堕ちる
【注意書き】
・「かんざし」「折る」の続き
・ドレホ🥗です。若干ジャック→→→🥗ホー
・R-15(16くらい?)ご注意下さい
・ドレークがとにかく酷い。🥗ホーキンスが可哀想
ドレークはホーキンスを襲った。それは完全に道を踏み外した行為で褒められたものでは無い。ドレークはホーキンスを愛している。だがやって良い事と悪い事はある。ジャックから貰った大切な簪を彼女の目の前で折った挙句、無理矢理事に運んだ。身体中に痕を付けられ、果てるまで精をぶつけられたホーキンスは声が枯れるまで泣いていた。
ドレークは罪悪感こそ抱いたものの、ホーキンスに触れられた嬉しさの方が勝ってしまった。逃げようとする彼女を決して逃す事はなく彼女を抱きしめ続けた。ホーキンスは抵抗を続けたが、疲労からか彼の腕の中で眠ってしまった。その寝顔があまりにも可愛らしくて、ドレークの中ではやはり彼女を自分のものにしたいという思いが大きくなっていた。
だから、彼女が他の男と話すのは以前より我慢ならなくなった。いくら仕事と言え、別の男と2人でいるのは許せなくて、その度に彼女の身体に分からせた。
強い力で押し倒され、自分より大きな手が身体の隅々まで、奥の奥まで触れる。己の手首と同じくらいの、否それより太いかも知れない陰茎が口や膣内に挿れられる。口から紡がれる言葉は罵るような物もあれば優しく愛を語りかける物もある。ホーキンスを見るその目は氷の様に冷たければ愛おしい者を見つめる柔らかい物もあって様々だった。
はっきり言って、ホーキンスはドレークを嫌いでは無い。だがあの日、覚えのない事を散々言われた挙句、ジャックから折角貰った簪を折られてしまった。何故そんな事をするのか分からなかったし、第一ホーキンスはドレークと別に恋仲ではない。なのに“俺以外の男に媚を売った。たらし込んだ。籠絡させた”とか言われて良い気はしなかった。だが何処で見てるのか、自分が男性と話していればまた部屋に連行され犯される。それは段々悪化していって、遂には自身の海賊団のクルーと話していただけで怒られるようになった。
ホーキンスはドレークが怖かった。散々怒りをぶつけられたかと思えば事が済めば優しく抱きしめられる。何が正解か分からない。何をどうすれば良いのか分からない。占いに縋っても分からない。何も分からなくなってしまった。考えられなくなった。
ホーキンスは自分でもおかしくなっている事には気付き始めていた。だから極力、ドレーク以外とは誰とも話す事はしなくなった。
「…ホーキンス?」
男性に話しかけられて身体が大きく跳ねる。怯えた表情で振り向くと、そこにはジャックがいた。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ…?何か…あったのか?」
「あの……その………」
冷や汗が止まらない。怖い、怖い、怖い。話しかけられただけなのに、心配してくれているだけなのに、ドレークがまた何処かで見ていたら、また犯される。気が狂うまで犯される。ごめんなさい、と泣きながら言っても許してくれないあの男に。
「なぁ、ホーキンス…お前首の所……」
ジャックに言われて昨日の事を思い出す。首に手をかけられ、苦しくて息ができなくなった事をありありと思い出した。
「これ、指の痕か?お前…もしかして誰かに……まさか……」
ジャックは心の底からホーキンスを心配してしてくれている。ドレークの異様な姿をホーキンス以外で知っているのは彼だけ。ジャックはドレークが酷い事をしているんじゃないかと見抜いた。
「な、何でもないです…!!本当に、大丈夫です……から!!」
「おい!!」
ホーキンスは逃げるように背を向けて走り出した。優しさが痛い。あんなに気にかけてくれてたのに、それを無下にしてしまった自分が大嫌いだった。ジャックの後ろにあった柱の影に隠れて、黒いマントがひらりと靡いたのを見た。逃げないと。急いで当てがわれた自分の部屋に逃げ込んだ。ホーキンスは泣きそうな目で部屋の扉を閉めようとした。だが、あと少しで扉が閉まるという所で黒いグローブに包まれた指が扉の隙間から入ってきて、小さな隙間をどんどんこじ開ける。
