契り 前編
「またですわああああっ⁉︎」
地球での任務で海上航行中のミレニアム艦内の厨房で料理長のソワンの怒号が響き渡った。
「どうしたのですソワン?」
食堂で食事をしていたラビアタはその声に驚きつつそばに来て理由を聞いた。
「ラビアタ様!またですわ!!例の『料理泥棒』!!!今度は昨日大量に作った『いなり寿司』を盗まれましたわ5人分も⁉︎」
またか…
厨房から聞こえる怒声にルナマリアやマリア、ステラと共に食事をしていたシンはため息を吐きながらタルタルソースがたっぷりかかったチキン南蛮定食を口に運んでいた。
「シン、『いなり寿司』ってなに?」
隣でステラがシンに質問する。どうやら彼女はいなり寿司を食べたことがないようだ。
「あぁ、薄く切って油で揚げた豆腐の中に酢飯を詰め込んだ料理だよ。甘くて美味しいからステラも気にいると思う。」
「ホント⁉︎」
それを聞いたステラは、目をキラキラさせて今夜の夕飯に出る予定のいなり寿司を、昼食のトンカツ定食を食べながらすでに楽しみにし出していた。
「まさかフェンリル…あなたじゃないでしょうね〜?」
「わぁ⁉︎ソワン落ち着いてその包丁下ろして⁉︎私はお肉しか食べないよぉ〜⁉︎」
「ちょっと、落ち着きなさいソワン〜⁉︎」
「それにしても『いなり』…か…」
厨房から聞こえる騒動を無視して食事を続けていたシンは、ふと懐かしい感じがした。
「どうしたのシン?変な顔しちゃって?」
シンの向かい側でマリアと一緒に野菜炒め定食を食べていたルナは、怪訝な顔をする。
「あ、いやちょっと…『お稲荷様』を思い出してさ…」
「「「お稲荷様?」」」
これはオーブ解放作戦が起きる数年前…
オノゴロ島の森の中の獣道を一人の少年が進んでいた。
「へへ!今日こそ捕まえてやる!待ってろよコーカサスオオカブトムシ!」
その少年、シン・アスカは、獲物であるコーカサスオオカブトムシを狙い乳母の贖罪のマリアに近所に遊びに行くと誤魔化し、子供では危ないところもある森の奥の秘密の場所に向かっていた。
藪だらけの獣道を進んでいくと、視界が開け、建物が見えた。
ボロボロの苔まみれの古びた神社だ。
以前このあたりを遊んでた時に見つけた秘密の場所だ。それ以来たびたびここに来て図鑑に載ってるような珍しい虫を捕まえ、学校の同級生や両親、妹のマユ、乳母のマリアに自慢していた。
ただ、森の奥は危険が多いと注意されてるため、妹や両親にはもちろん家族の一員で姉同然のマリアにもここのことは内緒だ。
ぐぅ〜!
この場所に着いた途端、シンの腹の虫が鳴った。
「よし、少し休憩したらさっそく…」
そう呟きながら鳥居をくぐると…
「妾の社に何用じゃ童(わっぱ)?」
「えっ…?」
突然人の声が聞こえた。
ここには自分以外誰もいないはずなのに…⁉︎
得体の知れない何者かがいる⁉︎
恐怖を感じながら、辺りを見渡すが誰もいない。
「こっちじゃうつけ者…!」
上から再び同じ声が聞こえ、恐る恐る上を向いた。
そこには…
鳥居の上に腰掛ける布地の少ない巫女服から溢れる大きな乳房と太ももが目立つ刺激的な格好、そして、頭の上から生えた狐の耳とたくさんの尻尾が生えた…まるで妖怪や怪異の本に出てくるような幻想的な女だった。
「お稲荷様〜!」
「おぉ来たかシンよ!」
シンは神社の鳥居をくぐって、神社の縁側に腰掛けてる『お稲荷様』に声をかけた。
二週間前の出会いからできた秘密の友達だ。
あの後、鳥居から飛び降りた得体の知れない女はシンを睨みつけながら顔を近づけた。
シンが震えていると、
「お主、うまそうなものを持ってるのう?」と笑顔を見せた。
どうやら、マリアが昼食にと持たせた弁当箱のお稲荷さんの匂いに興味を持ったらしい。
一緒に食事をしながら、女は自分がこの土地の土地神であること、この神社を棲家にしていることを話してくれた。
それから、お稲荷さんを献上することを条件にここで遊ぶことを許され、虫取りに付き合ってくれたり、トランプで遊んだりとしてくれた…
「シン坊ちゃま…乳母であるこの私に嘘ついてそんなところ…!」
「ウッ、ご、ごめんマリアさん…⁉︎」
自分に嘘をついてそんな危険なところに行っていたことを知ったマリアはシンを叱る。
「でも神様ね〜?」
「ふわふわ…あったかそう…」
そんな二人を横目にルナマリアとステラは、シンが出会った謎の女について考える。
コスプレをした変質者?
