夕食時

夕食時


 チュウゥ

 いきなりのなさけない音、否、不意打ち行為に、持っていたフォークをパンケーキごと落とした。許すまじ。

「ちょ!な、なに何!」

 隣で笑顔で骨付き肉にかぶりつく幼馴染、ルフィに食って掛かった。

 こいつ、徐に、私のほっぺに、吸いついたのだ!

 鋭い剣幕で迫ったはずが、こいつは顔色一つ変えずあっけらかんと、

「クリーム付いてた!」なんて、ほっぺに指をあてながら答えた。

 ホイップクリームと肉って合うな!なんて、なおも食べ続ける。

 あまりの無神経さに面食らっていた私だが、乙女の頬にキ、キスしておいて、

肉に現を抜かすこいつに、気恥ずかしさもあってフツフツと怒りが込み上げてきた。

「もおおおおおお!!口で言ってよぉぉ!!」

ありったけの力を込めて、ぽこぽこ叩く!

ウタワールドでならボコボコにするところだが、食卓を囲むクルーの皆を巻き込んでしまうため、歌うことはできない。

私は力の限りポコポコ叩くが、ルフィは意に介していない。

「効かねェぞ、ゴムだから」分かってるよ!!

周りの皆もニヤニヤして見てくるから恥ずかしくて仕方ない。

居た堪れなくなった私は大声で叫んで食堂を飛び出した!

「ルフィなんて、だいっきらい!!!」


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しばらく後、船首

「なァ、ウタ~~機嫌なおしてくれよォ」

「・・・」

「つい舐めちまって、揶揄うつもりはなかったんだよ・・・」

追いかけてきたルフィは、かれこれ数十分私を後ろからハグしつつ、機嫌を直そうと、

巻き付いたり頭をすりつけたり、甘えてくる。

「・・・」

私は言葉を返さない。なぜなら...

(あぁ~~、甘えんぼルフィ可愛すぎるよぉ!ハグしてくれるの嬉しいぃ、返事したら声でへにゃってるのバレちゃう...)

さっきまでの怒りはどこへやら、骨抜きなのである。私こんなにチョロい女だっただろうか

とはいえ、返事しないわけにもいかない。何か条件を付けて許す体を...なんて考えていると

すりすりすりすり...

ルフィが頬ずりしてきた

「ル、ルフィ?な、何してるのかな?」

「ん」

あとから聞いたところでは、ガルチューというミンク族の挨拶らしい。

「そんなに嫌がるとは思ってなかった。もう、しないからよ、許してくれよ。」

ルフィの謝罪を聞きつつ、私は自分の大人げなさを痛感した。

深く気にしてなかったが、今いる船首の上も本来ルフィの特等席なのを、譲ってくれているのだ。

私は落ちないように気を付けつつ、ルフィに向き合う。

「ごめんね、そんなに嫌だったわけじゃないの。皆の前だったから、恥ずかしくて」

「私の方こそ、ごめんなさい。大人げなかったね。」

もう怒っていないこと、そして、大好きであることを伝える。

「おれもウタが大好きだ!」

さっきまでの落ち込んだ顔はどこへ、いつもの太陽のような笑顔が月明かりに照らされている。

そんな彼に愛しさを感じつつ、彼の頬に手を当てて、

「恥ずかしいから、人前ではキスは我慢してね」

(もうお姉さんぶれる立場じゃないけれど、精一杯強がってみせる)

先ほどの頬へのキスのお返しとしてルフィの唇に私の方からキスをする。

チュウ。

FIN


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