「ひぃッ……!!」
早く扉を閉めないと、また来る。恐怖の塊がやってくる。怖くて優しいあの男が目の前にいる。扉を閉めて鍵を掛ければ、しばらくは難を逃れられる。その内に窓から出て、クルー達の所に行こう。ドレークにされた仕打ちを話して匿って貰おう。優しい彼等ならどんな手を使ってでも助けてくれる筈だ。そう思いながら、僅かな希望を持ちながら、体重をかけて必死に扉を閉めようとした。しかし、黒い指は遂に扉を掴む。
「やだ……。やめてやめてやめて!!!」
ホーキンスの願いも虚しく、扉は開け放たれた。その衝撃でホーキンスは尻をついた。
目の前には自分より背丈の大きい男。光の無い目でこちらを見下ろすドレークだった。
「……お前はどうしていつも約束を破るんだ?」
「あ……や……」
--ガチャリ。
扉の鍵をかけられた。これで侵入してくる者は居ない。助けなど来ない。ホーキンスの目からは涙がぼろぼろと溢れる。
「案外……聞き分けの悪い子だな?」
コツン、とブーツが音を立て、大柄な男がゆっくりと部屋に入ってくる。ホーキンスは後退る。
「それとも…俺にシて欲しくてわざとやってるのか?」
「や…だ………こないで……」
ホーキンスの髪を無理矢理掴み、顔を上げさせる。
「だが……悪い子に、お仕置きは必要だよな?」
嗚呼、またされる。また犯される。ベッドに連れて行かれながら思った。もうやめて欲しい。怖い。怖くて堪らない。誰か助けて欲しい。なのに何故……期待している自分が居るのだろうか。
服も下着も全部取られる。腕を後ろに紐で縛られる。この男は女の裸が苦手だった筈なのに、何故ホーキンスの裸体だけは平気なのだろう。
「…なんで、おとこの、ひとと……しごとのはなしも、しちゃ、だめなの……」
泣きながら訴えるが、返事はない。代わりにホーキンスの乳頭を力任せに抓られた。
「い゛ッ……!!」
ドレークは何も言わない。ただ淡々と流れ作業の様に彼女の身体に罰を与える。
「へんな、はなしはしてないから……。なのに……わたしの…クルーたちとも、…っなんで、はなしちゃ、いけないの………?」
痛みと快感に苦しみながらホーキンスは彼に問う。ドレークは二本指を使いながらホーキンスの膣内を掻き回す。痛い。痛いのに気持ち良い。弱い所を必要に擦られる。乳頭も引っ張られ、絶え間なく刺激を与えられる。痛みと気持ち良いのが一緒に来て、訳がわからなくなる。
「んッ…は、ぁっ…ね、ぇ…なにか、…いってよぉ……」
頭がびりびりして、目がちかちかする。快楽の波が大きくなって、また絶頂を迎えそうだった。気持ち良いのでいっぱいになる。そう思った。が、寸前で指が引き抜かれる。乳頭からも手が離れる。刺激が全て無くなった。
「……なん、でぇ……?」
あと少しで気持ち良くなれたのに、すんでの所でやめられてしまった。はぁはぁと荒い息を吐きながらホーキンスはドレークを見る。いつもなら気が狂うまで沢山イかせてくれる筈なのに。何故だろう。
イきたい。気持ち良くなりたい。ホーキンスはそう思っている自分に驚いた。
「ホーキンス、いるか?」
扉をどんどんと、外から叩かれる。ジャックの声が外から聞こえてきた。様子のおかしい自分を心配してくれているのだろう。
「いたら返事をしてくれ」
「あ……」
今大きな声を出せば、助けを求めれば、きっと彼は扉をぶち抜いてでも助けに来てくれるだろう。そう思って口を開いた。
「ッ……!?」
だがドレークによって、無理矢理彼の陰茎が彼女の口に挿れられる。
「いない…のか?」
ドアノブをがちゃがちゃと動かす音が聞こえる。だがホーキンスはそれを気にしている暇は無かった。
