天才アイドルヒエロちゃん2.5話

天才アイドルヒエロちゃん2.5話


登場人物紹介

・ヒエロ(トート)

 バカ

・アザリー

 2000年前から来た一般人

・テレサ(カルキノス)

 厨二病神装巫女


前回のあらすじ

ひょんな事から地元アイドルグループ「Wild mummys」に入る事になったアザリー。

だが、三週間後のライブで500人以上のファンを連れて来なければグループは解散となってしまうのであった。


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この時代に来て4年たつが、歌って踊って信仰を集める光景は、いまだに慣れない。

古代の頃は巫女に祈りを捧げるのが主流だったからね。


まぁ、慣れてしまえばアイドルの方が明るくて楽しそうなんだけど。



街中で三週間後のライブの宣伝をしていると、ヒエロは私に問いかける。

「アザリー。あんたはライブにおいて一番大事な事って何だと思う?」

ヒエロはそう言うと、ラジカセを取り出した。

「え?なんでラジカセ?」


「度胸よ!」

ヒエロはラジカセのスイッチを入れ、有名なアイドルソングを流した。

「さぁ皆!!あたしの歌を聞け!!そしてチケットを買っていけ!」

「ここで!?ここで歌うの!?」

ヒエロは大通りでいきなり歌って踊り出した。


確かに今まで歌と踊りの練習はしてきたが、いきなり路上ライブをする羽目になるとは思わなかった。


私は、お守りに貰った宝石を握りしめる。

「ええい!どうにでもなれ!」

街中で慣れない歌声を披露する。周りの人達はほとんどチラ見して通り過ぎていくけど、何人かはヒエロの歌声に興味を惹かれているようだ。

初対面の時も思ったけど、やっぱり歌がうまい。


曲が終わる頃には、何人かの客が盛大に拍手をしてくれた。

その後、先頭にいた猫背でタレ目のゴスロリ少女がゆらゆらと近づいて来た。


「君が、2000年前からやってきたっていう女の子…。」


なぜか私をじっと見る。


そしてチケットを一枚買ってくれた。

「本物のレイナちゃんだ…。」

周りの人は、ゴスロリ少女を見てざわついた様子だった。


「ボク、君のライブ絶対見に行くね♡」


ゴスロリの少女はそういうと、ゆらゆらと人混みの中に消えていった。


「お、俺も買う!」

「チケットはいくらかしら!?」

彼女に釣られて周りの人達も雪崩れるようにチケットを購入した。


「やっぱりあんたがいると注目度が違うわね、"2000年前から来た少女"さん。」

ヒエロは満足そうな様子だ。

「は、はぁ…」



夜は裏山の道の外周をランニングした。


「9分25秒、あんた一般人にしては結構体力があるわね。」


私は倒れ込む。

「はぁはぁはぁ…ヒエロ、これが本当にライブに必要な訓練なんだよね?」


「体力は大事よ!」


踊りや歌の練習だけでなく、基礎的な運動も必要らしい。ドラゴンと対峙した時の為に。



「あ!あれ見てアザリー!」

ヒエロは私の横に腰掛け、空を指差した。


「何かの星座?」


「カニ座よ!テレサに憑いてる神の奴!

あいつはあの星座がカルキノスだってよく自慢してくるのよね!」


「へぇ〜。カルキノスって確か、ギリシャ神話に登場する怪物だよね」


「そうそう!ヘラクレスに登場早々踏み潰されたダサい奴!テレサがあれの依代になった時は思わず笑っちゃったわ!

あ!これはテレサに言っちゃダメだからね!!キレるから!!」


「私がなんだって?」

後ろには水を届けに来たテレサがいた。

ブチギレ3秒前みたいな様子だ。


「いやぁ、カルキノスの素晴らしさについて2人で語ってたんだよね!

あの勇ましい肉体が…」


テレサはヒエロに飛び掛かり、2人のキャットファイトが始まった。


私は関係ないので、事務所に帰ってぐっすり眠る事にした。


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