夢現 前編
「…ごちそうさま。」
「あら?ツバキちゃん、お口に合いませんでしたか?」
「う、ううん!そんなことないよ、ミモリ。」
まだ起きてこないカエデのいない静かな食卓。
食事を終えた私にミモリが心配そうに尋ねる。
「そうですか…?もし苦手なものとかがあれば遠慮なく…」
「うん、ありがとう。でも本当に心配しなくていいよ?」
「あ、そうだ。私、今日から暫くゲヘナに修行に行ってくるから…」
「そう言えばそうでしたね。くれぐれも気を付けてくださいね?」
「はぁい。」
ミモリを心配させないように返し、足早に部屋を出る。
正直に言うと…ご飯は全然美味しくなかった。
ゲヘナ学園の修学旅行でガイドを務めてから暫く経ったが、ずっとこの調子だ。
どうやら何かの拍子に私の好みが変わってしまったらしい。
何度も箸を止めてしまいそうになるのを堪えて完食はしたが、早く口直しをしたかった。
向かうのは自室。鍵付きの収納を開け、中にあるソレを取り出す。
「ぁ…もう、無い…」
中にあったものは残り一つになったゼリー飲料らしきもの。
私はソレの封を開けると、その口から一気に中身を吸う。
「じゅぞぞ、じゅ…ちぅ、ちぅ…」
口の中をコーティングしていく何か。
えも言えない生臭い味と、ぐちゅぐちゅと口内の歯茎の隙間にまで纏わりつく食感。
以前であれば手で触れることすら躊躇っただろうそれを、私は平然と飲み干していく。
「ごきゅ…んぶぅ…っぷあぁ…!美味しい…!でも、何か足りない様な…」
脳にパチパチと幸福感が弾けて広がっていく。
味でもなく食感でも無い、何か物足りなさを感じるが気のせいだと頭を振る。
実のところ、これの中身が何なのかは私自身も知らないのだ。
物自体はガイド中に仲良くなった万魔殿の子に箱でもらった。
身体と睡眠に良いと聞き、飲み始めたが本当に効果覿面だった。
気だるい感じが抜け、ぐっすりと眠りにつくことが出来る様になったのだ。
今となって味にもすっかり慣れ、むしろこの味が欲しいと思うほどになっていた。
「ぁ…下着、替えなきゃ…」
気が付けば下着は受け止めきれない愛液を零し、腿の内側を伝っていた。
でも仕方ない。こんなに美味しいのだから。
…こんなに愛液が出ていたことなんて、あっただろうか?
「そういえば…私の好みが変わったのって…へぁ…?」
ミモリのご飯が美味しくなくなった時期とこれを飲み始めた時期。
それらを同時に思い浮かべると、何やら頭に靄がかかる。
「あれ、何考えてたっけ…?」
何かを考えていた様な気がするが、忘れているのだからどうでもいいのだろう。
それよりも、無くなってしまった以上はまた貰いに行かなければ。
そう思い、私は支度を始めた。それが私の破滅への旅支度だとは微塵も思わずに。
─────────────────
「~♪」
私は百鬼夜行とゲヘナの間にある自治区のマッサージ店に足を運ぶ。
その店は紹介制で、最初は例の万魔殿の子に連れられて行った。
戦々恐々といった心持ちは既に懐かしく、今ではもう慣れたものだ。
この店でのマッサージはとても良いものだ。
身体の凝りを解してくれることは勿論、気持ち良すぎてあっという間に寝てしまう。
その睡眠もまた極めて良質なもので、私は完全にハマってしまった。
そして今日は万魔殿の子の家を活動拠点とした、1週間のゲヘナでの長期修行の初日。
ここのマッサージも受けた上で温泉の多いゲヘナでしっかり身体をほぐせば万全だ。