ふわふわした尻尾に埋もれたい。
それぞれが考え込む。
「もしかして…捨てられたバイオロイドでは?」
一通りシンに説教し終えたマリアは、二人に声をかけた。
「「バイオロイド?」」
「たまにあるんです。主人が亡くなったり捨てられたりして野良化したバイオロイドが…それに三安では動物の遺伝子を混ぜたコンパニオンシリーズがいますし。」
野良化…それを聞いてシンとルナマリアはゾッとする感覚を感じた。バイオロイドとはいえ、人の身体をして心を持った存在を捨てる人間がいることに…
「シン、そのかみさまとはどうなったの?」
お稲荷様のことが気になったステラがシンに尋ねる。
「へ?あぁ戦争でオーブから離れて…それまでは一緒にその神社で遊んだりおん…あっいやなんでもない⁉︎今はどうなってるかは分かんないや…」
「そう…」
戦争のことは聞かれたくなくて、そしてここで話したら『面倒なことになること』をお茶を濁しながらお稲荷様とのことを話した。
二度目の戦争が終わった後も、コンパスの仕事が忙しく、結局あの神社には行くことができなかった…
彼女は、今どうしてるだろう…
食事を終えた四人はそれぞれの部屋や持ち場に向かい別れた。本日非番待機のシンは一眠りしようと自分の部屋に向かいながら、お稲荷様との思い出を思い出す…
お稲荷様と出会ってから、マリアとはまた違う歳上の『神様』との付き合いに、シンは不思議な優越感を抱いていた。
今日も食事を終え、一緒に森の中で虫取りをしてると、大きな黒い虫を見つけた。
「お稲荷様!クワガタ見つけたよ!」
シンは捕まえてお稲荷様に褒めてもらおうと、木に登り出す。
「おいシン、そんなに焦ると危な…」
ズルッ!
「えっ?うわぁっ⁉︎」
ベシャア!
シンは足を滑らせ、木下に落ち姿が見えなくなった。
「シン⁉︎」
お稲荷様が慌てて駆け寄ると、
「いてて…うわドロドロだ…」
小さな崖の下の水たまりで泥だらけになったシンがいた。
「ほらシン、恥ずかしがるでない。」
「う、うん…」
お稲荷様は泥だらけのシンを神社の近くに沸いていた温泉に連れて行き、その場で一糸纏わす姿になり、頰を赤く染めたシンの服を躊躇いなく脱がすと、温泉の中に誘った。
「気持ち良いかシン…?」
「は、はい…!」
ギュム…
シンは温泉の中でお稲荷様に後ろから抱かれ、その大きな乳房の柔らかさを後頭部に感じながら縮こまっていた。
妹や母さん、そしてマリアとお風呂に入ることは幼い頃あったが今は中学生、それも家族じゃない女性と裸で入るなんて未知の体験だ。
シンは頭部と肩の両方を柔らかな乳肉に埋もれ、縮こまりながら自分の幼い『男』が膨張するのを必死に隠していた。
「ほぉう、ふふ…」
その様子を見ながらお稲荷様は微笑み『妄想』をしだす。
あの気に入らぬ『主人』には悪いが、この少年と妾は運命の『契り』を結ぶ運命なのだと…
「こっちを向けシンよ…」
「ふぇっ…⁉︎」
後ろで抱いていたお稲荷様に、からだを後ろに向き直されると、そこには綺麗たピンク色の丸い一輪の花びらが咲いたたわわに実った乳房が視界いっぱいに映った。
その光景にシンはガチガチに固まる。
「妾とお主は契りあう運命なのじゃ…じゃからその証として…ん!」
「ンブゥ⁉︎」
お稲荷様は、シンの頭を優しく抱くと自分の胸の乳首を吸わせる。
