壊れた世界に差した輝き

壊れた世界に差した輝き





オリキャラ注意報発令中。ifにイフを重ねた捏造過多。ifローに脳を焼かれる人の話。




「驚いた。まさかこんな所にいるなんて」

「貴方は…何の用?」


家に現れたのは、各国のアドバイザーとして有名な男だった。言葉の割にちっとも表情を変えず、懐から小さなスクラップ帳を取り出す。

「ちょっとした事実確認だ。騎士の国の王が自国民の手で娘共々国を追いだされた事件についてな。発端は他国からの亡命者によって自国民が惨殺された事。鍛えた自慢の騎士達に命じるだけでなく、自らも戦に出て相手の国を焦土と化した。やり過ぎた王は玉座を追われて何処かに消えた…これは真実か?」

「最後は、違う。父は、命も奪われた!」


始まりは記事の通りだ。私の父は苛烈な所もあったが、純粋で、国民に優しくて彼等の願いを何でも叶えようとした。あのテロで国民が大勢死に、憎んだ民衆は報復を求め、父は願いを叶えた。問題は、その後だ。報復を望んだはずの民衆達が、あまりの所業に父を責め出した。


『俺達は、あそこまで望んでいない!』

『何も知らない人達まで殺すなんて…陛下は正気なの?!』

『私達は悪くない!全て、王の責任だ!』

『こんな事になるなんて…この国にいるのが恥だ!』

頼むからアイツの故郷を焼いてください!あの国の全てに惨たらしい死を!これも民衆の望みですから頑張りましょう。あぁ、この国にいて良かった!

そう言っていたのと同じ口で詰る。確かに方法は過ちだったけど、過激だったけれど、それを望んだ筈の人達が全て父上のせいにする。何の見返りも求めずに王の義務だと笑って願いを叶え続けた人は、血走った目の民衆の暴力を避けもしなかった。

お前だけは生きなさいと言われたから、必死に逃げたけど、あの場で一緒に焼かれた方が良かったと何度思っただろう。今では定期的に何かを壊してやらないと、苛立ちでまともな思考も難しくなってしまった。生きているのが辛い。

そんな想いを吐露した先の男は静かに此方を見据えていた。

「自殺は大罪だ。シスターが悲しむ。なにより、このまま死んだら、貴女はこんな世界に負けた事になる。お父上と同じように、愚かな民に殺される。本当に、それで良いのか?」

ハッとした。あんな身勝手な奴等のせいで死ぬのは嫌だ。思わず睨みつけた先で言葉が紡がれた。

「そうだ、胸を張れ。今の貴女を恥じる事はない。間違っているのは世界の方だ。

俺の騎士になれ。見返りとして、こんなどうしようもない世界の終わりを見せてやる」

だから、どうか世界に負けないで、力を貸してくれ。

そう言って少し目を伏せた彼は、綺麗に綺麗に、かみさまみたいに笑ってくれた。

力強く優しい言葉と、嘘みたいに綺麗な笑顔に、息が止まる。割れた窓から差した光と相待っていつか見た教会のステンドグラスを思い出す。

気づけば、跪いて頭を垂れていた。何度も見た、騎士の誓いの姿勢だ。我に帰り、祖国を出てからは一度も抜かなかった儀礼用の長剣を捧げる。

「このアイリス・エーデルリッター、貴方だけは裏切る事なく、欺く事なく、強者を恐れず、貴方を守る盾となり、貴方の敵を屠る矛となりましょう」

綺麗な笑みのまま頷いた私の王様が、剣で私の両肩を叩いた。

私は、この日を死んでも忘れない。

愚かな民は護らない。私が護るのは、こんなどうしようもないところまで救いに来てくれた、冷たくて優しいこの人だけが良い。


捏造用語や人物解説と、おまけ

エーデルリッター

騎士の国の元王家。この国で最も強く、真っ直ぐな騎士と謳われた男が王だった。

オランダ語で高貴なる騎士。






資料に載っていた儀式の作法とやらを返してやると、傅いた金色の女が顔を上げて瞳を潤ませた。

今後やってもらう事を伝えて廃墟を後にしてから、電伝虫を繋げる。

「調べ物ご苦労だったな、セニョール。ナイトの駒が手に入った。あの国で内乱を起こさせた事が、こんな予定外の収穫に繋がるとはな。

いや?惜しくは無い。あの国はいつか滅ぶべきだった。それが早まっただけだ。

ちなみにあっちの国は…そうか。望まれているなら、祖国へ凱旋してもらうのも良いかもな」

一時の国民感情に流された王も王だが、自分達の言葉を忘れた民衆も悪だ。こんな何を恨めば良いかも分からなくなる事が起きる世界は、やはり壊さなくてはいけない。

「身勝手に他人を振り回して、人の心を叩き壊した奴等は、相応の報いを受けるべきだろう?」





アイリス・エーデルリッター

父を頼ってばかりの自国民が父を非難して殺したので心が壊れた。破壊衝動の発散と生活のために殺し屋になり、苛烈な仕事ぶりがローの耳に入った。

父が他国を滅ぼしたのは駄目だと理解しているので、その国の生き残りとかにやられたら同じことでも納得した。ロー達が自国の滅んだ遠因だと知っても、別に何とも思わない。どうしようもなくなっていた自分を騎士にして治してくれたのは彼だから。


黄色のアイリスの花言葉は復讐。

オランダ品種だと、「私は貴方に全てを賭ける」といったものがある。

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