夜叉羅刹  

夜叉羅刹  


※ちょっと何かしら設定が違うかもしれない。           ※あまり字慣れしてないので文法がおかしいかもしれない      ※言葉遣いが悪い!   

それでも大丈夫!って言う人はどうぞ!              







それは、突然のことだった。    


何時ものように、物資の補給のために立ち寄った島の港で起きた事件。               おれの隣で仲間たちに指示を出し終わったこの世界のおれと、おにぎりと、麦わら屋の一味も一緒に町へ繰り出そうとしたとき。          

ばたっと、そんな音がした。    当たり前のように、全員が音源の方に視線を向ける。


「……はっ?」

「トラ男ォ!!??」


倒れた本人は意味がわからない、と言った様子。全員がこの世界のおれに駆け寄り、しゃがんでどうしたのか、と問いかける。     そして、この世界のおれは起き上がろうとするが、起き上がる前にまた仰向けに倒れてしまう。

取り敢えず船内に連れ戻し、原因を総出で探した。すると、原因はおれにあった。

「多分…悪夢障害だと思うんだ」

トニー屋はおずおずと、未だ眠っているこの世界のおれを見ながらそう言った。

「確か…トラ男たちは夢で記憶を共有するんだよな?多分トラ男はトラ男2号の記憶を毎日見てるから凄い消耗しちまってるんじゃないかと思うんだ。

…あっ別にトラ男2号が悪いわけじゃないぞ!」

 

トニー屋は気を使ってくれて、シャチやペンギンも『逆にあのキャプテンが夢見ただけで倒れちゃうようなことをよく耐えてこの世界に来てくれましたね……!!!』なんて、わんわんと泣きながら慰めてくれた。

……だが。

これはおれが弱かったから、勝てなかったからそうなってしまったことで、その記憶でこの世界のおれが疲弊してしまったのなら、それはおれの所為なんだ。

そんなことでこんこんと誤り続けていると、ある提案が挙げられた。

「それなら、トラ男2号がトラ男の看病してあげたらどうだ?」

「えっ?」

「やっぱり物資の補給とかもいかないとだめだし、トラ男もトラ男2号の看病をいっぱいしてくれてたんだろ?それにトラ男2号も医者だし、たまにはそう言うのも良いんじゃないかな」

「たし…かに。でも…おにぎりの散歩とかが…」

陸に上がれると聞いて散歩が出来るとはしゃいでいたおにぎりを思い出す。だが、その心配は無用だったようで。

「おにぎりなら、俺達と散歩しよう!おにぎりは人懐っこいから大丈夫だ!たまには自分同士でゆっくり語り合うのもいいんじゃないか?」

「うん…そうだな!それじゃあ色々悪いけど…よろしくな」

「おう!トラ男もトラ男2号も元気だせよー!」

じゃあなー!と、陽気なトナカイが部屋を出る。この島は物資が豊富で、海軍の基地も近くに無いため船を岩陰に隠し全員で行くらしかった。なのでこの付近には俺達しかいない。確かに最近おれと二人きりで話すことは少なかったかもしれない。すーすーと、静かな寝息をたて眠っているおれを横目に、おれに出来ることを考える。 おれがしてもらったとき嬉しかったこととか…か?世界は違えどおれと同じなら恐らく同じ考えな筈だ。思えばこちらの世界にやってきてからは楽しいことばかりだった。こんなことをしたら嬉しいかな、あれはまた皆でやりたいな…  

楽しい思い出に浸っていれば、あっという間に時間が過ぎてゆく。

部屋には時計の針の音だけが響いている。そんな中、


――――――一人の来客が来た。

 

喉の奥が引き攣る。肺に空気が入らなくなる。

この気配は。

この悪寒は。

あいつの監禁生活の所為で、おれは全てが弱くなったわけじゃない。

鋭くなったものもある。 

それは、"見聞色の覇気"。

きっとあいつから逃げようと、隠れようとして気配を探るのも消すのも上手くなった。

……もしかしたら、この世界のおれに唯一勝っていることかもしれない。

毎日だ。毎日毎日、あいつの気配を、気分を読むのに必死だった。

それと共に、不定期に行われたあの悪趣味なかくれんぼやおにごっこ。               …どうせ逃げ切れないとわかっていても、必死で身を隠そうと気配を消した日々。

そんな忌々しい術が、今おれの中でこれでもかと警告音を鳴らしている。

あいつがいる気配がする。

とにかく、必死に外へ出た。    

この船が壊されるかもしれないから。

そして、案の定そこに奴はいた。

「ようロー。久しいなあ?」


……だめだ。体の力が抜けてしまう。

足に力が入らない。

呼吸が乱れる。

段々と目眩がしてきて、吐き気までしてきた。


……そして。

(……あ…)

