報連相は大事だけど

報連相は大事だけど


IF世界で変な癖が付いたIFローのこんな事もあったかもしれないと思った結果のちょっとした話

正史ローは「ロー」IFローは「“ロー”」と表記しています





「なーペンギン」

「おう」

「あれどう思うよ」

「どうも何も、直した方が良いだろ」

 

それはある日の昼下がりの事

長年の相棒であるペンギンとシャチは甲板で釣りをしながら会話をしていた

 

その主な話題は『別の世界から来たもう1人のトラファルガー・ロー』の事

それも彼の最近の困った所だった

 

劣悪な環境で惨い扱いをされていた事、常に一切の自由が無かった事もあり、彼には困った癖が出来ていた

 

「あの、トイレ行ってきても良いか?」

 

「食事は、食べても良いか?」

 

「寒いんだけど、毛布使っても良いか?」

 

と何においても必ず他人から許可を得る事だ

一挙手一投足全てにおいて許可を得ようとしているのではないかと思う程に必ず周囲の人間に問う彼は挙句の果てに

 

「えっと、その…眠っても良いか?」

 

等とそんな事まで聞いてきた

 

「いやもうね、俺は思う訳よ、確かに何も聞かないで勝手にあれこれやって大惨事!みたいな事にならないよりはマシかなーとは思う、思うんだけど……」

「寝ても良いか聞くのはもはや病気だと思う」

「それな!俺も思う!流石ペンギン意見が合う!!」

 

釣り竿を片手に、もう片手で自分の左隣に座るペンギンの肩をシャチは勢いよく何度も叩いた

 

「大体寝て良いって言うか寝て!ローさんはもっと寝て!」

「んー、駄目元だけど、ちょっとローさんに少し提案してみるか」

 

考え込む様な仕草を取るペンギンの横でシャチは魚を釣り上げた

 

釣果をコックに渡してペンギンとシャチは“ロー”を探した

と言っても基本誰かに許可をもらえるまで部屋から出ないようにしている為、部屋を訪ねればすぐに会える

部屋の扉をノックすれば中から返事が来る

ペンギンが扉を開けて部屋の中を覗けば“ロー”はベッドの上に座っていた

 

「二人共どうかしたのか?」

「えー今日はですねローさんに話があって来ました」

 

2人で部屋の中に入れば“ロー”は不安げに顔を上げた

怯えた様な瞳に小動物の様な雰囲気を感じつつペンギンは口を開いた

 

「ローさんはもっと勝手気ままにしてください」

「……え?えっと?」

「やれあれはして良いか、これはしても良いか……良いんですよ!!というかもっといっぱい好きにしてください!!」

「何かもう俺達がローさんの行動管理してるみたいで心が痛いんです!!」

「シャチの言う通りなんです!」

 

半分泣きながらの2人の言葉に、一体何故泣かれているのか分からず、何を言うでもなく、唯々“ロー”は困惑した

 

「え、あっと…その、ご、ごめん……」

「「良いんですローさんは悪くないから!!!」」

 

2人が騒ぐせいで近場を通りかかったクルーも何事かと部屋の中を覗き込んでくる。そして会話の内容を理解すれば、2人と動揺に泣きながらお願いしてきてしまい、最終的には冷静な精神状態のジャンバールがローを呼びに行く事になった

そうして現場へやって来たローは部屋の惨状を見て溜め息を吐き、事の発端であるペンギンとシャチ以外を持ち場へ戻し、2人のローとペンギン、シャチの4人で話をする事になった

 

「で?さっきの騒ぎの理由は何だ?」

 

問われてペンギンとシャチは事のあらましをローに説明した

 

「成程な、事情は分かった。それで?お前等はこいつに何をするつもりだったんだ?」

 

ローからそう問われれば、ペンギンとシャチは互いを見た後に“ロー”に向き直る

 

