおうか。」

「ル、ルフィに会いたかったので…」

「ほう?」

 ウタは正座しながらモモンガ中将に説教されていた。その間も軍艦は動いておりマリンフォードに即返されないだけマシだと思いウタは我慢する。鬼の様な目つきに気が遠くなりそうな感じがする。

(モモンガ中将って覇王色の覇気使えたっけ?)

 思いの外ウタには余裕がある様だ。もっとも、ウタ自身もまさか自分がここまで暴走するとは思ってなかったらしくその顔は真っ赤に染まっている。どうやら余裕がある思考はただの現実逃避のようだ。それが側から見てもわかるからこそ、モモンガ中将はため息だけで終わらせる。説教が終わったウタはルフィの居る部屋に突撃していった。ルフィが居る"海賊女帝"の部屋に。

 この後また、歌姫の海賊女帝のキャットファイトが繰り広げられる事になる。モモンガ中将は頭痛でしばらく休暇を取ろうと思った。

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