延命処置

延命処置


重苦しい暗さの船内、その中にすら立ち込める埃っぽい嫌な空気。

なにも切り裂く事無く突っ立っていると、この空気も闇も、何もかもが不快で腹立たしくて堪らないが、オレはゆらりとそのままいつもの部屋へと向かう。


アイツが眠っているうちに、オレは倉庫の戸を開けると、適当な干し肉とパン、それと水を取り出し、ただ作業のように口に運ぶ。

オレだってこの身は人間、食の好き嫌いくらいはあるものだが、こうしてアイツの代わりに食う飯程、美味くも不味くも無いものはない。

もはや味も感じない。これはただの"延命処置"でしかない


「………」


近頃のアイツは、時折こうして何日も飯を口に入れなくなる時がある。

まるで自分には他者の命を糧にする資格など無いと言うように、あの気持ち悪い虚ろな目で、不揃いに切られた髪で、葬式みたいな黒い服で、何も食わずに緩やかに死のうとする。


「……………チッ」


つくづく馬鹿なヤツだ。

オレはまだ死ぬ気は無い、だからこうして無理に出てきて、アイツを延命し続けている。

眠りたいなら眠ればいい。ただ、あの日、散々人を酷使しておきながらそう易々と死ねると思うなよ。

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