夢のような夜に踊り溺れて
色のないこの街はあたしにお似合いだ。音色の絶えた灰色の世界は静かに暗闇に沈んでいる。耳を澄ます。何も聴こえない。交差点に響く彼女らの歌声も、ライブに沸く彼らの声援も。夢を奪った、想いを消した、仲間を墜とした。達成感はある訳もない。とっくの昔に壊れた機械に感傷なんて不要だから。ただ咎人の末路が決まっただけ。仮に世界に色彩が戻ろうとも、エンドロールからあたしの名前は抹消される。
目を瞑り、息を整え、夜の虚空に向けて歌を手向ける。
声は出ない。
あたしは噎び泣いた。白紙の絵は決して完成しないから。
あたしは噎び泣いた。もう2度と夜空に星は輝かないから。
あたしは噎び泣いた。一番見て欲しい人は遠くに行ったから。
消えない記憶に突き動かされるまま、また少女は夜の世界に落ちて行く。
走馬灯のように脳裏を巡る思い出がずっとあたしを縛ってくれると信じて。
今回のイメージソング
花に風 / バルーン