女になった日

女になった日

※R-18注意



 己を女とも、女として生きた自覚もなかった。

 砂塵が舞い、血が視界を掠める戦場こそが躍動を、生を感じられる唯一の時間だったから。

 そんな己だからこそ、男を身の内に受け入れるという意味をよく理解していなかった。

 世の女が男に抱かれる瞬間を至福だと思う本当の意味が、わからなかった。



「ぅ……、」

 背後から男の魔羅が景虎の秘所にぴたりと当てられ、ゆっくりと押し入る。

 初めてだからと随分時間をかけて慣らされたものの、やはり今まで受け入れた経験のないそこは痛みを訴えた。

 内臓を押し上げられるような感覚に、思わず景虎は口元を押さえた。じっとりと背中に嫌な脂汗が浮く。

 痛みがあることぐらいは知っていた。しかし痛みよりも、己を内側から壊される感覚が景虎の身体を無意識に委縮させていた。

 生前誰にも許したことのない場所を、そして自身さえも触れたことのない身体の奥深くを弄られるという事実が、予想以上に景虎を打ちのめす。

「は、……ぐっ」

 しかし止めろ、とは言わない。互いに望んだことだから。そしてそれ以上に、痛いのが我慢できないから、なんて理由で止めるなど、敗北も同じ。

 そう、この男に対してだけは、否という選択は始めからないのだ。

 だから早く、勝手に気持ち良くなって、出して、終わって欲しい。

 景虎がシーツに顔を埋め両の手で掻き毟った時、男は動きを止めた。

「え……?」

 まさか己の異変を察して止めるつもりなのか。景虎が内心慌てた瞬間、後ろから男の手が伸び景虎の乳肉をゆっくりと揉み回し始めた。男の大きな手に丁度収まる柔らかい胸を堪能するように。

「ふ、ぁ……」

 思いもよらぬ箇所の刺激に、景虎は下腹部の違和感から意識が逸れる。時には乳首を引っ張られ先端をコリコリと弄られれば、じんわりと胸全体に広がっていく疼きがたまらなかった。

「あ、そんなとこ、いいです、からっ……」

 自分ばかり触られることに異を唱えれば耳元で男が微かに笑い、胸を触っていた片方の手が離れる。

 ようやくか、と思った瞬間、びくりと身体が震える。

「ひゃっ、あ、ぁ、んっ」

 離れたと思っていた手は胸から腹へ、そして景虎の陰核に触れ周りをくるりと指先でなぞっていく。わかりやすい悦にひときわ高く景虎の腰が跳ねた。

 そこは慣らす段階のうちからしつこく弄られた場所だった。そのため性に疎い景虎でも、そこから起きる快感を思い出して全身に鳥肌が立ち、期待に腹が熱くなる。

「ん……んっ、んぅ、ふっぁ」

 親指と人差し指に挟まれ時には先端を指の腹で撫でれれば、あの景虎でさえ抵抗できるわけもなく。段々と高くなっていく声が頂点に達する瞬間、男の指が陰核を潰し強制的に絶頂へ導いた。

「あっ!? う、ぁ、ああぁぁああ……!」

 景虎の脳裏が白く弾けたと同時に、中途半端に挿入されていた男の魔羅がやさしく膜を破って女の中を満たすように押し入る。

 違和感と甘い快楽に思考が乱れる。荒々しい呼吸を繰り返す景虎に、男が耳元で囁く。

「頑張ったな、景虎」

 熱を帯びた耳殻を舌で嬲られ、景虎は熱い吐息を漏らした。こんなにも他人と交わることが難しいとは。しかし自身の背中に男の胸がぴったりと重なり互いの肌が吸い付く感覚は、不思議と心地よかった。

「もう少し頑張れるか」

 そう言った男が、滑らかな肌を味わうように首筋や肩を舐め、吸いついていく。

 止める気などないくせに、と己の中にある男のものを感じながら、景虎は内心笑いながらもこくりと頷く。

 頷きに応えるように男が景虎の耳を優しくかじった。

 そして先ほどより少しばかりゆるんだ女の柔肉の中をカリ首で擦りながら、魔羅が膣口ギリギリまで引き抜かれ、ゆっくりと奥へ戻されていく。

 ずっと身体を弄られていたせいなのか、優しく膣をあやされれば身体の内側で疼きが燻る。

 どうにもできない悦に景虎が誘うように腰を揺らすと、男は段々と優しい動きから転じて小刻みに、腰を回すような動きを始めた。

「あぁ、ん、はぁっ……! ぁ、はげし、んっ、ん、んんっ!」

 最初は緩慢なストロークで女の内を広げていったが、徐々に速度を上げた今は熟れた媚肉を乱暴に突き上げるような動きになっていく。

 しかし痛みも、違和感もない。あるのはただ、抗えぬほどの恍惚。それは景虎の身体を、意識を塗り替えていった。

「ひぅ……! ふっ、あぁっ……あ、ぁっ、あぁぁ……!」

 男の腿と女の尻肉がぶつかり合い、ぱちゅぱちゅと酷い水音が無機質な部屋に響き渡る。汗と愛液が交じり合う、肌が溶けていく感覚。

 景虎の理性が削られていくのと比例して、男を受け入れた秘所は柔らかく解れていく。景虎の表情からは既に怯えはない。あるのは、与えられる熱と快楽に浸る女の顔だけが残っていた。