突然のお稲荷様の行動に驚きつつも、彼女の胸のセンタを口に含んだ途端懐かしい感覚と安心感に陥り、シンは次第に自らの意思で吸い出した。
「んッ、そうじゃシンよ…!乳は出ぬが…もっと…もっと妾を求めるのじゃ!」
お稲荷様は、自分を今まで自分の欲望のままに蹂躙していた主人やその客人どもと違う、シンの幼き求め方にゾクゾクとした感情が湧き立つ。
その間シンは時間を忘れて、一心不乱に彼女の大知な乳房を両手で鷲掴み、左右の乳首をしゃぶり続ける。
「ンブゥ…ヂュルルッ!ふぉ、ふぉいなりさまぁ…!」
「ふぁああん⁉︎こ、こんな⁉︎いつもと違う⁉︎オ"オ"ォッ⁉︎や、やはりシンと妾はお互いを求め合…オ"ッうんめい…んひぃっ⁉︎」
何十分も夢中にしゃぶり続け、温泉の熱に当てられながら、二人はその行為をやめられなかった。
シンは本能のまま無意識に、湯船の中に沈んでるお稲荷様の乳房に腰を打ちつけ、硬くなった男を押し付け刺激を与え、その刺激でお稲荷様の下腹部から熱い熱が溢れ、湯船に混じり合い濃厚なメスの匂いが二人の周りに充満する。
その原始的な獣の匂いに二人の脳が侵されながら、激しく求めあった。
このまま心地よい湯に二人とも溶けてしまいかと思うほどに…
「んおッ⁉︎く…くる⁉︎くるぞシン…!妾と…妾と一つにぃいぃいいひいいぃ⁉︎」
「(お稲荷様…かわいい…!なにか…何か来る⁉︎)ンブゥ!」
シンが腰を深く打ちつけた瞬間、
カリリィッ!
口に含んだ乳首にシンの歯が合わさり甘噛みされた。
「んほぉおおおぉおおおッ⁉︎」
ビクビクゥウウウ!
その瞬間、お稲荷様の身体は激しく痙攣しながら、シンの小さな身体をきつく抱きしめた。
「ふわあぁあ⁉︎」
シンも爆発的な快楽を脳内に感じながら、湯船の中で彼女の乳房に向かって白い穢れを吐き出すのだった…
「流石にこれは…言えねえよなぁ…」
当時は自分が何されたか理解できなかったが、マリアやルナマリア、ステラにクイーンオブメインと『そういうこと』をし合う関係になった今では流石に理解できた。
あの後、最後まで一線は越えず、お互いの身体を温かい湯で清め、着替えた後、お稲荷様は人差し指を口に当てながら、
「これは妾とお主の秘密の契りじゃ…今度来た時に契りの儀式を行うから楽しみにしておれ…」
と約束され、今度会う日を楽しみにしていた。
だが、その契りがされることはなかった。
5日後、この国に『戦争』やってきたからだ…
彼女はあの場所を守れたのだろうか…
生きて…いるのだろうか…
そんなことを考えながら部屋に入ると、違和感を感じた。
「あれ?このペンここに置いてたっけ?…ッ⁉︎」
誰かがこの部屋の中にいる⁉︎
それに気づいたシンは辺りを警戒すると、ロッカーがかすかに動いたのに気づく。
シンは音を立てないように、近づき…
バァンッ!!
と勢いよくロッカーの扉を開けた。
「誰だってぶわぁっ⁉︎」
扉を開けた瞬間、茶色のふわふわしたものに視界が覆われ、柔らかいものがぶつかってくる感覚を感じながら、床に倒れ込んだ。
「いってて…だ、誰だおま…」
「シン…?」
その懐かしい声を聞いて
「え?」と茶色い毛の塊をかき分けると…
「シン…やっぱりお主はシンじゃあああ⁉︎」
ボロボロの巫女服のお稲荷様が、涙を流しながら笑顔で飛びついて彼の頭をその乳房に埋めながら抱きついてきたのだった。