夢現 中編
「お…げっ…へっ…お、ぉ…!」
犯された。今日もいっぱい、犯して”頂いた”。
仰向けに背筋を仰け反らせ、痙攣する私。
全身にへばりつくザーメンがずっしりと重い。
呼吸をする度におまんこからザーメンがこぷっ…ぶぷっ…、と溢れ出る。
おまんこをしっかり閉めて一滴も零してはいけないのに、だらしないおまんこでお客様方に大変申し訳なかった。
「ふぅ…良かったぜ、眠り姫ちゃん!」
「ぎひぃっ!?」
一人のお客様にバチンとおっぱいを平手で叩かれ、更に絶頂する。
痛みが快楽になっていたのは何時からだっただろうか。
腹パン係だった時?
とても太いピアスを開けた時?
いやらしい大きなタトゥーを入れた時?
スカリフィケーションをした時?
わからない。わからないけど、痛いのが気持ち良い方が良いことだけはわかる。
傷や印は失神して起きたら治ってるし、お客様方が喜んでちょっと優しくなる。
だからどうでもいい。
「ははっ!面白いなこれ!」
「イ”、イギまずっ!肉布団絶頂じまずっ!!」
「んぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
更に叩かれ、だぱん、べぢん、と揺れるおっぱい。
愛液が飛び散り、ベッドに着いていた背が浮く。
図らずもその体勢はおマンコをお客様方に差し出すものとなっていた。
「ほう、自分からマンコを差し出すとは殊勝な事だ。」
「ふぎゃあっ!?ま、まらイっへ…!んおお”っ!?!?」
その言葉と共にセックスという名の蹂躙は再開される。
恐らくまた私が失神するまで突き、射精し、舐って頂くのだろう。
これが私の日常。毎日がこれで、これからもずっとそう。
娼婦がその身を差し出し、お客様がそれを嬲ることは当たり前なのだから。
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「ぁぇ…?」
だが、恐らくは3年程が経った頃に変化があった。
恐らくというのは今のこの部屋に時計やカレンダーが無く、体感でしかわからないからだ。
目が覚めた私は、バリバリに渇いた体液による不快感を感じながら、まんぐり返しの姿勢を解く。
「おっぱいとお腹…張ってる、様な…?」
やけにパツパツとした感覚を身体の内側から感じる。
辛いという程でも無いが、普段とは異なる感覚に戸惑いが隠せなかった。
「っ…!いけない、早く次のお客様をお迎えしないと…!」
大した事ではなかったため捨て置き、慌てて身支度を始める。
娼婦がお客様を待たせるなんて、あってはならない。
どうせまた寝て起きたら治っているだろうと、私は気にも留めなかった。
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「ぅぷっ…!」
あれからまた、時間が経った。多分、半年強くらいだろうか。
あの違和感は消えるどころか日に日に増していき、最近では膨満感に吐き気まである。
前のお客様にM字開脚で縛られて吊るされたままの状態から何とか抜け出し、再確認するが何も変わらない。
縄酔いでもなく、ザーメンでの胃袋の許容限界でもない。
だが、目で見てわかる変化が、今、私の眼下にはあった。
「やっぱり、これ…赤、ちゃん…」
一回り大きくなったおっぱいに、ぽっこりと膨らんだお腹。
私の独り言に是も非も答える人はいない。
だが、その程度の性知識は持っていた。
セックスをすればお精子様が私のザコ卵子を食い破り、赤ちゃんができる。
目を逸らし続けた、当たり前の事。
意識する度に凄まじい嫌悪感があった。
「で、でも…これは夢…夢の、はず…寝て起きたら…治ってる、夢…」
故に現実から逃避した。これは夢だ。この上無く、悪い夢。
そう思いたい。だが、時折感じるのだ。とても小さく、微かな鼓動と繋がりを。
おチンポ様を咥え、ザーメンを溜め込み続けた子宮の中から、確かな熱を。
そして、どこか胎の中のソレに奇妙な愛着を持っている自分を。
「………」
仮にでも、胎のこれが無くなる。そう考えると、とても、とても虚しい気がした。