「はっ、どうだ、大分変わってきただろう……!」

「は、い……! ぁ、んっ、きもち、あっ、あっ、」

 己の中を侵すたくましい魔羅に膣壁が震えしゃぶりつく。段々と自分からも快楽を引き出そうとする媚肉に、男はぐぅっと腹に力を入れ、さらに強く突きまわした。

「は、あぁぁっ! ん、んっ、んっ、んん……!」

 誰にも触れられる身体の奥深くを圧迫されるが、同時に甘美な刺激が景虎の背筋を走り抜け、秘所から白濁した液が溢れ出す。

 そんな景虎の変化に気付けぬ男ではない。完全に自身が与える快楽に抗えぬ女の姿に、男は昂った。

「は、はははははっ……! 気持ちいいか、景虎っ」

「っ……ちが、んっ、あ! きもちよく、なんか、ぁ、あっあっあっ……!」

 一瞬景虎は理性を引き戻され、快楽に堕落した自分を否定しようと口を開けば、黙らせるように男が腰を密着させ膣奥のヒダをぐりぐりと抉る。

 シーツに景虎がしがみ付くのと同時に男を離すまいと膣がきゅうっと収縮する。その刺激に肉棒はビクビク跳ね、大量の子種を吐き出す準備を始めた。

「ぐっ、……景虎、出すぞ……!」

「ぁ……? だす、って、まっ、中には……!」

「我慢できるわけないだろっ、お前は俺の女だろうが……!」

「まって、ま、あっ、ぁ、んっ、んっ、んん! ~~~~ッ……!!」

 他人の精液を吸収してしまうと、魔力探知に長けた者にこの交合が勘づかれるかもしれない。あの景虎が他人に組み敷かれたと。

 そうやって揶揄されるのを嫌がった景虎は、しかし奥へ奥へ進もうとする男を止められなかった。

 拒むことなどできない。そう、拒めば敗北も同じ。あの景虎が、この男から逃げるなどあり得ない。

 こんなにも熱を持って自身を求める男を、拒めるはずもないのだ。

 そして男が膣口から抜けそうなほど腰を引き、どちゅんと音を立てて景虎の最奥を押し潰した瞬間。

 満たすように注がれる子種に景虎は尻を跳ね上げ、ぷしゃりと繋がった所から潮を吹き出しシーツを汚していった。

 吐き出す間も男は景虎の内を汚すように腰を前後させ、媚肉をあやしていく。

「ふぅ……は、ぁ……んっ、あぁ……!」

 最後まで出し切った男が満足の溜め息を吐きながら腰を引く。景虎の熟れた秘所から魔羅が抜き出されれば、まだ快楽が抜けていない膣口がびくびくと震え、白い粘液と微かな破瓜の血が逆流しシーツの上へ広がる。

 一向に治まらぬ荒い息に景虎がぜえぜえと呼吸をしていると、突然肩が引かれ天井を仰ぎ見る。

「……っ」

 ぞくりと、景虎の背筋が震えた。男の目に、治まらぬ獣の気配を感じて。

「景虎」

 静かな声だ。しかし再び秘所に押し付けられた男のものは、一度欲を吐き出したとは思えぬほどの昂りで。景虎が何を言う前に男は女の腰を掴み、有無を言わせぬように魔羅を押し進める。



 己を女とも、女として生きた自覚もなかった。

 砂塵が舞い、血が視界を掠める戦場こそが躍動を、生を感じられる唯一の時間だったから。

 そんな己だからこそ、男を身の内に受け入れるという意味をよく理解していなかった。

 世の女が男に抱かれる瞬間を至福だと思う本当の意味が、わからなかった。

 しかしたった今、景虎は理解した。理解させられてしまった。

 男を身の内に受け入れる意味を。

 己を女にした男————武田晴信に抱かれる至福を。

「……はるのぶっ、」

 手を無意識に自身の腰を掴む男の手に重ねる。そして身体を蝕む甘い疼きに耐えられず男の名を呼ぶば、応えるように突き上げられ、女は乳肉を揺らし背を反らした。

 この肉体を満たす快楽と男だけが、今の彼女のすべてだった。




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