天才アイドルヒエロちゃん 2話

天才アイドルヒエロちゃん 2話


•ヒエロ

 トートの巫女、脳筋少女

•アザリー

 古代エジプトから来た少女


•エジプト

 かつてナイル川付近で繁栄したとされる古代文明。当時の人類消失や大地変動、異常気象、行方不明者続出など多くの謎を残していて、現在は巫女連盟による結界を貼られ、立ち入り禁止となっている。


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「アザリーって言ったっけ?あんたって本当に2000年前から来たの?」

海辺の道を歩いていると、ヒエロが私に問いかけて来た。

まぁそんな簡単に信じてもらえる話でもないか…、今までもそうだったし。


すると、ヒエロの体からトキのような形をした鳥が湧いて来た。

「いかにも!その透き通るような青い瞳!天然お嬢様という顔立ち!こやつは間違いなく2000年前に実在したアザリーじゃ!」


突然出て来られたのでびっくりした。

この鳥はエジプトの偉大なるトート神。…の分身のようなものだ。

私はおじぎして挨拶をする。


「トート様、お久しぶりです。お姿一つ変わられていないようで安心致しましたわ。」



「ほっほっほっ。アザリー。おぬしはいつもぼーっとして上の空のような表情をしとるな。」

「えぇ!?あんたらいつの間に知り合いになってたの!?」

ヒエロは驚いた様子だった。…まぁ、2000年前からの知り合いなんだけど。


「そういえば、アザリーを未来に飛ばしたのは古代のトートの巫女の魔法なんだってね?あんた一言もそんな魔法教えてくれなかったじゃない。」

ヒエロがトート神に詰め寄ると、トート神は羽でチッチッチッ、という動作をした。


「おぬしにはもうその魔法は使えんから、教える意味がないんじゃ。光速転移型次元魔法を使うには、現代だと条件が足らんのじゃ!」

ヒエロは首をかしげる

「じょうけんー?」


「おぬしの脳細胞では話しても理解できんから割愛!」

「はぁ〜!?」

ヒエロはトート神を両手で掴み上げようとすると、トート神はヒエロの胸元に消えていった。

私は彼女達の様子を見て、先代のトートの巫女を思い出した。

「シファ…」



後に、古びた家が見えて来た。ヒエロが両手を広げたポーズをする。

「着いたわ!ここがあたし達のグループWild mummysの事務所よ!」

「イヤーーッ!オンボロ屋敷!」

「オブラート、って知ってる?」


扉を開けると、オリーブ色のコートを着た30代くらいの短髪の男が飛び出して来た。

「おいヒエロ!お前今までどこに…、」

男は私を見て静止する。

「…どちら様?」

男は私に聞いたので、挨拶をする。

「初めまして、私はアザリーと申します。

2000年前のエジプトからやって来ました。この度あなた方のグループWild mummysに加入させていただきます。宜しくお願いします。」


「あぁ、俺はニキアス•グリフ。このグループのマネージャー兼リーダーをやってる。よろしく。…え?加入?今加入って言ったか?」

ニキアス•グリフと名乗る男は震え出した。


「おいヒエロ!?何勝手に新メンバー連れて来ちゃってんの!?三週間後には解散するって言ったよな!?」


「解散!?」

私がヒエロの方をみると、彼女は「殺すぞ」と言わんばかりに怒りに満ちた表情をしていた。


「あんたがギャンブルで金を溶かした責任をあたし達に押し付けないでくれる?」


「でも、活動資金がねぇの!カツカツなの!もうこの過疎グループを続けるには、借金するしかねぇよ!!そんなの嫌だ!」

ギャンブルで大負けした事について否定しないあたり、本当らしい。

というか、過疎グループ?トート神の巫女様がいて過疎?


「よいではないか。」

泣き叫ぶリーダーをソファーに座っていた少女が遮った。

その少女は、淡い赤髪のツインテールで、カラフルで派手な柄のシャツを着ていた。


「戦力向上に繋がるなら大歓迎だ。この私に見合う実力があるのならね!


初めましてだな。私はテレサ•メロディ。カルキノスの神装巫女をしている。

君の神名を教えたまえ!」


「あ、私はアザリー。えーと、神名って、なにかしら?」


「君に力を貸している神の名前だ。」


「いないけど…。」


「はい…?」


「私は巫女じゃないから。」


そう言うと、テレサ•メロディと名乗る少女はヒエロに向かってスタスタと歩き始めた。

そして、胸ぐらを掴んだ。


「ちょっとヒエロ!!あなた一般人をグループに入れるつもり!?

何考えてんの!?」


胸ぐらをグラグラと揺らすも、ヒエロは動じない。


「いーや、よーくアザリーの顔を見て。」


「顔…?」


テレサは、私の顔をじっと見る、私も目を見つめ返す。


「絶世の美少女だと思わない?」

「確かに…。」


何を納得しているのか。


「しかも褐色黒髪、2000年前から来たというエピソードつき。

上手くハマればすごい人気になるわよ!

そうすればあたし達の戦力アップにも資金獲得にも繋がるでしょ。」


「ほう…」

「いや、そういう問題じゃ…、」

リーダーは感心し、テレサがしかめっ面をした。


「じゃあさ、こういうのはどう?

もし三週間後のライブで500人以上集められたら、Wild mummysは継続して、アザリーは見習い巫女として加入。

500人集められなかったら、解散。」


ヒエロの提案にニキアスは納得したようだ。

「いいぜ!金が集まるなら文句はねぇよ!!てか一石二鳥じゃねぇか!!乗った!」


「いやいや何を納得してんのよ!!」

テレサはあたふたしながら私の方を見た。

「巫女は危険な仕事なのよ!?普通の女の子に任せられるわけないでしょ!!」


「問題ないよ。テレサちゃん。

私の魂が問題ないって言ってる。」


私の真っ直ぐな目を見て、テレサもしぶしぶ納得したようだ。

「何を言っているのかさっぱりわからないが、君がそう言うなら…」


「だけど、500人集められなかったら即解散だからな。」

リーダーが釘を刺す。


「望むところよ」


ヒエロは自信満々に答えた




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