今ホーキンスの小さな口に陰茎が押し込まれている。口を塞がれ呼吸ができない。息ができなくて苦しいのに、気持ち良い。つい先程絶頂出来なかった分、より気持ち良く感じる。口の中で勃起でもしたのかより大きくなっている。陰茎の独特な味が、男の匂いがホーキンスをおかしくさせる。下腹部が疼く。頭を固定されて無理矢理咥えさせられているのに、ホーキンスは自分からドレークのモノをしゃぶっていた。歯は立てない。亀頭を、カリを、全体を、裏筋に至るまで、舌を使って舐める。最初は控えめに舐めていたが、次第に舌を大きく回して舐めた。ストロークしたり時々吸い付いたりと、無理に咥えている為苦しい筈のこの行為。なのに気持ち良くて変になりそうだった。下腹部がどんどん強く疼く。
…挿れて欲しい。一番むずむずしている所を今口に咥えているモノで、自分の身体の配慮などせず力強くがんがん突いて擦って、ぐちゃぐちゃにして欲しい。扉の前にはジャックがいるのに、助けを呼べばすぐ来てくれるだろうに。ホーキンスは涙こそ流しているが、ただ夢中でこの男の陰茎をしゃぶっていた。
「……戻って、ねェか」
寂しそうにジャックは呟く。足音がどんどん離れていく。行ってしまった事に対する不安と安堵。その瞬間、ホーキンスの口の中にドレークの精が一気に解き放たれた。
「ん゛ん゛…っ、ぅ゛ぶッ……」
白濁して粘稠性があって、変な味がして暖かい性液が口の中に広がる。いつまで出し続けるんだと思うくらい出ている。
「溢せず飲めるか?」
出し終えたドレークが陰茎を抜くと、優しい声で頭を撫でながら尋ねる。ホーキンスはひと呼吸置くと、音を立てて性液を嚥下した。
「ぅ、あ………」
「上手にできたな」
頭を撫でながら優しく言われ、抱きしめられる。ドレークの厚い胸板は何故か心地が良い。ホーキンスは自然と身を委ねた。だが下腹部の疼きが止まらない。今ここをどうにかしないと可笑しくなりそうな程だ。
「……欲しいか?」
そんな事言われて、欲しい訳がないと首を横に振りたかった。それでも無理矢理突っ込まれるが。しかし今、ホーキンスはとにかくこの疼きを止めたかった。太くて大きいそれを、早く中に入れて欲しくて堪らない。ホーキンスは泣きながらゆっくり頷く。
「素直で可愛いな」
「あ……、あぁっ………」
先程の恐ろしさから一転、優しい声と慈愛に満ちた目でホーキンスを捉える。腕の拘束はされたままだが、それでも優しく彼女の膣内に大きくて長くて太い陰茎が挿っていく。ホーキンスは何も考えられず泣きながらも、ただ声を出して悶えながら快感を全身で味わっていた。
これは正解なのだろうか。何度占っても分からない。ホーキンスは全ての物事に対して慎重に卜して決める。別の言い方をしてしまえばそういう生き方しか知らないから占いに頼るしかない、ということ。
だが今のホーキンスは、その生き方すら分からなくなってしまった。だからこそ、ホーキンスはドレークの側を離れられなくなった。
ドレークの言う事はちゃんと守る。ドレークの言い付けを守れば、彼はいつも通り優しく接してくれる。優しいドレークは好きだ。優しい言葉をかけてくれて、優しい目で見てくれて、優しく頭を撫でてくれる。痛い事も、怖い事もしない。だから優しいドレークでいてほしいのだ。
正直、ドレークと居ない方がいいと思ってる。占った結果もそう出た。“彼の側に居ると破滅する確率…94%”と。だがもう、占いの結果も信じられなくなっているホーキンスにとって、ドレークは自身にとって“全ての支え”になっていた。だからホーキンスは、どんなに危険だとわかっても、何をされたとしてもドレークの側にいる事にした。それが正解としか思えないからだ。
最近のホーキンスは1人で行動する事が多い。部下も、クルーも連れて歩かない。どうしても男性の割合が多い為だ。それでも男と話せば、その分ドレークに“お仕置き”される。それは誰であっても変わらなかった。だから徹底的に男性を避けた。別に男が嫌い、という訳ではないのだが、ドレークに痛くて怖い事をされるのが嫌だからだ。
