奪い愛

奪い愛








ワーテルがあの男と結ばれた時は、ワーテルが幸せになれるならと認めてやった

ワーテルがあの男と仲睦まじく過ごしているのを見るのは胸が締め付けられる思いがして辛かった

それでも、ワーテルを愛している者としてあの男との仲を認めていた

『ジョイボーイ』

『ん?なんだイム』

『私はお前とワーテルの交際を認めた』

『だが、これだけは覚えておけ。"あくまで"ワーテルの幸せを願いお前との交際を認めただけで"お前"を認めたわけではない』

『ワーテルを泣かせたら……地の底まで追いかけ殺してやる』

『……ああ!肝に銘じておく!』

だから、その返答を聞いて……少なからずお前を認めていた

なのに……なのにっ!!!

「いやっ!いやよ!!!ジョイボーイ!!!」

「ダメだワーテル!!!」

何故お前はワーテルを置いて逝ったんだ

お前を失うことがワーテルにとってどれだけ辛いことなのかを分かっているのか

泣かせるなと言ったはずだ

泣かせたら地の底まで追いかけ殺してやると……

私はそう言ったんだ!!!

けれど……

(肝心のお前が……この世を去ってしまったら私は誰を追いかければいいのだ……っ!!!)



「……ワーテル」

「……」

あれからワーテルは別人のようになってしまった

食事も喉を通らなくなりみるみるうちに痩せこけていった

心労が集ったのか病気にかかり寝たきりになってしまった

ワーテルは他の国民からジョイボーイを殺したのではないかと疑いをかけられ王都から追放された

ワーテルは度重なる迫害、ジョイボーイを無くした痛みに耐えきれなくなり……

遂には私を置いて逝ってしまった





……ああ。憎い

"あの男"が憎い

私から最愛を奪い去っていったあの男が憎い

憎たらしくて仕方がない

ワーテルがいなくなってしまったら私はどうしたらいいんだ




あれから数百年後たち、五老星と呼ばれる天竜人を従え世界を統治した

ワーテルがいない世界など守る義理も責務も無いがせめてワーテルが愛したこの世界を守り見守る

そのために必要のないものは即座に切り捨てる

そうしてこの世界は秩序を保っている


"トラファルガー・ロー"

この海賊の手配書を見た時は目を疑った

何故ならばこの男は私の最愛……ワーテルと瓜二つだったからだ

間違いない。私にはわかる

トラファルガー・ローお前は……ワーテルなんだろう?

実際にこの目で見たい。その声を聞きたい

だから、ずっと見守ってきた

見れば見るほどワーテルにそっくりだ

声も、瞳も、その仕草も、その"魂"も

ああ。やっぱりそうか

お前はワーテルの生まれ変わりなのだな

ずっと……ずっと待っていた

今すぐお前を迎えに行きたいが……今のこの状況でお前を迎えるにはここは少々"汚すぎる"

だから掃除をしなくてはな

いつかお前をこのマリージョアに迎え入れる日が楽しみだ


いつものようにワーテルを見守っているととある男が目に付いた

「"モンキー・D・ルフィ"……だと?」

この顔は見覚えがある

忘れたくても忘れられないあの顔だ

私からワーテルを奪ったあのにっくきジョイボーイ……っ!!!!

お前はまた、私からワーテルを奪うつもりか!!!

許さぬ……許さぬぞ!!!

もう二度と、お前にワーテルを渡してなるものか!!

気がつけば手に持っていた手配書が見るも無惨な状態になっていた

怒りで我を失い記憶が混濁していた

……これは良くないな

少し落ち着こう

だがこのままゆっくりしている訳にもいかない

またあの男にワーテルを奪われる前にワーテルを迎え入れなければ

そのためには

「少し、強引に行こうか」

待っていてくれワーテル

今すぐ私が迎えに行くぞ

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