考えれば考えるほど、思考は堂々巡りに陥っていく。
私は何も考えず、お客様を気持ちよくさせ、気持ちよくなる事だけを考える事にした。
娼婦にそんな考えは不要なのだから。
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「うっ………ふぅ……………」
また少し、時間が経った。3カ月半と言った所だろうか。
「あっ…また蹴ったぁ…!」
子宮の中の私の子が、内側から私を蹴りつける。
ザーメンまみれの身体の不快感も全く気にならず、その元気の良さに愛しささえ覚えた。
───認めよう。私は娼婦だが、この子の母でもある。
ザーメンとお客様に叩かれてできた赤い手形まみれの、パンパンに張ったボテ腹。
それを私はぬりゅ、ぬりゅ、とさすりながら改めてそう自覚する。
時折微かに浮かぶヘイローを見る度、心が温かくなる。
どのお客様との子かも分からないが、半分は間違いなく私の血を引いているのだ。
それをほんの少しの間とは言え、疎んでいたとはとても思えなかった。
「…?」
それは突然だった。
パツン、という音と共におマンコから温かい液体が溢れ出て内腿を伝う。
いや違う。これは流れ落ちているのだ。
「これ、破水…?う”っ…!?」
そして始まったのは激痛。
破水を悟り、その直後に始まったそれを陣痛と断定するのは容易だった。
私は歯を食いしばってボテ腹を抱えながら脚を開く。
「覚醒確認。」
「いやぁまさか本当に3日で出産とは…これでまだ短縮できるの凄いね。」
痛みを堪えながら瞬きをすると、不思議な事に景色が変わった。
そこはいつもの抱かれる為の寝室では無く、見た事も無い無機質な打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた部屋。
私は分娩台の上に乗せられていた。
「ぁ…え…?ここ…どこ…?」
「おはよう、眠り姫。3日ぶり…いや、君にとっては3年ぶりか。」
「おひさ~☆」
「ぁ…」
私の視界に映る人達。
この人達は確か、いつぞやのマッサージ店の人。
つまり、これまでの事は夢で───
「っ!?わ、私の!私の赤ちゃんは…!?」
慌てて自身の痛む腹を見る。
そこには確かに臍がせり出し、肉割れと浮いた血管だらけのボテ腹があった。
良かった…私の赤ちゃんは、夢じゃない。…夢じゃ…ない…?
「あ、れ…?な、んで…?」
夢の中では娼婦の私。その私はお客様に孕ませて頂き、赤ちゃんを授かった。
でもそれは夢。目醒めれば全て淡く消えるはずの、夢。
だけど今、私のボテ腹は痛み、大切な赤ちゃんを産もうとしている。
赤ちゃんは大切で、でも私は本来娼婦なんかじゃなくて。
これは夢で起きたら全部元通りなはずで、でも赤ちゃんは失いたくなくて。
もうワケがわからなかった。
「まずは呼吸を整えようか。ヒッヒッ、フー。ヒッヒッ、フー。」
「ラマーズ法ってまだ現役だっけ?」
「さあ?」
出産を促す声に陣痛で朦朧としながらも従い、出産に臨む。
理屈はわからない。だけど、私の大切な赤ちゃんをちゃんと産んであげなきゃ。
それだけは変わらない真理だ。
彼女らは興味が無いのか、かなり適当な様子だった。
この子の為に、私がしっかりしなきゃ…!
「ヒッヒッ、フー…!ヒッヒッ、フー、ヒッヒッ、フー…」
「はい、じゃあ息んでー。」
「ふぅい”っ…!う”う”う”う”ぅぅぅぅ…!!」
こうして何度も呼吸を整え、息み、また整え、息みを繰り返す。
陣痛と出血で脂汗をダラダラと流しながら何度も、何度も、何度も。
周りの人達があくびをし始めた頃、漸くその瞬間は来た。
「ぎひぃぃぃぃ…!!ゔぅぅぅん…ふん、ぎぃぃぃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ふぁ…ん?おー、やっと出たー。」
「フギャアアアァァァァァァ!!!」
遂に私は、赤ちゃんを産み落とした。
室内に木霊する大きな泣き声。
良かった…無事に…産まれてくれた…!
