乾杯!
日の出には寝てるクロとその前で酒空け続けてるアニキ✂二十代前半鰐と二十代後半駱駝。
色々捏造(この時点で計画立ててたかはちょっとわかんないすね⋯⋯
プピー、という気の抜ける音がショコラの口にくわえられた吹き戻しからでておれは大きく肩を落とした。
「アニキ」
「みてこれ! お雑煮に御節に、用意したお蕎麦もだけどこんなに沢山貰っちゃった!」
「その前にせめてショコラの飾りを外してやれ」
「? なんで? こんなに可愛いのに⋯⋯ワノ国では新しい年迎える時に飾るんだって! 門松だっけ」
「手紙を読まされたから知ってる。玄関にだよ玄関」
「えー? ──あ本当だ」
ごめんねー。と謝りながら背中から何だかよく分からない大砲の様な飾りを外して外に向かうアニキを尻目に吹き戻しと頭につけられた鏡餅(と手紙に書かれていた)を外す。ごちゃごちゃと付いた豪奢な飾りはもう手がつけられないしショコラが満足そうに座り込んだので諦める事にした。あいつはショコラに対しては“可愛い”のハードルを下げすぎる。
こちらに来る途中で新聞で七武海入りの情報を掴んでしまったアニキは年の瀬というイベントに全ての祝いを詰め込もうと張り切っている。
ワノ国がどんな場所かは知識しかないがアニキを平然と受け入れ仲良くできる奴がいるなどろくでもない国に違いない。近づかないのが正解だろう。
「じゃあまず乾杯! 乾杯しよう!」
足音を響かせ両手にワインを掲げて戻ってきたアニキの行動に
「蕎麦に⋯⋯?」
と呟いたが聞こえなかったらしくグラスと倉庫に適当に放り込んでいたアニキが秘蔵と言っていたワインが並べられていく。後二時間で新年というギリギリで帰って来てから行動が何時もより倍素早く騒がしい。
「ふーん。なるほど年越しそばは今日中に食べ終われば良いみたい! じゃあほらほら!」
「なんだ」
「七武海入りしたんだから意気込みとか!」
「意気込みねえ⋯⋯」
こいつ七武海というのをそこらの町の町長レベルの話と勘違いしてないだろうな。
「準備はかかったがまあ、ここまで来たら忙しくなるだろうが慎重にやっていく」
「かんぱーい!」
「⋯⋯」
「ほらほら!」
外から年が変わる瞬間を祝う宴を始める音が遠くに聞こえる中ワイングラスが低く音を鳴らす。
「仕事始めまでには暫くあるからゆっくりしようね!」
「忙しくなるって言ったろうが」
ため息をワインで飲み込み蕎麦を食べる。
「⋯⋯⋯⋯合うな」
「でしょう! ア、じゃなくて、キング君が美味しいから是非って教えてくれた組み合わせでね! ワイン温度管理バッチリで助かったよ。味落ちてなくて良かった!」
来年もよろしくー! という気の早すぎるクラッカーが鳴らされ気の抜ける吹き戻しの音の中蕎麦をすする。
やはりこいつを受け入れるなどあり得ない。アラバスタにもしワノ国の奴が来たら注意しておこう。
新年を何度迎えようと落ち着きそうにないアニキと器用に蕎麦を啜るショコラを横目ににひっそりとリストに追加した。
アニキの様な馬鹿に計画を崩される事はないと思いたい。
新年を祝う花火の音がうち上がっても終わらない騒々しさにおれはその思いをより強くしたのだった。