天体観測
🌗🌍が天体観測でばったりする話。まだあんまり仲良くない前提で書いています。
星が、好きだ。
前にローズから「名前にぴったりだよね」なんて言われたことがあるが、別に好きな理由に名前は関係ない。そんなことを言ったら、彼女だって名前通り薔薇が好きではないか。
「よいしょっと」
愛用している望遠鏡を鞄から取り出しセットする。私しか知らないこの星が綺麗に見える場所で天体観測をするのがいつもの日課だった。誰もいないから、静かに落ち着いて星が見られる。こんな場所他には無い。
「……あれ、スターズさん」
「……え?」
そう声をかけてきたのは、同じトレーナーの元で指導を受けているイクイノックスくん。彼とは同期で同チームではあるが、あまり話をしたことは無いし。そこまで仲は良くない。それにここは私しか知らない場所のはずなのに。
「スターズさんも天体観測するの?」
「え、あ、そ、そうだけど……」
「へぇ、じゃあ隣借りるね」
「う、うん……」
少し時間が経ったけれど、彼は私に話しかけて来る訳でも無く。ただ黙々と目の前の星空に集中していた。何だか私だけが気にしているのがバカみたいじゃない、なんて思う気持ちを振り払って望遠鏡を覗く。今日はいつもより星が綺麗な気がした。少し肌寒くなってきた広場で輝く夜空を2人で見ている、ちょっと変な感じだ。
「くしゅっ…」
思わずくしゃみをしてしまう、薄着をしていたつもりは無いのだが、少し寒さの方が上回ったみたいだ。
「……寒いの?」
「う、まぁね」
「じゃあこれどうぞ、僕下にもう1枚着てるし……もう帰るから」
そう言って彼が手渡してきたのはさっきまで彼が着てた暖かそうなカーディガン、私が口を挟む前に、彼は私の肩にカーディガンを被せ望遠鏡の片付けを始める。何だかすごくくすぐったい気持ちになった。
「それじゃあね、風邪引かないように気を付けて」
「ちょっ!?……か、カーディガン!ありがとう!後で返すから!」
「どういたしまして、いいよ別に返さなくても」
彼は私のお礼に軽い返事を返してそのまま行ってしまう。彼が天体観測をしていることも、ここの場所を知っているのが私以外にもいた事も知らなかった。ただ今は、彼の残していった暖かさが何だか嬉しくて、少しくすぐったくて。星空なんて見てる場合じゃない。貸してくれたカーディガン、明日返さなきゃな。