「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!産ま…ぇひゃぁ…!」
「わらひの…わらひの、赤ひゃん…!」
私は気づけば、呂律もロクに回らない程に消耗していた。
そんな状態でヨロヨロと上体を起こし、赤ちゃんに手を伸ばす。
私のおマンコから伸びた臍の緒が繋がっている。
ああ、間違いなく、私の子だ。
だが───
「んじゃ次、行こっかぁ。」
「あぁっ!?」
赤ちゃんは店員の人に抱き抱えられ、離されてしまった。
臍の緒は雑にハサミで切られ、スタスタとそのまま奥の部屋へと消えていく。
「待っへぇ!!連れてかないれぇ!!!」
「わらひの、わらひのぉっ!!!」
「おぉう、マジか。ガッツリ母性愛に目覚めてらっしゃる。想定外だな…」
ジタバタと弱々しく藻掻く私は、肩を掴まれアッサリと背もたれに倒される。
「うっさいからサッサと寝かせといて。」
「あいよ。」
「あぁっ!?やらぁっ!!寝るのやらぁ!!」
寝てしまえば、次に目覚めるのはいつになるかわからない。
それまであの子に会えないなんて、考えたくもなかった。
だが、そんな私の気持ちなど汲まれるはずも無く、首筋には電極パッドが貼り付けられる。
「ぴぎうっ!?」
バチバチと紫電が迸り、私の脳が焼かれる。
気づけば視界は暗転し、また眠りにつき始めていた。
まだ産んだ我が子を、一度も抱いていないのに。
「や……ぁ………」
どれだけ意識を強く保とうとしても、全く抗う事が出来ない。
そうして真っ暗闇に落ちた意識は、その瞼を開く。
そこには───
「…う、うあ、あ”あ”あ”あああぁぁぁ…!!」
いつもと変わらない、娼婦である私の部屋があった。
─────────────────
「ふぅー…ふぅー…」
あれからまた、月日が流れた。
経過した時間などすっかり忘れ、娼婦の仕事には慣れきった。
今となっては長らく握っていない銃より、おチンポ様を握る方が手に馴染む。
出産を経た事で更に大きく育ったおっぱいとケツの扱いにも長けてきた。
やろうと思えばどちらかを揉むだけで簡単にイク事ができるし、母乳ズリもお手の物だ。
…そういえば昔は修行部の部長をやっていた。
だけど、最早何をしていたかは意識しないと思い出せなかった。
馴染みが無くなったと言っても過言ではないだろう。
しかし、それも今はどうでもいい。
「う…ふうぅ……」
眼下のパツパツに張ったボテ腹。
私の胎に宿る三人目が早く出せと暴れている。
一人目と二人目の時を思えば、間もなくだろう。
そう思っているとパン、という音と共に破水と陣痛が始まった。
深呼吸をしながら私は瞳を閉じて再度ゆっくりと開く。
「起きたよ~。」
そこにはあの無機質な部屋と、私から赤ちゃんを取り上げた人達がいた。
何人かはメンツが入れ替わっているが、見た顔ばかりだ。
私の読みは見事なまでに当たっていたのだ。
「じゃあ3人目、しっかりひり出そうか?」
そう言う店員の人に、私は───
「ぐすっ…ゔぅ…返して…返してよぉ…!」
「私の…私の赤ちゃん…」
泣きながら懇願した。
会えない我が子の事を思わぬ日は無く、涙は気づけば流れていた。
二人目もあっさりと連れていかれ、未だに抱けず終い。
娼婦として肉欲に溺れ切っている時以外はあの小さな血を分けた命が、恋しくて堪らなかった。
だがどうせ、前回同様にこの言葉も聞き入れられないのだろう。
そう、思っていた。
「はいはい。三人目ちゃんと産んだら会わしたげるからぁ。」
「っ!?ほ、本当…!?」
「ほんとほんとー。」
返ってきたのは予想だにしていなかった回答。
会える。遂に我が子に久しぶりに会える。この胸に抱ける。母乳を飲ませてあげられる。
そうとわかれば私の行動は早かった。
「ふっ…う”う”う”う”ぅぅぅぅ…!!」
「お、良い調子~♪」
気張る。必死に気張る。
三人目も大事な我が子に変わりはない。
だが、早く会いたい。先に産んだあの子達をこの手に抱きたい。
どうせ生まれてくるのだ。
私が急いで産むくらいのことなら、出たがってたこの子は赦してくれるだろう。
するとズル、ズル、と三人目がおマンコを擦りながら下りてくる。
二人目の時にはかなり楽になっていた出産は、更に楽になっていた。
「ア”アァ、フギャア!フギャア!」
そして、本当にあっさりと、産まれてくれた。
「骨盤開きっぱなしな分、母体に負荷が少ないのはかなりメリットだね。今後に活かせそうだ。」
「フー…フー…フー…!」
「さっき言った…通り…私、の…赤ちゃん…!」