だが、痛くて怖いのにドレークのお仕置きは最近気持ち良いと感じる。約束を破れば彼の陰茎が容赦なく膣内を、口を、肛門を容赦なく犯す。なのに的確に気持ち良い所に当ててくれる。力強く胸を触られるのも気持ち良い。優しく頭を撫でられている時も、どうせなら犯して欲しいと思ってしまう。頭が真っ白になって、気絶するまで、頭から爪の先、骨の髄に至るまでめちゃくちゃに愛して欲しい。こんな事を考えてる自分は、なんて下品で気持ち悪いんだろう。ホーキンスの態度が変だと、みんな気付いているし、心配してる。自分がおかしくなってるのなんて、自分が一番わかってる。この短期間でドレークに散々酷い事をされた。無理矢理犯されるわ、ジャックから貰った大切な簪を折られるわ…。それでもドレークの側から離れたくなかった。離れる事は不可能だった。だって今の自分にはドレークが全てなのだから。
ドレークの事を考えただけで、身体中が熱くなる。白い肌に付けられた吸われた痕や、歯形、指の痕や縛られた痕が小さく痛む。下半身が疼く。何故、こんな事になったのだろうか。
「……しんうち……真打ち!」
呼びかけられてはっ、と顔を上げた。声を掛けてきたのは自分の部下達だった。
「どうしました?大丈夫ですか?」
男が話しかける。それは恐怖でしかなかった。部下は心配そうに彼女を覗き込んでいる。悟られてはいけない。そう思った。
「顔色が酷い…無理しない方が…」
「だ、大丈夫……だから……。何……?」
怯えた声で聞き返すホーキンスに疑問を持ちながらも、部下は淡々と話し始める。
「はい。先日不法入国したと思われる麦わらの一味について、妙な動きを見せているとの報告が上がっています。それでですね……」
部下はホーキンスに対して仕事の話をしているだけだ。なのに怖い。怖くて身体が震えている。冷や汗が止まらない。震えも止まらない。話の内容が全然入ってこなかった。
「つきましては、現場はホーキンスさんに任せたいと、カイドウ様からの指示です。どのように対応していき、……ホーキンスさん?」
荒い呼吸を繰り返しながら、浮かぶカードを見つめるホーキンス。指もがくがく震えてる。卜した結果、もちろん迅速な対応をした方が良いと出るが…分からない。今やるべき事を占っても、どう動けばいいのか占っても何も分からない。どうするべきかわからない。わからない。これが正解なのか。何が正解なのか。ドレークに聞かないと、分からない。
もう、自分が分からない。
部下達はホーキンスの異様な光景に顔を見合わせている。
「……わか、……らない」
「え?」
「わからない……。わからない……。わかんないよぉ……。ドレークに、きかないと……わかんない………」
バラバラと床にカードが落ちた。
「ほ、ホーキンス…さん?本当に大丈夫ですか?具合が悪いのなら、休んだ方が…」
心配した部下の手がすぅっ、と伸びてきた。その手がもし自分に触れたら、また怖いのがやってくる。痛いのがやってくる。その恐怖だけ彼女を支配した。
「ひぃっ!………、やぁ…だ、…こないで!!!」
ホーキンスは手を振り払って後退りし、その場にしゃがみ込んだ。ガクガクと震える身体を両手で抱きしめ、大量の汗をかきながら、両目からは大粒の涙を流している。呼吸も酷く荒い。そんな彼女の姿を見た部下達は絶句していた。
「やぁだ!!やぁなの!!こないで!!またこわいことされるからやぁだ!!…もう、こわいのいやなの!!いたいのいやなの!!やさしいのがいいの!!」
「ホーキンスさん…!?」
「ぁっ………う、っあ゛ぁ…っは、ぁッ……」
「なぁこれ、過呼吸起こしてないか!?おい、医者だ!医者呼んでこい!!」
「過呼吸には紙袋使うといいって聞いた事ある…。なんかそれっぽいの探してくる!!」
心配する部下達をよそに、ホーキンスは錯乱していた。呼吸がうまく出来ず苦しい。
「ホーキンスさん、しっかりして下さい!落ち着いて…ゆっくり息を吸って……」
部下が彼女の背中を摩る。何があったかわからないが、落ち着く様に促しながら呼吸を整える様に声を掛けた。
その時…コツン、とブーツの音が聞こえてきたので、部下が音の方に振り向く。
「何があった?」
「ドレークさん!実は、ホーキンスさんが…」
「………そうか」
ドレークがやって来たと、声でわかった。声が何となく冷たい気がする。どうしようまた怒られる。また痛い事をされる。そう考えただけで呼吸が余計出来なくなった。なのに身体が熱くなる。
「ご苦労だったな。後は俺が見る」
「は、はい……」