「ローさん、『して良いか?』じゃなくて『する』って言い切ってください」

「…え?」

「そもそも余程の事じゃなけりゃ誰も駄目なんて言いません!」

「いや、でも…」

 

自分はそもそもこの世界の人間ではなくて、言い方を変えれば異物なのだから、そんな自分が好き勝手に振る舞うのはいかがなものかと2人に言えば、2人は全力で首を横に振った

 

「そんな事無いです!!」

「そうですよ!ちょっとはこの傍若無人に振る舞うキャプテンを見習ってください!!」

「シャチお前張り倒すぞ」

 

そうは言われてもと口籠もる“ロー”に言葉を掛けたのはローだった

 

「良いんじゃねェか?」

「え?」

「話し方を変えるだけで気持ちも変わったりするもんだからな。物は試しだ、一回やってみろ」

 

と強引にローに押し切られてしまい、結果ペンギンとシャチの提案を受け入れる事になった

とはいえ染み付いた習慣がそう簡単に抜ける訳もなく、“ロー”は何かある度に許可を得ようとしてしまっていた

 

「あの、これ使ってい…」

「ローさん?」

「あ、えっと、これ使うな?」

「どうぞどうぞ」

 

「トイレ行っても…」

「ローさん」

「あ、トイレ行ってくる」

「行ってらっしゃい!」

 

「寝ても…」

「ローさん!」

「あの、えっと、寝るな?おやすみ」

「はい、おやすみなさい!」

 

そんな風に事ある毎にクルー達からたしなめられては訂正してを繰り返していた

 

そうして暫く経った頃に上陸した島で

 

「散歩行ってくる」

「誰か付けるか?」

「いや、治安の良い島らしいから俺1人で大丈夫」

「何かあればすぐに帰って来いよ」

「分かってる。それじゃあ行ってくる」

 

そう言って笑ってポーラータング号を降りて“ロー”は1人で出掛けて行った

1人で町へ歩いて行く“ロー”を見送るローの背後で、ペンギンとシャチがこれでもかと泣いていた

 

「…お前等はいつまで泣いてるつもりだ」

「だっで…だっでローざんがァ!」

「あんな、あんなにだのじぞうに笑っで」

「うるせェ」

 

頭を抱えて溜め息を吐けば、2人の後ろに居たクルー達も大泣きしている事に気が付いた

それでも確かに大きな、そして良い変化が“ロー”に訪れた事は祝っても良い物だろう

 

「今日の飯は豪華にしてやるか」

「アイアイキャプテーン!!」

 

各々食料調達や掃除等の持ち場に戻れば、ローはローで町の散策に出掛けて行った

 

夕方、中々戻って来ない“ロー”を心配して探しに行こうかと話が出た丁度その時“ロー”が行きには持っていなかった籠を持って船に帰って来た

 

「遅かったな」

「悪かった、ちょっといろいろあって」

「いろいろ?怪我はしてねェか?」

「大丈夫。あ、そうだ」

 

おもむろに持っていた籠を地面に置いて蓋を開けると、白い毛に背中には黒い四角の模様の子犬が元気よく顔を出した

 

「ワン!」

「こいつ飼う事にした」

「ちょっと待て!!」

 

あまりにも突然の“ロー”の発言に流石のローも止めたが、“ロー”は笑って首を小さく横に振った

 

「冗談だ、流石にこれはちゃんと相談するつもりだったから」

「ここまで連れて来てる時点で飼う気の方が大きいだろ……」

 

呆れた様子で言うローだったが“ロー”が楽しげにしているのを見て怒りの感情が自然と落ち着き、話くらいは聞くかという結論に至った

 

「ちゃんと説得するからな、ちょっと待ってろよ」

「ワン!」

「お前…」

「シャチにお前を見習えって言われたからな」

「あいつやっぱり一回バラすか」

 

この後無事に“ロー”の説得が成功し、ハートの海賊団に子犬が加わるのだが、それはまた別の話

Report Page