ゲヘナでの修行はさぞ良質なものになるのだろうと思いを馳せる。
そうして私は意気揚々と店の扉を開いた。
「こんにちは~」
「あら、ツバキさん。いらっしゃい。」
「もうすぐ空くから掛けて待ってて下さいね。」
店員の方が自分を認識し、気心知れた様子で愛想良く返してくれる。
自分がすっかり常連なのだと思うと、何だか少し誇らしかった。
私は荷物を預け、受付近くの待機場所の椅子に腰掛ける。
「はぁ…やっぱりここ…落ち着く…」
何度来ても安らぎを感じる場所。そういった場所はそう多くない。
何故なのかは全くわからないが、この店はとても落ち着くのだ。
まるで、”自分が居るべき場所”に帰って来た様に。
「ツバキさん、どうぞー。」
「ぁ、はぁい。」
少しぼうっとしていると自分の番が回ってきた。
最後は裏口から出るために誰ともすれ違わない通路を抜け、中に入る。
そして、いつもの様にマッサージ台の上にうつ伏せに寝た。
「じゃあ、始めますね。」
その声と共に施術が開始される。
そう、これはいつものことだ。いつものことのはず。
この後は…後は…?あれ…?いつも何をしていたか、何も思い出せない。
強烈な違和感を覚えて起き上がろうとすると───
「───!?」
身体が、一切微動だにしない。
声を出そうとも何も出ない。いや、口もすら動いていないのだ。
すると、店員さんの声が聞こえてきた。
その口調は普段のよく知る人当たりの良いものではなかった。
「えーと、今日は…おっと、もうこの段階か。」
「今日からもう引き返せなくなるから、覚悟しといてね?」
店員さんはそう言うと、私の乗った台を押して運んでいく。
何も見えない私に聞こえてきたのは重い鉄の扉が開く音だけだ。
「ふふっ、恨むなら適正があった事を恨んでよ、”眠り姫”♪」
また別の店員の声を聞きながら、私の意識は暗闇に落ちた。
─────────────────
「ぁ…ここ…!?」
目を開けると、そこは煽情的な光に照らされる薄暗い寝室だった。
身体を見遣れば、おっぱいやお尻を強調する服なのかすら怪しい紐の寝巻に包まれていた。
そして、私は思い出し始めた。
「そうだ…私、麻痺させられて…」
初めてこの店に来た時、私は神経ガスで制圧された。
それも待機していた部屋にガスを充満させるという強引なやり方で。
眠りながらでも動ける私には非常に有効な手だった。
「夢の中で、長い間…お、犯…犯され、て…!」
私は思わず自分の身体を掻き抱いた。
それ以降のことは、目の前の景色が鮮明に思い出させてくる。
何故か全身に力が入らず、沢山の”お客様”の手に掴まれ、組み伏せられた。
そして、猛々しい”おチンポ様”を”娼婦である私”の”おマンコ”に何度も、何度も突き込まれた。
どれだけ暴れようとも振りほどけない、おっぱいを掴むその手に恐怖した。
乱暴に私の穴を行き来する”おチンポ様”の、あまりの気持ち良さに震えた。
最後には悦んでいた自分を、心底蔑んだ。
「で、でも…終わったはずじゃ…!?」
そうだ、これは既に終わったはずの夢だ。
でも、そうなると娼婦として過ごした3年間は一体…?私は娼婦のはず…
(ち、違う…!私、娼婦なんかじゃ…!)
娼婦じゃない。私は娼婦じゃない…はず…。ダメだ、全く確証が持てない。
お客様への奉仕と服従は絶対だし、ご主人様に逆らうなんてことはあり得ない。
なら私は娼婦なのでは…?
(あぁっ、わからない!わからないよぉ…!)
