夢叶えば

夢叶えば

アル巫女ちゃん


「ママ、私ちょっと星を見に庭に出るね!」

そう言うと空色髪の少女はサンダルを履き星座早見盤を持って玄関を出る。

そのまま庭先に向かおうとする少女の視界の隅に見慣れないものが映った。

門の前に一人の少年が街頭に照らされながらぽつんと佇んでいた。

自分がTシャツに半ズボンとサンダルとラフな格好に対して少年は長期の旅路を想定した軽装かつ露出の少ない服装、背中には大きなリュックと寝袋を背負い、キャスケットからは綺麗な金髪を垂らしている。

長く旅をしていたように見えるが、彼からパートナーであるポケモンと旅したような気配が感じられない。

そしてなにより、どこか知人の女性と似たような面持ちを持ちながら自分と同じ空色の瞳を持っていることが少女を強く惹きつけた。

少女は親切心と好奇心から門を挟んで少年に声をかける。


「こんばんは、今夜は星が見えるいい夜ですね」


「ええ、そうですね」


少年は少女の顔を苦笑いともと泣き顔ともとれる顔でじっと見る。


「アナタには夢がありますか?」


「え?」


「夢…とまでいかなくてもやりたいことや目標はありますか?」


いきなりの質問に少女は少したじろいだ、だが素直な性格が少女に返事をさせた。


「夢、かぁ…うーん、私まだ10歳だし見つけてないなぁ…」

「あ、でも来年トレーナーの旅に出るからポケモンとジム巡りとかしたいかも」


あ!それから…と少女は次々と未来の予定を語る。

少年はそれを全て聞くと真剣な顔になった。


「沢山のやりたいことがあるんだね、うん…やっぱりここに来てよかった」

「アナタはどうかその気持ちを忘れないで生きていてほしい」


季節外れの突風が少年と少女を襲う。

少女は思わず目をつむり風をやり過ごし、再び目をあけた時には少年はいなくなっていた。



「さようなら、母さん」

「どうか、夢を叶えて幸せになって」





補足みたいなもの

娘ちゃんヒスイ入りを阻止した話。

本来娘ちゃんがヒスイ入りするところを未来の息子のカラシナくんが変わりにヒスイ地方に行くことでアル巫女ちゃん化になる√を潰した。

母である娘ちゃんの本来の姿を見て、年相応のやりたいことを知って、やっぱりこの人をただの人間のままにしたいと自分が消える覚悟を決めた。

この後、カラシナ君は無茶をしながら慣れないポケモンバトルを通してアルセウスにポケモンと人間の血に頼らない真に通い合った姿を示しながら、自分が消滅する冒険に身を投じる事になる。

それらを阻止しに来た実母に息子だと悟られないように欺きながら。


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