大導劇神デスピアン妊娠出産見せつけ

大導劇神デスピアン妊娠出産見せつけ

まマクシムスシコスレ主

「ダメです」

―――そこをなんとか。

「ダメです」

手でバツをつくるのは白い豪奢な衣を纏った仮面の男。最高位指導者の執務室で押し問答を繰り広げているのは、当のマクシムスとその恋人の男だった。つい先日思いを確かめあったばかりであるのにそうそうに緊急事態が起こり、出動するためにこうしてマクシムスと交渉を重ねていた。

「確かに聖女を追うなら貴方しかいないでしょう。オマケに団長1人、部隊長2人が離反しました。けれど、彼らに匹敵する力を持つ者となればこそ、この国に必要なのです」

分かりましたね、見えない仮面の奥で笑ったのが分かった。男は渋々頷いているが、またここに来るだろう。マクシムスの意志は固いが、男も同じくらいに引き下がると言うことを知らない。

1人になったマクシムスは、城のテラスにて空を見上げていた。ここはこの国すべてを見下ろすことが出来る。来たる野望のための贄を見る。

……何時までそうしていたか分からないが、前兆もなく空が赤黒く濁り始めた。始まりの紫電が迸り宙を割って虚無が顔を覗かせる。

「おお……福音の刻が来ましたか……」

空に向かい手を広げ、願いを思い描く。自ら飛び込んだかのように神器が飲み込まれていく。贄は国民、烙印を刻まれた人間たち。ホールが閉じても空は染まったまま。

この刻から、大神祇官(マクシムス)は大導劇神(ドラマトゥルギア)へと生まれ変わった。

ドラグマは消えた。後に残ったのは、デスピアの劇城と変わり果てた民の軍勢だけだった。


―――これは、

男は、いつの間にか気を失っていたようだ。視界に移るのは目を疑うような光景だ。今の時刻ならばまだ青空が見えるはずだが、見上げてもあるのは目に痛い赤。城下町にいたはずだが、いつの間にか城の門前に移動していた。どこにいようと目に写る城の形も禍々しい造形で、わざとそうしているようにも思える。

城が街を飲み込んでしまったとしか思えず、ならば住民はと探索すると、影も形もない。たまに人型のモンスターと出会うが一定距離に近づかないと襲ってこず、小さい物騒な刃物を生やしたヤツらなどはほぼスルーだ。

男が思っていたよりも道のりはサクサク進んだ。城の中は部屋が増えていたりどこにも繋がらない階段が増えていたり、逆に減っていたりもしたが基本構造は同じようだ。

まず男は、神像の元に赴いた。マクシムスがいるとすればそこしかない。道中で確認したが、今の自分はところどころが変化しとても歪な存在になってしまっていた。片目は完全に道中のモンスターのようになり、聖痕のあった左腕から順に異型に変わっている。どうしたって原因は神像で、それを与えていたマクシムスが元凶なのだろう。1人の空間というのはつまらないもので、考えいるうちに聞くことは際限なく増えていった。


…………ォ……ォ………ォォォ……


神像を納めた間に近付くにつれ、声のような風のような音が響くようになった。それがどこか聞き覚えのあるものだと、男のここぞとばかりに働いた勘が訴えてくる。

「あら、あなたは確か大導劇神(ドラマトゥルギア)のお気に入りね」

と、いつの間に接近を許していたのか、可憐な少女の声が背後からした。見たことの無い白い少女は聖女の服を身にまとっていた。正確には、見覚えはあった。追放された聖女エクレシアの後継として召し上げられた少女は赤髪だったはずだが、今の彼女は全てが白く死人のようだ。

「ここから先に行くのかしら?辞めた方がいいわ。」

男は躊躇いながら何故か、と聞いた。白い骸の少女は気にした風でもなく答えた。

「だって、気持ち悪いんですもの」

……白い骸の少女が言ったのはマクシムスの事なのか、だがドラマトゥルギアとは何なのか。疑問がさらに積み重なったが、今から解を得る。扉に手を掛け、足を踏み入れた。


……一言で表すならば、異様、それに尽きるだろう。神像は禍々しいオーラを放ち精神を蝕む魔術か空間を埋め ているだけでも息苦しく、何かが入り込んでくる感覚が不快で立ち去りたくなるが、そこをぐっとこらえさらに奥を目指した。

はたして、向かった先にマクシムスはいた。ああ、もうマクシムスでは無いのかもしれない。白い骸の少女の言葉を思い出す。―――ドラマトゥルギア、それが新たな名前だとしたらそう呼んでやるのがいいのか。