ドレークが誰も寄せ付けない異様な雰囲気を醸し出しているのを、この部下は何となくわかった。ドレークは彼女を優しく抱き抱えるとその場を後にする。ホーキンスはドレークの方を見るが、涙でよく見えない。恐怖の塊でしかないドレークに身体を預けながら意識を手放した。
目を覚ました時、飛び込んできたのは見知った天井だった。ここは自分の部屋だ。いつの間にか眠ってしまった様だ。
「目が覚めたか?」
ドレークが腕を組んでこちらを見ていた。思わず身体を起こす。彼の姿を見て眠気が一気に引いて行く。心臓が恐怖でばくばく跳ねる。
「一時間程眠ってた。今日は休んでいいと、カイドウからも言われてる」
「あ………」
ドレークが淡々と告げる。自分を見る目も氷のように冷たい。それが怖くて堪らなかった。きっと怒っているのだ。自分以外の男性とたくさん話した事も、男性に触れられた事も。
「どうした?」
「ごめん……なさい。ごめんなさい……」
ホーキンスは涙を流しながら謝った。
「……何に謝っている?」
「だって………また…………」
ぎしり、とベッドが音を立てた。ドレークがベッドに片脚を乗せている。彼が迫って来て、怖くて堪らなかった。また酷いこと、痛くて苦しい事をされるかもしれない。いつもの優しいドレークがいいのに、どうすれば優しいドレークになってくれるのか…。
ホーキンスはそんな事を考えながら、迫るドレークの唇に自分の唇を重ねた。何度もしている行為の筈なのに、彼の厚く温もりのある唇に改めて触れると、何故か心が満たされた。
一方のドレークは、まさかホーキンスからキスをしてくるとは思ってなかったので驚いて目を見開いた。
「……これで、ゆるしてくれる?…これで…ずっと、やさしいドレークでいてくれる…?」
唇を離すと、ホーキンスは泣きながら彼の顔を見上げた。彼の青いガラス玉のような瞳と目が合う。
「ドレーク、すき…。っ、すきなの…。わたし、ドレークのことすき…。だいすき…。ドレークがいないと…わたし、……なにもできない…」
泣きながら己の心情を暴露した。想いが溢れて止まらない。ホーキンスはやっと、自分がドレークを“愛している”事を自覚したのだ。両頬が涙で濡れている。ドレークはそんな彼女の事を優しく抱きしめた。ドレークの温もりが心地よくて、ホーキンスは身を委ねる。
「ドレークのことかんがえると…からだがあつくなるの…。あたまなでてくれるのもすき…。だきしめてくれるのもすき…。キスしてくれるのも好き…。ほんとは、セックスもすき…。でも…ドレーク、セックスしてくれるときこわいの…。きもちいいけど、いたくてこわいの…。もっと、やさしいのがいいの……」
泣いている彼女の頬に、ドレークは唇を落とす。ドレークの唇の温もりが気持ち良くて、心地良くてホーキンスは目を細めた。
「わたしがすきなの、ドレークだけだから…。ほかのおとこのひとと、こんなことしない…。おしごとのおはなししか、してないから……。これからもずっとそうだから……。ドレークいがいに、すきなおとこのひとなんていない……。だからおねがい…いたいのしないで…。こわいのしないで……。きらいに、ならないで……」
「……ホーキンス」
ドレークの顔を見ると、先程の氷の様な冷たい目から一転して、優しく愛おしい者を見つめる瞳に変わっていた。そんな目を向けられては、ホーキンスの心臓もどんどん速くなる。彼の大きな手が優しく涙を拭ってくれる。
「俺はお前の事は、絶対に嫌いにならない。愛してる。ずっと愛してる。…だから、他の男に取られたくなかった。誰にも渡したくない。他の男に取られるくらいなら、傷付けても構わないと思っていた。だがそのせいで、辛い思いをさせてしまって、ごめんな……。俺も、お前に嫌われたくない」
再び強い力で抱きしめられた。少し苦しかったが、今はそれが堪らなく気持ち良かった。ホーキンスも彼の背に手を回す。嫌われておらず、怖い事をされない安堵感で満たされた。ホーキンスの口元が自然と緩んでいた。涙も止まっている。
「…ほんとに、もうこわいのしない?ずっとやさしいドレークでいてくれる…?」