混乱する頭は全く整理がつかない。
だが、目の前には娼婦として過ごした部屋の光景が間違いなく広がっていた。
「この部屋…まさか、また…!?」
「何であの店に…!?また、忘れさせられて…!?」
直近の記憶も徐々に戻ってくる。
すると、よくわからない装置に繋がれて記憶に蓋をされた事を思い出した。
記憶の中の私は何事もなかったかのように店員に礼を言い、気分よく百鬼夜行へと帰って行く。
その時に考えていたのは、『また来よう』だった。
「あのパックも…!?う”っ、おぇ…!」
散々飲まされたお客様方のザーメン。それを美味しそうに啜る自分の姿。
そして自室でも美味しい、美味しいと啜り続けていたその味を思い出す。
私は思わず吐き気を催すが、それは思い出した味によるものではない。
誰のものともわからないザーメンを美味しく啜れる、私自身への嫌悪感によるものだ。
『あー、あー。ツバキちゃん、聞こえてる~?』
「この声は…!」
聞こえてきた声は店員達のもの。
見れば部屋の壁上部に教室のそれと全く同じスピーカーがあった。
音はそこから聞こえているが、これまた強烈な違和感があった。
何故なら、これまで一度もこんなスピーカーは見なかったのだから。
『えーと確か、今回で7度目…だよね?』
『うん、合ってる合ってる。』
『いつもご来店頂きまして、誠にありがとうございまぁす♪』
軽快に、それでいて楽しげに挨拶をする店員達。
だけど私はそんな挨拶を聞いていられなかった。
「お願い…もう…もうやめてぇ…!」
私は思わず顔を手で覆い、涙する。
眠る度に半年は続くこの夢は、すっかり私から反抗心を奪い去っている。
どれだけ赦しを乞うても赦されず、徹底的に犯され、虐められるのだ。
故に、これから起こることが恐ろしくて堪らない。
だけど、店員達は誰も私の言葉に聞く耳を持たなかった。
『時間が勿体無いから簡潔に言うね?』
『これまで見てもらった夢は、思考を超加速させてたの。1日が365日になる様にね。』
『あの人の技術凄いよねぇ…』
『夢は別人の記憶データを加工したものを流してたんだ。』
『これまで6度の半日ずつ…ザックリ3年分って所かな?』
「超、加速…!?」
正直、何を言ってるのかわからなかった。
そんなフィクションの様な事が現実にあるのかと。
だけど、私の記憶は確かに3年の年月を認識している。
故に、その言葉を信じざるを得ない。
『でも今日からは違う。…まずは1週間、あるよねぇ?』
「ッ!!」
私の背筋に怖気が走る。
そうだ。私の予定はゲヘナへの1週間の滞在。
あの子が最初に私を連れ込んだ以上、クロであることはほぼ間違い無い。
つまり、私は自ら地獄への旅行を計画していたのだ。
「いやぁっ!この夢はいやなのぉっ!起こして!私を起こしてよぉっ!」
その事に気づいた私はスピーカーの下の壁を叩き、半狂乱になって泣き叫ぶ。
もちろんそれが聞き届けられる事も無く、続く言葉は余りに無情だった。
『今は等倍で夢と現実を繋いでるけど、この後加速してからは繋がらなくなるからね~』
『まあそんなことより、これからは本格的に娼婦として教育していきま~す!』
「ぇ…!?」
その言葉を皮切りに、部屋の扉が開く。
どれだけ叩いても蹴っても微塵も開く気配が無かった扉が。
それが開くということは───
「おぉ、これが眠り姫の身体か…!」
「予告映像でどれだけ焦らされたことか…今日こそは愉しませてもらうぞ?」
『ええ、もちろんです。睡姦にはなりますが、どうぞお愉しみください♪』
「お、お客、様…!?」
私は腰が抜け、その場にへたり込む。
そこにはお客様方が、ニタニタとした笑みを浮かべて立っていた。
その声は不思議な事に、スピーカーと目の前の両方から聞こえてきていた。
お客様方は私の身体を品定めする様に、舐め回す様に私を視姦する。
皆様のタオル一枚を撒いただけの腰は、一様に膨らみを持ち始めていた。
『ツバキちゃん、今貴女が見ているお客様方は…現実に来て頂いている本物です。』
『だから今から犯されるという事実は、夢でも無くて紛れもない現実。』
『こっちのツバキちゃんとも連動してて、膣内に出すとちゃぁんと孕むよ♪』
『ツバキちゃんの身体、覚えてくれてるみたいだね。おチンポ様をもう手で扱き始めてる。』
『今回で自分の身体での記憶データが取れるから、より実感のある夢が作成できるよ。』
『これから7日間…いや、ツバキちゃんには7年間かな?』
『身体も使って、たぁっぷりお勉強しようねぇ♪』
その言葉を皮切りに、無数のゴツゴツした手が私に伸びる。
そして首、腕、おっぱい、腰、お尻をガッチリと掴まれ、蹂躙劇の幕が、また、開いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「じゅぼっ、じゅぼっ、んぶ、んぅぅぅ…!」
私は騎乗位の姿勢で口とおマンコを使い、お客様のおチンポ様を必死に咥える。
最初の半年で教えられた作法やテクニックは、3年もの歳月で完全に身体に染みついていた。
言われずともカリの裏を舐め、腰をぐりぐりと捻りながらピストンをし、膣肉で擦り上げる。
「んっ、ふぅん…!ん、んぁんぅ…!」
気が付けば私の声は甘いものに変わっていた。
そうだ、前もそうだった。セックスはとても気持ちがいい。
それこそ、安眠なんてどうでも良くなる程に。
生物としての本能からくる欲望を満たしているこの感覚が、代えがたい満足感を与えてくれる。
だけど今回は前と大きく違う点があった。
(なに、これぇ…!?前よりも実感があって、もっと気持ちいい…!)