マクシムスだった時からずいぶん様変わりしたドラマトゥルギアは、それでも男にとっては変わらない。大切な愛する人のもとに行くのに、何を躊躇う必要があるというのか。

ドラマトゥルギアは凶像に縋り付き、新たに誂えた翼についたトゲは地面を抉る。ゆったりとした衣服に隠れているがボテっと重力に従い垂れた孕み腹が、不規則に脈打ち中の命が活発に動いていること教える。

「ぁ゙、ぐぅ……くるし……い゙、ぎぃ……ぉ゙っ♡お゙ごっ、お゙っお゙っおひりっ♡ごわ゙れ゙る゙ぅ゙♡や゙、あ……」

男として味わうことのなかった出産という行為を強制的に、連続して、味わわされたドラマトゥルギアは、もう枯れきった喉を震わせながらデスピアンを生み出していた。

ボト、ボトボトっと3つほど続けて排出してもドラマトゥルギアの胎はまだ膨れている。

>生まれた仔は、雫に似た楕円の卵から柔らかな皮膜を破り、すぐに生まれてきた。締まりのいい彼では潰れてしまうやもしれないと思ったが問題ないようだ。いや、むしろデスピアンの方が彼の体に寄り添い生まれたのだとしたら。

「いッ、くるしっ、ふっ、ふ、はひっ!ぁ、……んんん゛っ!」

順調に卵を産んでいたドラマトゥルギアだったが、詰まってしまったようだ。卵自体は覗きこめばすぐの所まで来ているが、散々酷使されイキすぎた牝肉が痙攣し、呼吸も不安定だ。手は何かを手繰るように空をかいている。

男は今のドラマトゥルギアに何かしようとは思っていなかった。それは彼がどう変わったか分からないからであるし、このどうしようもなく醜く神聖な儀式を邪魔したくないという思いもあった。けれどもドラマトゥルギアが男自身を求め、その苦しみが和らぐのなら、幾らでも手を貸そう。

―――マクシムス。

男はあえてドラマトゥルギアのかつ手の名を呼んだ。一種の賭けではあったが、その予想は裏切られなかった。

ドラマトゥルギアが短い呼吸の間に男の名前を呟いたのを、男が聞き逃しはしなかった。ふらりと揺れた手を握り肩を抱く。苦しむ妻を労わるように背をさすれば幾分かマシになったようでほっとする。

「あっ、ァ………うっ、う、産まれる。はやくっ、も、もうだめぇ…ゔぁ゛ぁ゛……♡」

ブチィ、と音を立てて胎の中でついに卵が割れた。中から這いずり出て来るほど元気がいい。白濁液に似た卵液をまとい生まれたこの仔は、先程の仔とは形が違う。ドラマトゥルギアの産む卵にはいくらかの種類が存在するようだ。

その異形の身もドラマトゥルギアの胎から出てきたと思うと愛おしく感じて、そっと抱き上げる。刃物に気をつけて腕の中に招いても、思ったより大人しい。ずっと抱えていてもしょうがないので適度に解放すると、すでに知っているのか生まれた仔は同じ場所に向かう。

―――マクシムス、頑張ったな。

仔らを見送り、やっとドラマトゥルギアに専念する。すでに色が変わるほど握られた手の先は感覚がない。壮絶な苦しみから開放されたドラマトゥルギアは、待たされた分詰まってギチギチの卵を連続して産みっぱなしだった。それも終わった。

あれだけ膨れ、ドラマトゥルギアの体格を持ってしても、バランスの悪かった胎は伸びた皮を余らせぺたんこだ。あまり見ているとジロジロ見ないでくださいと、鋭く指摘され目をそらす。着崩れただの布になった服も、謎の液体で濡れそぼっている。まともな雄として役に立たななかった小さな陰茎は姿を消して、代わりにつるりとした岡と女陰が出来上がっていた。服の中に隠れ見えなかったが、そこから卵をひり出していたようだ。自身を作り替え、牝として完成したドラマトゥルギアに男は鼓動を早める。

荒く呼吸を繰り返すドラマトゥルギアを抱える。冷たいその体が少しでも温まるように。男は、ドラマトゥルギアが忘我の果てから帰ってくるまでただそうしていた。

「……ン、……なぜ…貴方が、ここに?意識は、ある様ですが」

―――さあ、よく分からない。だがすぐに消える。

「そう……ですか。恐らく原因は獣の血でしょうね。……ですが、ちょうど良かった」

男とドラマトゥルギアの考えは同じだった。後の無い人形に変わりゆく男は、最期をドラマトゥルギアと共にすることを決めてた。一方でドラマトゥルギアも、最後となる行為を待ちきれずにいた。

ドラマトゥルギアは男と向き合い消失した口を触れ合わせる。水音もしない乾いたものだったが、これ程までに欲を煽るものも無いだろうと、男は背筋を震わせて陰茎をいきり勃たせた。

Report Page