天才アイドルヒエロちゃん4話
登場人物紹介
ヒエロ•プトレマイス(トート)
戦闘手段:肉体言語
アザリー
戦闘手段:応援
テレサ•メロディ(カルキノス)
戦闘手段:攻殻生成
前回のあらすじ
魂を込めたライブの最中、会場にドラゴンが現れた。
テレサ•メロディは心を落ち着ける。
「神装巫女としての役割を果たす。」
彼女はそう決心した。
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そのドラゴンは黒い包帯に身を包んでいた。セミとコウモリが合体したかの様な姿だ。
アザリーは、あのドラゴンを見てさく乱してた。
「どうして、どうしてアイツが…。」
私は彼女に呼びかける。
「おい!アザリー!しっかりしろ!」
一方、ヒエロはすでにドラゴンと戦闘を始めていた。襲撃と同時に上空に移動していたのだ。
回し蹴りが炸裂し、ドラゴンを地面に吹き飛ばした。
装着していたマイクで観客に告げる。
「みんなぁーー!!あたし達がいるから!!落ち着いて非常口から避難してー!!」
ヒエロが私達に駆け寄る。
ドラゴンも足をジタバタさせ起き上がった。
腹部の空洞を使い耳がつんざくような声で鳴く。
「ジイィィィィィ!!!!」
「何よアイツ!!虫みたいで気持ち悪いわね!!…あれ、力が、ぬける….。」
青ざめた顔でアザリーがブツブツと呟く。
「あの時と同じだ。あの鳴き声が、肉体と魂の境界をあいまいにさせる…。」
ドラゴンはピンクと黒が混じったような、謎の液体を噴射してきた。
私は自らの腕に攻殻を作り出し盾にする。
後ろには避難中の観客が大勢いるのだ。避ける訳にはいかない。
「刮目せよ!!これが、カルキノスの加護だ!」
前に出てみんなの壁になる。
噴出された液体は、盾にさえぎられ四方に飛び散る。触れた部分が腐っていく。
「わぁっ!?」
グツグツ腐りが広がるので、急いで攻殻切り離した。毒でも入っているのか!?
その時1人の少女が、隙をついてドラゴンの口にリンゴを入れた。
「ジジジッ!!ジィッ!!!ジジジッ!!」
ドラゴンは死にかけのセミの様に激しくウゴメき始めた。
暴れるドラゴンを背に、猫背の少女がこっちにゆらゆらと近づく。
「仮死状態にする毒リンゴなんだけど、耐性があるのかな」
アザリーは目を丸くして呟く。
「あなたは、この前チケットを買ってくれた…。」
「やっと会えたね!アザリー!ボクの事はローズって呼んでよ!」
彼女の顔、白い髪、そして紫色のゴシック調衣装。間違いない、彼女はオリュンポスの巫女、レイナ•ブラックローズだ…!
憧れのギリシャの代表グループ、"オリュンポス"が私達のライブを見に来てた…?
おいおい、マジか。
彼女はクスクスと笑い、不敵な笑みを浮かべた。自分の手から花を生やし、避難する観客を指さした。
「今回は君たちにゆずってあげるよ。」
おそらく彼女は、"自分が観客達を守っておくから、ドラゴンにトドメを刺せ"。そう言いたいのだろう。
「テレサ、あんたはタンクに徹して、その隙にあたしが殴る」
「了解だヒエロ!」
私とヒエロは同時にドラゴンに向かって飛びついた。再び噴射された液体をよける。
液体は大きく角度を変えて飛び散る。ローズは巨大な樹木を召喚した。
液体は樹木に遮られ、観客を守る。
叫びながら突進してくるドラゴンを、自分の体を殻でコーティングして受け止める。
「ライブ中に襲ってくるなんていい度胸じゃないか!!」
その隙にヒエロが横から拳でぶん殴り、ドラゴンの体が歪む。
「まだ終わってないわよ。」
ドラゴンの叫びを無視して殴り続ける。反撃をする機会を与えないほど滅多撃ちにする。
「ジジュエエエエェェェェェ…」
ドラゴンの叫びは段々と弱くなり、ついには力尽きた。
レイナ•ブラックローズはその跡をじっと見つめる。私は彼女に頭を下げる。
「ありがとう、助かったよ」
「いいよ、今度はボクに殺させてね」
萌え袖をヒラヒラさせる。
アザリーもようやく落ち着いた様だ。
ヒエロはそんな彼女の様子を見て、問いかける。
「アザリー…あんた、このドラゴンを知ってるの?」
少しの沈黙があった後、
アザリーは具合が悪そうにしながら告げる。
「…2000年前、
コイツらは突然襲って来たの」
「エジプトが崩壊する前の日に」
ドラゴンの肉体は、塵となって消えた。