朧気な視界の中、忌々しい糸が、此方へ飛んでくる。

諦めかけた瞬間に、けたたましい金属音が鳴り響いた。

「チィッ。この世界のローか。確か俺を倒したんだっけなあ?流石にちったあ強くはなってるか。」

「ハッ!おれとしちゃあ二度と会いたく無かったがな。なんだ?わざわざおれに首とられに来たか?」

朧気だった視界の中、いきなり眠っていた筈だった声が聞こえて、視界が明快になる。

「な…なんで…お前は寝て…!」

「あ?ああ確かに寝てたがそこの悪魔野郎の気持ち悪い気配に叩き起こされたもんで」

言葉が詰まる。さっきまで、おれの所為で寝込んでいたというのにもう起き上がって戦闘なんてしてしまって大丈夫なのだろうか。

「フッフッフ!なあロー。随分疲れているようだが大丈夫かぁ?よく眠れていないのか?」

「ああ?疲れてようが疲れてまいがお前みてぇなストーカー野郎なんざ片手で捻り潰してやるから安心しやがれ鳥頭」

「そうかそうか…ならかかってこいよロー。出来るならな!」

その瞬間火蓋が切って落とされた。

まずは両者共に本気は出さないようで、相手の出方を伺っている。ドフラミンゴは大量の糸で多方面から仕掛け、ローはそれを全て弾いてゆく。          ただ、やはり不調ではあるようで、少しふらついている。

その隙をドフラミンゴは狙おうとするが、それはローも分かっているため、何とか防御は出来る。   一向に戦況は傾かない。そこで、恐らく体調不良を考えると長くは持たないであろうローが一気に間合いを詰める。

だが、そんなローにドフラミンゴは嗤いながら言った。

「なあロー。おれが、この島にいるやつ全員が人質だと言ったらどうする?」

ローの足が止まる。        

「…どういう、ことだ?」

「そのままの意味さ。おれはこのイトイトの能力で、建物や地面だけじゃなく人も糸に変えられるようになった。」

「つまり、だ。おれはお前より二年先にいる。その間おれは能力を鍛え上げた。だからここにいるやつら全員島ごと糸に変えられんのさ」

「……ッッ…!!」

一瞬。一瞬だけローの中で逡巡が生まれてしまう。         気迷いが、脳裏を駆け巡る。    

その一瞬ですら、ドフラミンゴは見逃さない。           隙を見せたローは腹部に武装色を纏った膝蹴りをもろに喰らってしまう。

「う…ぐっ…!!」

「ROOM…シャンブルズ!!」

一度シャンブルズで退き、体制を立て直す。だが、そんなとき。

ひとつの名案を思いついた。

「おい…ドフラミンゴ!どうせ狙いはこいつとおれだろう?だがな、こいつはまだ重症だ!またその環境下に置くと今度は死ぬ可能性がある!だから…      だから、連れてくならおれだけにしろ!代わりにここの島に居るやつらには一切手を出すな!」

「えっ…えっ!?」

「フッフッフ…ああそりゃあいい。おれはここに居るやつらには一切手を出さねえ。交渉成立だな」

「そっ…そんな」

無茶な!という言葉は続かない。何故ならローに口を抑えられてしまったからだ。そこで訳が解らず硬直していると、帽子と鬼哭を渡され、小さな声で囁やかれた。

「これはお前に預ける。破壊されたら溜まったもんじゃねえからな…。それと、麦わら屋に伝言だ。            ――――おれの仲間を頼んだ。」


そう言って、講義する間もなく立ち上がりドフラミンゴの元へと歩いてゆく。その後ろ姿は勇敢で。自分とは程遠く、形容し難い感情がそこにはあった。



****

物資補給班〜ルフィ〜

遥か彼方、ルフィは自分の船を停めたであろう方角を見る。

小首を傾げ気配を探った。

………そして、突然走り出した。

「なんじゃどうしたんじゃルフィ?」

「おおいルフィそっちは来た方向だ!」

「どうしたの麦わらいきなり走り出して」

「お前ら!急いで船に戻るぞ!全力だ!トラ男たちは二人きりか!?」

「えっ…確かに二人のトラ男たちだけだけど」

「多分…あいつらのところに違う世界のミンゴが来てる!!!」

 「「「「「!!!!??」」」」」




****

物資補給班〜おにぎり〜

ルフィが異変に気づき一歩踏み出した頃。散歩をしていた女性クルー(チョッパーやサンジ含む)と共にいたおにぎりが、いきなり大きな声で吠えながら船の方角へと走り出した。

「わっどうしたのおにぎり」

「そっちは来た道だよー」

「凄い必死…何かを伝えているようね…チョッパー、分かる?」

「…えッ!?ごすずんが危ないって!?」 

 「「「「!!!?」」」」


いち早く気づいた一人と一匹によって、別行動の二人の班は同時に走り出す。途中で逸れていた者達も合流し、全力で全員が船を隠した岩陰へとひた走る。ただ、この島はこれでもかと言うほど広く、ルフィ達を以てしても辿り着くのに時間を要した。

……そして、そこに漸く辿り着き、ルフィが放った拳がドフラミンゴに当たりそうになった瞬間。

ローをこれでもかと縛り上げている糸から滴る血がルフィの拳に付着して。

「ミンゴォォォォッッ!!!!」

ヘルメスで、二人は違う世界へと消えてしまった。


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