(いや、違う…!これ、私の身体も犯されてるからぁ…!)
以前までは夢の中で、痛みも快楽も頭で味わっていた。
言ってしまえば夢の中で寒暖を感じる様なもので、現実のそれとはほど遠い。
だが今は起きている時と何ら変わらない感覚で、セックスが齎すものを私は享受しているのだ。
(おチンポ様…美味しい…!匂いも塩気もたまらない…!)
(おマンコの肉抉られて気持ちいいのも、身体に染みるぅ…!)
私はこれまでになかった快楽に夢中で、大切なことを忘れていた。
一瞬だけ、両手足でもおチンポ様を扱いていた事を忘れてしまっていたのだ。
「何をしている、手の扱きが止まっておるぞ?」
「んやぁぁぁぁ!?!?ご、ごめんなさいぃぃぃ…!!」
突如感じた、引き千切られたかと思うほどのおっぱいへの激痛。
私はお客様が縛ったおっぱいの根本を締め付ける縄を掴まれ、吊上げられていた。
でもそれは私が悪いのだと、3年間で嫌と言うほど教え込まれた。
快楽に喘いでおチンポ様への奉仕を怠るなど、殺されても文句は言えない。
連想して、かつて夢の中で罰として首の骨を折られた時のことを思い出す。
理由はお客様へ口ごたえをした挙句、娼館から脱走しようとしたこと。
今だからわかるが、私じゃない誰かがそれをして廃棄されたのだろう。
…”なんてバカな人なんだろう”。
「人数もいるし、アレやるか。」
「ふぇ…?」
お客様の内の一人が提言し、他の方もそれに首肯する。
すると、おっぱいで吊られたままの私のおマンコからおチンポ様が抜かれた。
そして抜かれたおチンポ様は、私のアナルへと突き込まれる。
「お”っ…ほおぉぉぉぉぉぉ…!!」
「うおっ…よく締まるし、畝りよる…!」
アナル特有の膨満感と、脊椎に向けて一直線に走る快楽が脳細胞を焼き焦がす。
思わず舌をピンと突き出し、涙、涎、鼻水まで垂らして汚い声を上げてしまった。
だが、それで終わるはずが無い。
「へ…?ふぎゅうぅぅぅぅ!?!?!?」
「ふはぁ…あったけぇなぁ…!ふわふわのとろとろだ…!」
アナルにおチンポ様が入った状態から更におマンコへの挿入。
マンコ穴とケツ穴の間の薄い肉がミチミチと音を立てて伸ばされ、凄まじい膨満感で頭が一杯になる。
「流石にここには入らねぇが、しっかり埋めてやるよ…!」
「あ”っ!?あ、あ”あ”あああああ”あ”あ”あああ!?!?!?」
尿道ブジーを一気に突き込まれ、その痛さに悶絶する。
一方で身じろぎする度におマンコとアナルが気持ちよくて、もう何もわからない。
すると漸く私を吊っていたおっぱいの縄が下ろされた。
私はそのままお客様方の身体に仰向けに寝そべる。
「ひぃ…ひぃ…ひぃぅぅ…!」
「あとはここだけだな。」
「むごぉ!?」
トドメに私は上を向かされ、喉マンコの最奥にまでおチンポ様を突き込まれた。
全穴挿し。私の埋まっていない穴が何一つ無い、”娼婦”として目指すべき一つの姿。
お客様方はそのまま抽挿を始められる。
「ぐぼっ、ぐぼっ、う”っ、ぐぼっ、お”え”っ、ぐぼっ…」
ぐちゅ、じゅぷ、ぱちゅん、にちゅ。
ひたすらにその様な水音とお客様の荒い吐息だけが聞こえてくる。
嘔吐反射で呼吸もままならない喉マンコ。
激痛が気づけば快楽に変わっているおしっこの穴。
ザーメンを欲しがって子宮口が吸いつきに行こうとするおマンコ。
呼吸の度にうねり、締め付けるアナル。
私の全てを使ってご奉仕させて頂いている。
これこそが私の、娼婦としての本懐…なのだろうか…?
