天竜人の末路(チャルロス事故死ルート)

天竜人の末路(チャルロス事故死ルート)


天竜人とはこの世界を作った王たちの末裔である。


天竜人とはこの世の神である。


天竜人とは何をしても許される存在である。


それが世界の頂点に立つ者としての特権なのだから。


ー天竜人教典より抜粋ー



「まったく、海軍の質も落ちたものだえ!まさかこのわちしを殴るとは!早くあの麦わら帽子を処刑してあの娘を嫁にするんだえ!」


マリージョアの自宅にてチャルロスはツバを吐くように喚き立てる。


天竜人である自身を全力で殴った忌々しい麦わら帽子を被った海兵を思い出すだけで腸が煮えくり返りそうになる、この怒りを奴隷を使ってどうやって晴らすかを考えながら医師からの治療を受けていた。


「父上も父上だえ…あの場で殺すのを取りやめさせのだえ?生意気な海兵に教育するのも天竜人の仕事だというのに」


そんな仕事は存在しないがそこは天竜人。無いのなら無理やりあったことにすれば良い、それが我々天竜人なのだから…そんな考えの元自身の近くに座っていたロズワードにチャルロスは問いかける。


「あの2人は海軍の今後を担う者達だえ、チャルロス。つまりそのうち我々の部下になり働く者達だったのだえ…?それに五老星達からもあの2人には手を出さないようにしろと連絡が回っていただろ?」


以前からウタの美貌と美声に目をつけて自身の側に侍らせようと考えたり、その側にいるルフィをボディーガードとして寄越せと海軍に圧力をかけていた天竜人は数多くいた…それを事前に全て握り潰してたのが五老星である。詳しい情報は知ることが出来なかったがよほどの事があるのか、警告を無視して強行しようとした天竜人が「海難事故」になったのはロズワードもよく覚えている。


そんなことがあったので天竜人内でもあの2人に手を出すのはタブーの筈だったのだ…筈だったのだが…


「そんなこと知らないえ。わちしの嫁になることを拒否するわ、わちしを殴るわ!そんなヤツら粗暴で凶暴なヤツらから手を出したのだから仕方ないのだえ!!」


記憶を改ざんしそもそも自分の行いを棚上げし、挙げ句2人のが悪いと言い放つ息子にロズワードは頭を抱えるしかなかった。


散々チャルロスの金遣いの粗さや奴隷の扱いについて注意していたがまさか未来の自分たちの守護を担う海兵たちにまで手を出す愚か者になっていたとは夢にも思わなかった…それに天竜人の中で出ていた「2人に手を出してはいけない」というルールすら破ってしまったのだ、息子がこの先どんな扱いを受けるかと思うとロズワードは体がの震えが止まらなくなってしまうほどの恐怖を覚えていたのだ。


「父上はあの奇人と仲良くしてるから、そんなおかしなことを言ってるのだえ…そうだ!そんな父上の為にわちしが新しい奴隷を捕まえてくるえ!おら!早く支度するえ!!シャボンディ諸島のヒューマンショップじゃつまらんから、ワノ国の侍を捕まえて奴隷にするえ!!」


「なっ…ま、待て!チャルロス!!」


突然傍にいた奴隷を蹴飛ばして外出の準備をさせるチャルロスにロズワードは驚きを隠せない。先ほど殴られたばかりなのに何故すぐに外に出て行こうとするのか理解ができない。


「父上は家でゆっくりしてるえ!シャボンディ諸島で奴隷を1人海賊に取られたから、わちしが補填してあげますえ!!」


「だから待てと言っている!止まらんか!?チャルロス!!!」


怒鳴って止めようとするも既に奴隷にしたあとの侍達の扱いをどうするかで頭が一杯なチャルロスは聞く耳を持たずそのまま船に乗ってマリージョアを出港してしまった。


「…ミョスガルドよ…わしはどうするのが正解だったのだろうか…」


そんな船を港から見ていたロズワードは今も奇人、異端の天竜人と呼ばれている自身の親友を思い浮かべながら彼ならば殴り飛ばしてでも止めていたのだろうかと自問する。


10年前に親友が変わった時、自分はその署名にサインを書く勇気がなかった。28年前の惨劇を知っていたから…そして周りに合わせ人々が思い浮かべる「天竜人」としての振る舞いを続けていた。


その裏で僅かながら親友の活動に協力もしていたがそれは絶対にバレないようにバレた時に自分を吊るされないように保身に保身を重ねていた為だが…その活動をこそが息子に見せるべき背中だったのだろうか…


肩を落とし一気に老けた顔になっていたロズワードは船が水平線の彼方に消えていくのをじっと見つめていたのだった。


後日名前は公表されなかったが天竜人が乗った船が沈没して不幸な海難事故として扱われた。世界には天竜人すら逆らえない存在がいる…そんな確信を抱きながらロズワードは恐怖に震えながらマリージョアで過ごすのだった。


自分たち天竜人が破滅するその日まで…


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