「ん?ああ、はいはい。」
産んだばかりの子を抱き上げている人は面倒そうに返事をすると、私に腕の中の子を渡してくる。
羊水にまみれながら大きな声を上げて泣く、私の赤ちゃん。
ボテ腹越しに見えていたヘイローはそこにあり、私のおマンコから伸びる臍の緒は確かにこの子に繋がっている。
ああ、私の子だ。愛しい我が子だ。
抱き上げたのは三人目が初めてという矛盾を孕んではいるものの、遂に私は母らしいことをしてあげられたのだ。
「こっちが一人目、こっちが二人目。」
押されて来たカートの上には、スゥスゥと眠る産んだ私の子ども達がいた。
その頭を優しく撫でながら、私は感傷に浸った。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「さて、これからの話ですが…」
我が子の温もりを静かに感じていると、一人が話し始める。
私は水を差された事に思わず苛立つ。
…いや、この子達に会えなかったのはこの人達のせいではないか。
気づけば怒りは表情を険しいものに変えていた。
「……何。」
「おお、怖い怖い。母は強しと言った所ですかね?」
「ですが、私達の話はしっかり聞いておいた方が良いですよ?貴女とその子達の将来に関わりますから。」
そうして語り始められた内容は、私を取り巻く客観的な状況。
まず、私がこの店に来た日…あの日から、今日で7日しか経っていないこと。
これは以前からされていたことなので、そこまで衝撃は大きくない。
だがそれでも、”これまで娼婦として生きてきた”という確かな実感があるのに、それを否定されるのはとても奇妙な感覚だった。
何しろ、”自分の娼婦以外の姿が一切思いつかなかった”のだから。
「…案外反応薄いね?じゃあ次に…」
次いで語られたのは、三度の出産は現実であること。
これには非常に安堵した。
この腕の中の愛しい我が子が夢だったとして霧散などすれば、間違いなく発狂する自信があったからだ。
言葉は私の子宮の負荷がどうだ、あと産めても二人だとかと続いているがどうでもいい。
おマンコが使えて膣肉に締め付けがあるならおチンポ様を扱ける。
後はこの子達が元気に育っていってくれれば、それで良かった。
「何か話し甲斐無いなぁ…まあでも、これが一番重要だからよく聞いてね?」
「その子達、普通に育てたら成人するまでにヘイロー壊れるよ。」
「ッ!?!?!?」
故に、最後のそれは聞き捨てならなかった。
「どういう事ッ!?私の、私の子が…!?!?」
「そ、死ぬ。…そのままならね。」
スッパリ言い切られる絶望の言葉。だがそれには含みがあった。
故に言葉は続く。
「この子達、本来は10カ月掛けて母胎から出る所を、僅か2日で来てるの。」
「自然の摂理に唾吐く様な生まれだから、当然その反動も凄まじいものになる。」
「貴女の子宮に極力負荷を掛けて赤子にはいかない様にしてたけど、適切な処置をしないとあっという間に生命力を使い果たしちゃうんだよねぇ。」
「それは貴女達が…!」
「うーん、まあそうなんだけどねぇ?そうなったものは仕方ないよね。」
出てきたのはあまりにも勝手な話だった。
怒りと悲しみが綯交ぜになり食ってかかるが、彼女らはどこ吹く風といった様子だ。
「まあでも、私達も鬼じゃあない。貴女が起きるまでの間は無償でちゃんと処置しておいたよ。」
「だから問題は、今後の話。これからどうするか、貴女に選んでもらうことになる。」
そして言い渡されたのは2つの選択肢。
1つは”この子達をこのまま引き取る”というもの。
私はここに来る前の、百鬼夜行連合学院、修行部部長の春日ツバキに戻る。
娼婦ではなく、1人の生徒として。3人の母であることは変わらない。
ただし、3人は若くして死ぬ。
処置をするにしても当然無償では出来ず、この人達にしかそのノウハウも無い。
そしてもう一つが───
「こ、これって…!?」
「2週間あげるからよく考えて。答えが出たら、またここに来て。」
「誰かにここの事や、自分の状況を口外したらこの話は無し。」
「ああ、この子達への処置は継続して行っておくから安心してね。」
渡された紙。紙はしっかりとしたもので、文字がびっしりと並んでいる。
それは間違いなく、契約書だった。
分厚い約款は後回しにして内容を軽く確認するとわかったが、これを締結すれば私の子ども達は間違いなく助かる。
助かるのだが…とても即断できるものではなかった。
そうして私は追い出される様に百鬼夜行へ帰らされた。
今回は記憶に蓋をされず、ギッチリ詰まったザーメン味のパックの箱を抱えて。