いや、そうなのだろう。だってこんなに気持ちいいのだから。
「じゅぞぞ…じゅぅっ、ごぷぷぷ…!」
朦朧とする意識の中でもご奉仕することは忘れてはいけない。
手で、足で、膝裏で、腋で優しく扱き、気持ちいい場所を刺激する。
自分で動かせない部分はどうしようもないが、お客様の邪魔にならない様に気を付ける。
舌が這う太股。
差し込まれるおっぱいと胴体の間。
短めだけど巻くことはできる髪。
そういった部分まで、私は有効活用されていく。
それが私の喜びであり、悦びのはず。
「ぐぼっ、むぢゅう、ぐぼっ、じゅぞぞ、ずずず…」
お客様方のおチンポ様が更に熱を帯びる。
ああ、これはお射精が近いのだろう。
それに私も締め付けたり、動きを早くしたりして応える。
そして───
「じゅぶぅ、ぶふぅ…!─────!!」
ナカで、弾けた。
「じゅる、んぐっ、んぶふぅ、ごくっ…」
口内に頂いたザーメンは、私に至上の悦びを齎す。
パックに入ったものとは異なり、新鮮なものだからだろう。
私は喜んでそれを嚥下する。
子宮内とケツ穴にもザーメンはとくっ、とくっと注いで頂いた。
その熱もまた初めてで、じんわりと私の胴を温めてその存在を強く感じる。
身体の外側にもザーメンをかけて頂き、私は顔まで真っ白に染め上げられていく。
「っぷぁ!はーっ…はーっ…はーっ…はーっ…!!」
肩で息をする私からお射精頂いたお客様方が離れていく。
すると私の思考も徐々に冷静さを取り戻してくる。
(今、私…自分が娼婦って…?え…?)
(あ、あぁ…!私、また犯されて、しかも、自分で求めて…!?)
冷静になった思考は自らを客観視し、私は絶望に苛まれる。
だが、これで終わるはずは無かった。
「やあ『眠り姫』ちゃん、次はおじさん達の相手もよろしくね?」
顔を上げたその先には、沢山の控えている方と欲望にギラつく瞳があった。
─────────────────
「3年分を経験させてるのにまだ拒否反応を示すとは…」
「いやぁ…良いデータが取れて助かるねぇ…!」
「前回時点でLv.5の記憶も耐えてたし、あんまり心配してなかったけどね。」
マッサージ店の店員、いや、組織に忠誠を誓う研究員らは感嘆の声を上げる。
一方で不満そうな声を上げる者もいた。
「しかし…”日常生活をさせながら調教しろ”とは、ご主人様も無理を言う…」
「まあまあ…これは仕入れをより安全に、内密にする為の実験でもあるから…」
「それにもう今回で詰みだし、残りは消化試合みたいなものだよ。」
一人が愚痴を言って、また別の一人がそれを宥める。
内容さえ聞かなければ年相応の微笑ましい会話だった。
しかし、その内容を気にする者など誰一人としていない。
悍ましい会話は未だ夢と現実双方で犯され続け、お客様方の中でザーメンに溺れるツバキを見ながら笑顔で続けられる。
「”眠り姫”には今日頂いた子種で孕んでもらう。産めば諦めがつくハズ。」
「あとは経過を観察しながら適宜対応を考えよう。」
「Lv.6の研究データを参考にすれば高速出産もできるね。最短で…1日かな?」
「やりすぎると子宮オシャカになるけど、出産娼婦の予定も無いし良いよね~♪」
春日ツバキの目覚めは、未だ遥かに遠かった。