夢の虹色
────夜、あれから少し経ってから気がついて今日の出来事が夢でなかったとわかる。いやただ幸せすぎる現実が飲み込めなくて現実逃避しちゃっただけなんだけど…
ただ…抱きしめられてああ言われて凄く嬉しかった、それこそ気絶するぐらいは…でも、私自身どうしても気になることがある。だから…それを確かめるために
「ふわァ〜…ムニャ…マリアンヌ?こんな夜中に呼び出してどうしたんだ?」
「こんな遅くにごめんねルフィ。ちょっと気になることがあって…カラーズトラップ『夢の虹色』」
こんな時間に呼び出してこんなことをするなんて…正直、今の私はとんでもなく面倒くさい女だと思う。けれど…大好きな人に好かれたい、大好きな人の好みの姿になりたい、大好きな人の好みの姿を知りたい、そう思うのは仕方のないことだと思う。
────今私に掛けた夢の虹色は調整して短時間の間私を『私の思い描く理想の姿に変える』ようにしたもの、もしも私がこんなちんちくりんではなくて女性的に成長できていたら、そんな儚い願いを込めた姿に…
「…よし、どう?ルフィ?」
「え!?いや…ど、どうって言われても…」
いきなりカラーズトラップを使ったかと思えば急に大きくなった私の姿に戸惑っているようだ。だけど…そんな戸惑いもすぐに消えると思う。
「私さ、思ったんだ。いつもの貧相な姿よりルフィもこんな感じで豊満な姿のほうが好みなんじゃないかなって」
「は!?お前何言って…」
───あとから思えばこのときの私はひどく焦っていたんだと思う。ルフィの女ヶ島での話、二年前よりもグラマーになってたナミとロビン、そして人魚のお姫様とルフィの周りに魅力的な女性ばかり
そしてその人たちと比べて二年前と対して変わらない貧相な体付きの私と、勝手に比べて勝手に焦ってコンプレックスを拗らせて…我ながら本当に面倒くさい女だった…
「ルフィ、この姿なら私のことを受け入れてくれる?この姿なら…」
「やめろ!!!」
ルフィの怒号が響く、そしてどこか、悲しそうな顔をしている…どうして?
「そんな辛そうな顔してる姿のお前なんて受け入れられるわけ無いだろ!?」
辛そうな顔?私が?そんなはずはない、だってこの姿なら、貧相な姿じゃないこの姿なら…ルフィだって受け入れてくれるはず…
「あ〜もう!おれはよ!いつものお前の姿が好きなんだよ!」
「ヘェ!?」
我ながら色気もなにもない素っ頓狂な声が出たものだとも思う。けれど今までルフィがこんな直接好きだなんて言ってくることなんて無かったのだもの、こんな声だって出るだろう。
「聞こえてないならもう一度言ってやるぞ!おれはいつもの「聞こえてる!聞こえてるって!」
もう一度大声で伝えてきそうなルフィを慌てて遮る、あんな言葉そう何度も聞いたら心臓がおかしくなりそうだ、それくらいドキドキしている。ルフィが好きだと言ってくれたこと…それに…
「あっ…」
そんなとき、カラーズトラップの効果が切れ元の姿に戻ってしまう。
「…何があったかわからねェけど、あんな無理してる姿よりもお前はその姿のままでいいと思うぞ?」
「本当に?私、ナミやロビンみたいに豊満じゃないよ…?」
「そういうのはよくわかんねェけど…とにかくマリアンヌはそのままの姿一番だと思うぞ!」
そういってくれるルフィが堪らなく愛おしくて自然と抱きついてしまう、そんな私をルフィは拒まず優しく抱き返してくれた。
「…ルフィ、落ち着くまでこうしてて良い?」
「ん、いいぞ!」
これからは少しは自分のこの貧相な体型に自身が持てそうだった、だって…大好きな人がこの姿を好きだと言ってくれたんだもの…
──────こうして魚人島での夜が更けていく…
翌朝、二人揃って甲板で爆睡してたところをサンジさんに発見され様々な誤解を受けたが今回はそういうことはしていない。今回は…