夜が明けて

夜が明けて


神永side in

ジークフリートによる大妖蛇退治の後、ボロボロのアーチャーを連れたフィリアさんが校舎から戻ってきた。

「とんでもない魔力を感じたと思ったらまさかアンタが来ていたとはな、トーマス・ディオクレア」

知り合いなのだろうか、悪態をついていた

「随分と手厳しい、同じ時計塔から派遣されたマスターだろうに」

やれやれといったふうなトーマスさん、時計塔から派遣されてきた…?

(多分このふたりは時計塔から聖杯の回収のために来たのよ、傭兵は金で、いけ好かない方は降霊科辺りから依頼されたんでしょうね)

美作はコソコソとそんなふうに耳打ちしてきた、しかしこの状況はどうしたものか

手負いのアーチャーを除けば多少疲弊しているライダーとバーサーカー、消耗を殆ど感じられないセイバー。

ここでもう一回戦始まっても可笑しくは無い。

「よし、目的は果たした戻るぞセイバー」

トーマスはそう言って校庭から離れていった。彼が俺たちを、セイバーがサーヴァント達を相手にすれば勝てるはずだが

「この程度のサーヴァントであればセイバー一人で十分だ、このままでは人が集まってきてしまうのでな先に帰らせてもらう」

そう言って踵を返して行く、それを聞いたライダーは自分たちを侮辱されたと感じたのか、或いは背を向けたことを好機と見たのか太刀を抜きセイバーのマスターへと切りかかる。

だが間にセイバーが入りその太刀を片腕だけで受け止めた。そう、ライダーの太刀を手でつかみ取ったのであればまだわかる、真剣白刃取りのようだと。だがセイバーが行ったのは腕で刃を受け止めたのだ、そして一滴も血が落ちてこない。

「退け、ライダー。今ここで刃を交わすのは本意では無い」

その光景を見たバーサーカーがライダーのことを抑えながら回収していた

「ふむ、自身のサーヴァントの手綱をしっかり握って起きたまえ、でなければ私との勝負の土台にも立てないぞ」

そう言って校門を潜り視界から消えていった。

ライダーの手綱を握る…か。真名すら教えて貰えないマスターが何をできるのだろうか…。

───

結局、あの後は全員戦う気力もなくフィリアたちは

「アサシンのマスターを回収する」

と言って何処かへと消えてしまった、美作はフィリアの標的がこの聖杯戦争に参加していた為時計塔を経由して参加したのではないかと予想していたが実際そうなのかは分からない。

ボロボロになった学校に関しては監督役であるアイン神父が諸々の手を回してくれたらしく朝のニュースでは学校でガス爆発が起こったというニュースになっていた。

しかし、直近の脅威であったアサシンを倒したことでようやく家の中なら安心することができるようになった。

おかげで昼近くまでライダーと共にぐっすり眠っていたほどだ。

起きたのは11時過ぎで居間では美作が煎餅を加えながらテレビを見ていた。

「あ、おふぁよう。ふぁみながくん」

「おはようじゃねぇ、いつの間に上がって煎餅食ってやがる」

「30分くらい前かしら、ぐっすり寝てたんだもの起こすのも忍びなくてね」

「そうか、で何の用だ?今後の方針決めか?」

煎餅をバリバリと噛み砕きお茶を啜って

「その通りよ、目下の目標だったアサシンは昨晩倒したでしょ?…いえ、倒してもらったの方が正しいかしら」

そう言ってセイバーの宝具のことを思い出す。

あの黄昏の剣は強力な宝具だ。しかも真名解放にかかる時間も少なかった。

「次はどうするんだ?セイバーかランサー辺りを狙うのか」

それを聞いた美作は呆れたようにため息を吐いた

「あのねぇ、それよりも確実に仕留めることの出来るサーヴァントがいるでしょ?」

「…アーチャーか、だが今どこにいるかは分からないぞ?」

「そうね、ただ少なくとも戦闘になった際にこちらの被害は確実に少なくなるわ」

美作の言うことも一理ある、だがそれ以上にあの俺たちと共に分の悪い賭けに乗り片腕を犠牲にしてしまったアーチャーに引け目を感じている

「…いや、ここはセイバーを狙おう」

「正気?聞いたでしょ、彼の真名」

「ああ、でもいつか倒さないと行けない相手なのは確実だ。この聖杯戦争において最強のサーヴァントは誰かと聞かれたらあのセイバーだ」

「聞き捨てならねぇな。オレより強いって言うのか?」

「少なくともまともに攻撃が通らん、昨晩見ただろ?ライダーの太刀が通らず傷も負わなかったあの鋼の肉体を」

それを聞いたバーサーカーは押し黙る。そう、あの宝具も脅威だがそれ以上にジークフリートのあの肉体。そこが厄介なのだ。かの英雄は邪竜ファヴニールを倒した際に全身に血を浴び、浴びた部分は無敵となったという。

「でも狙い目はある」

「背中にある菩薩樹の葉で血が遮られた部分ね?」

「そうだ、俺達には数の利があるそして」

ちらりと後ろを見て未だに寝コケているライダーを見る

「俺のライダーはこの聖杯戦争において最速だ」

ならば狙う隙もあろう。それを聞いた美作は笑みを浮かべながら

「わかったわ、なら目標はセイバー。あのいけ好かないマスター共々敗退させてやりましょう!」

次の目標が決まった、相手はセイバー及びそのマスタートーマス・ディオクレア。この聖杯戦争において最強の陣営、勝つためには様々な策を用意しなければ…。

神永 side out

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