夢裡
スーちゃんスレ主裸足のまま走っている。
両手に沢山のたべものを持っていたが、なんで持っていたのかは分からない。けれど、とある家が見えてから思い出した。
そうだ、あの2人のために持ってきたんだ
「ツーちゃん、マーちゃん!たっだいまぁ!」
家の戸を開けるとそこには2人の同い年くらいの子供がいた。その2人は春野を見るとパッと笑顔をみせる。
1人は青に黒が溶け込んだような長い髪をもつ少女
もう1人は光に髪が当たると赤っぽく光る髪をもつ少年
「おかえりハルちゃん!!」
「ハル、おかえり。大丈夫だった?」
「へーきへーき!アタシ強いのよこれでも?それよりほら今日いっぱい!」
「凄い量!椿はじめてみた!」
ここはあんまりにも食料や水が少ない。だいたいは取り合い、奪い合いになる。
水なんて殺し合いにも発展したりする。
それくらいに、治安が悪い場所…それが、この流魂街
けれど楽しい、自由に生活ができる場所だった。
流魂街でこの桃色の目は邪険に扱われた
鬼の子だのなんだの言われた
だから、ひとりだったずっと
けど、この2人は…ふたりだけは仲良くしてくれた
初めてできた友人
初めてできた家族みたいな人たち
……はじめて守らなければならないと思った大切な2人
だから自分なりに大切に、大切にしようと努力した。けどアタシは馬鹿だから、なにかをしてあげることなんて出来ない。
腕っぷしだけは強いから、それしかないから…他の人から奪って、奪われないようにした。
この2人を守る為ならどんなことだって
バツンと、周囲が暗くなった。
周囲を見渡すも闇しか広がっていない。何が起こったのか分からない、あの二人は?大丈夫なのかと、心配で春野の頭をいっぱいにする。
暗闇の中をひたすら走り続けた
走って、走って……先に行く2人を見つけた
「ツーちゃん、マーちゃん!まって、待ってって…!なんで先に行ってるの!おいてかないで…!!」
「あーあ、来ちゃったよ。正義どうする?」
「ぇ…?つ、ちゃ…?」
「何もしなくていいだろ。」
「それもそうね」
「まーちゃん…?なに?アタシ、なんかしちゃった…?」
なにかしたのなら謝らないと、殆ど無意識で2人に手を伸ばした
ひとりになりたくない
「触るなよ、気持ち悪いな」
「え…?」
伸ばした手を振り払われた。春野は何が起こったのか何も分からないため固まってしまう。
なんで?
「すぐに人を信じるなんてただの馬鹿だろ」
「誰もアンタみたいな気持ち悪いやつの事なんて好きになるわけないでしょ?
ほんと、ハルちゃんって馬鹿だよねぇ」
なんで?どうして?そんなこといわないでよ
そんな言葉が浮かぶが声に出せない。声に出せないからなのか、代わりに涙が溢れ出てきた。
「あぁ…やっぱり、イイ顔してくれるね…ハルちゃん…好きよその顔は」
「ひっ……」
うっとりとした顔をして笑っている少女をみて短い悲鳴をあげる
あぁ
このふたりは……アタシのことなんて
なんともおもってなかったんだ
「うわぁぁあ!!…はっ、はぁっ…は…いまの…は…ゆ、め…?」
バッと布団から飛び起きる。部屋をみるとあの家ではなく、ここは瀞霊廷内の自宅だというのがわかった。
時計を見ると丑三つ時、午前2時
「っ!はっ、はぁっ…ぅ……は、ッ…」
頬を伝う汗が気持ち悪い、ぐっしょりと背中も汗で濡れている。それに、呼吸も浅く少し手の先が痺れていた。過呼吸を起こしかけている
胸のところに手を置いて、過呼吸が悪化する前にゆっくりと息を吸ったり吐いたりを繰返す。
しばらく呼吸だけを繰り返し、なんとか過呼吸が収まったがそのまま布団に倒れ込む。
最近、この夢を見る頻度が以前よりも多い気がする。三日前に、同じようにあの2人の夢を見たばかりだった。まぁ、今回のは妙に生々しかったけれど
「…っはは……」
乾いた笑いしかでない。
この出来事自体、何百年前だったか
それでも、あの時のことはずっと脳に焼き付いている。あれから、人のことを信用するのは…こわくなってしまった。捨てられるのが、要らなくなってしまうのがこわい
「嫌になっちゃうわね、ほんと……」
誰かの家に突撃しようかと一瞬考えるも、深夜だから恐らく誰も起きていないだろう。もしかしたら阿近ちゃんあたりは起きてるかもしれないが、会いに行くような顔はしてないだろう
とはいえ、いますぐもう一度寝るには勇気がいる。また、あの夢をみてしまいそうだ
「…アクセサリーつくって眠くなるまで時間潰しましょうかね」
起き上がり、燭台の蝋燭に火を付けた。ゆらゆらと炎が揺れて少しだけ落ち着く
「さて、何作ろうかしら…」