士道3

士道3

1、2とほとんど繋がりはありません。番外編的な。

人々、いや、バケモンどもの視線がこっちに集中しているのが分かる。

士道はクソ、と口の中で呟き、歯で食いしばれない代わりに口に嵌ったギャグボールを噛んだ。その隙間から、唾液が垂れて、地面に落ちる。

曲がろう、とでも言うように士道の首輪に繋がったリードがくいと引っ張られた。忌々しく奴を上目に睨みつけてやるが、唯一人間と同じところにある口を弧の形に歪ませたまま動じない。むしろ、その反応を待っていたようにも見えた。

士道はその顔に唾でも吐きかけてやりたい気分になりながら、それでも素直に手__いや、前足を踏み出した。何の保護も着いていない手のひらと足の裏は、アスファルトですっかり擦り切れている。

__本当にクソだ。



数十分前、この"主人"が外からどこかわくわくと気を跳ねさせながら帰ってきたと思ったら、唐突にリード付きの首輪を嵌めてきた。何が何だか分からないまま士道が突っ立っていると、足を払われる。

思わず四つん這いの体勢になった士道の首を、奴はぐいと引っ張って、何かを言った。

「縺昴�縺セ縺セ逹€縺�※縺薙>」

異星の言葉は全くもって知らないし理解したくもないが、今何を言ったかは何となく分かった。着いてこい、と言っているらしい。しかも、四つん這いのままで。

「あ"ぁ?ふざけんな」誰が犬みてぇにお散歩されなきゃなんねぇの、と吐き捨てる。

しかしお高い"主人"サマは、士道の言葉も憤りも通じないとでも言うようにきょとんと士道を見つめ返してからこちらに背を向けて戸棚の方へ手を伸ばした。

「はー……犬っころの意見は興味ねぇってか」ばーか、あほ。クソ野郎。とりあえず、頭にパッと浮かんできた暴言を投げつける。だが、特に奴は反応を返さなかった。本当に興味がないらしい。

奴は戸棚をしばらく漁ってから、ふたつのものを取り出した。

士道はそれらを見て、思わず口を閉じる。

__奴が手に持っていたのは、口に噛ませるギャグボールと、直径7センチはありそうな犬のしっぽ付きのアナルパールだった。

「……まじでそれ使うの?」

……いや、普段からこの異星人のクソデカチンコを散々押し付けられている士道にとって、大きさは問題ではなかった。入る。全然入る。しかし、それを入れて歩けと言われると歩けるわけが無いことを士道は知っていたのだった。

腹が苦しいし、何より……士道の身体は調教されすぎている。たぶん、腰が砕けて足が使い物になら無くなる。

「歩けねぇよ」馬鹿じゃねぇの?そんな風にまた罵倒モードに入った士道に、奴はようやく反応を示した。

……とは言っても、ギャグボールを士道の煩い口に嵌めただけだったが。

異星人はもごもごとどうにかこれを外そうと格闘する士道の後ろへ回った。それから、

「ッ〜〜〜〜!!♡」

アナルパールを士道のナカへぶち込んだ。

何の慣らしもないにもかかわらず、それよりも太いもので犯され続けてきた士道の雌穴はそれをずっぽりと咥え込む。同時に、士道は声にならない嬌声を上げてへたり込んだ。

自分の出したほんの少量の白濁が足元を濡らす。すっかり腰砕けになりつつも、士道は奴を睨みつけた。

歩けない。ほら見ろば〜〜〜〜〜〜〜か。

口元をよだれでベトベトにしながら涙目で睨む姿は無様と言えば無様だったが、士道とこの異星人にとっては日常茶飯事だった。

捕まったその日から、人間の肉体は全く歯が立たないことを知ったその日から、士道はどれだけ姿が酷かろうが気力だけは保つことに決めていた。元々士道としては見た目などさほど重要ではない。そんなんで尊厳の折れるへなちょこじゃなかった。サッカーさえあれば、それで気持ちよくなった記憶さえあれば。ずっと正気を保つなんて余裕だ、という確信があった。きっと"アイツ"も同じことを言う。

異星人はいつも通りの士道の態度に少し考えたあと、まぁいっか!とでも言う風にリードを持って歩き始めた……つまり、士道を引きずり始めた。

「ん"ぅ!!」痛ェ!!

士道の悲鳴などものともせず、奴は足を止めない。地球の住宅とは全く違う、コンクリート剥き出しの床に足中が擦れる。

__このまま外に引きずられたらやばい。

そう判断した士道は観念して腰を上げた。尻の重い快感に身体が依然として反応を続けていたが、足の痛みに比べればそんなのどうにでもなった。足が使えなくなる方が問題だ。

膝を地面につける四つん這いでは痛い上に奴の速度についていける気がしないので、足側はつま先で立ち、前かがみのよく分からん体勢になる。奴は満足そうに頷いて、士道の頭を撫でた。

そんな訳で、クソ主人と士道の"お散歩"が始まったのだった。



とりあえず引っ張られるまま付いて行っているが、どこに行くか分かったもんじゃない。何なら目的地なく連れ回されている可能性すらある。紺色の肌のやつしかいない星で肌色、しかも褐色の奴が珍しいのか、すれ違うやつすれ違うやつ全員が士道の方をちらちら覗いていた。恥ずかしい姿を聴衆に見られて士道が折れると思っているのかもしれない……なんて、被害妄想にも似た想像をし始めたところで、目の前の紺色の足がピタリと止まった。

「?」士道が顔を上げると、そこには白い、というか野ざらしなせいでもうすっかり汚いが、元々真っ白だっただろうタイル張りの豆腐式の建物があった。……紺色の人のマークが描かれているそれはちょうど、公園にある公衆トイレのようである。

異星人はくいとリードを引っ張った。士道がその顔を覗くと、奴は中へ士道を連れていく。

薄暗い、湿っぽい空気が頬に触れる。タイル張りの床も濡れている。それから、明らかにヤッてる水音と嬌声が耳に入ってくる。

汚ぇな、うるせぇな、と思いながら目隠し代わりの角を曲がると、見覚えのある赤髪と黒髪がゆさゆさと揺れるのが目に入ってきた。


「っ♡ぃ"ッッ♡おく、おくきもちぃ"ッ__んお"ッ♡♡イく♡イ"きます♡♡♡」

「ごべ、なさぁッ♡もうはんこうしませんッッ♡♡逆らわないからぁ"ッ♡♡♡」


は……?????

士道は愕然として目の前の光景を眺めた。


__一生相容れることの無い宿敵と、士道を見つけ出した魔法使い。

ドブ色の肉棒に自ら腰を振って、媚びるように甘い声で喘いでいるのは、紛れもなく凛と冴本人だった。


がぽ、と口のギャグボールが外される。しかし、何か言葉を発する気には到底なれなかった。

絶句。まさにそんな状態だった。


「出してッ♡♡ご主人様のせぇしッッ♡♡こだねたくさんくださいっ♡♡♡」

大好きな兄貴の真似でクールぶって、そのくせバカで短気な凛の姿はどこにもなくて。

「すきっ♡♡ご主人様のおちんぽが一番すき♡♡♡あ、ん"ッ〜〜〜♡♡♡」

サッカーに持ち得る全てを捧げていた、士道が一番気持ちいいとこへ連れていってくれる傍若無人の天才は、とろとろのアヘ顔を晒す肉奴隷に成り下がっていた。


「さ…………、り、……」単語のなり損ないが零れた口に、"主人"の熱芯が当てられる。抵抗の気力も失せた士道は、されるがままに喉奥へ迎え込む。


サッカーさえあれば。

正気を保つなんて余裕だ。

きっと、"アイツ"。冴もそう言う。言うはずだ。

だったのに。


今まで確かにあった、爆発への導火線が、見る見るうちに湿気ていくのを感じた。


士道の目に涙が浮かぶ。それが窒息感から発生したのか、それとも別の感情から生まれたものなのか、士道には分からなかった。


無理やり喉奥へ叩きつけられた精液をどこか甘く感じたとき、士道は諦念にゆっくりと目を閉じた。

つう、と、褐色の肌を透明な筋が通って行った。

Report Page