「ああ…。ホーキンス、愛してる。ずっと愛してる。誰にも渡さない。お前を他の男になんか渡したくない…。お前を、俺だけの女にしたい……」
「……うん。して、いいよ……。わたし……ドレークだけの、ものになりたい……」
どちらからともなく互いの唇を重ね合った。ホーキンスの唇を貪りながら、ドレークは彼女が自分についに“堕ちた”喜びで内心ほくそ笑んでいた。それを悟られない様に、隠す様にドレークはホーキンスの口に舌を挿れた。最初の頃は拒絶していたホーキンスも、今は彼の全てを受け入れて、自分から舌を絡めた。それだけでドレークは歓喜で満ち溢れた。やっと彼女が自分のものになってくれた。確かに酷い仕打ちをした。泣き崩れる彼女を見て罪悪感は多少あった。だがそれよりも、ホーキンスが自分を求めてくれる事が嬉しくて堪らなかった。もう絶対離さない。何があっても、誰に何と言われようと、彼女は絶対に誰にも渡さない。例え彼女に他に好きな人が出来れば両腕両足を斬り落とし、海楼石の錠で繋いで閉じ込める。彼女が海賊であろうが知った事ではない。上官達に咎められても構わない。彼女を自分から離さない努力を何だってするつもりだ。彼女の海賊団のクルー共にも渡さない。ジャックにも渡さないし、二度と贈り物など贈らせない。キッドとキラーになんて絶対に渡さない。
……ホーキンスはもう、俺のものだ。
互いの息が掛かって、唾液が混ざり合う。2人は夢中になって舌を絡め合った。淫らな水音が部屋に響く。鍵はかけた。誰も入ってはこれない。もし誰かが部屋に近付いて来ても、この行為を聴かせるつもりだ。決してやめたりしない。彼女を狙う男共に、ホーキンスが自分のものになったと証明する為に。
「っ、ドレーク…」
「どうした?」
互いの唇が離れて、透明な糸が引いてぷつりと切れた。紅潮した頬でホーキンスが物欲しそうにドレークを見つめている。
「からだ、むずむずするの…。ドレークの、ほしい……っだから…おねがい……」
自分から強請ってくるとは思っていなかったので、ドレークは少し驚くも、愛しい彼女の願いを聞き入れた。
「ああ。いっぱいしような…」
ドレークは彼女の首筋に唇を落とし、小さく吸い付いて新しい痕を付けた。そのまま服に手をかけると、ゆっくりと脱がした。彼女の絹の様に白い肌には、今やドレークによって付けられた痕が無数に付いている。吸い付いた痕も、噛み付いた痕も赤々と残っている。更には指の痕や、引っ掻かれたような痕、縛られた痕まで、身体の至る所に付けられていた。これを他人が見たら絶句して腰を抜かす程だろう。だがこれが異常だと言う事をホーキンスはわかっていなかった。それ程、彼女の中で“考える力”が低下しているのである。
互いの服など脱ぎ捨て、何もかも忘れ肌を合わせてまぐわった。
痛くて怖くて、苦しかったこの行為も、今は心満たされ甘くて気持ち良いものに変わった。脳天から足の先までびりびりと電流が流れる。ドレークが与える全てが気持ち良すぎて堪らない。良い様にされているにも関わらず、喘ぐ声も抑えられない想いも彼女の口から紡がれる。優しいドレークが、好きで好きで大好きで、ドレーク以外の事など考えられなかった。
…ホーキンスは、この関係の異常さに気付いていない。
これまでホーキンスは別にドレークの事は嫌ってはなかった。だが特に異性として意識した事はない。彼の異常な執着心と嫉妬心に晒され、この短期間で彼女は精神的にも肉体的にも追い詰められた。だから脳が錯覚したのだ。“自分はドレークを心から愛している”と。身勝手な理由で贈り物を壊され、異様な執着を向ける男を、ホーキンスは愛してしまったのだ。その異常さを、ホーキンスが自覚する事は今後一切ない。彼女は既に壊れてしまったのだ。そんな事すら気付けなくなってしまったホーキンスは気を失うまで彼の精を、愛を全て受け止めた。
「ねぇ、ドレーク…」
「どうした?」
「花の都で騒ぎがあったって、報告が上がったの。占いだと麦わらの一味が関与してる確率が高いって出たの。ドレークは、行った方が良いと思う?」
「…まぁ、野放しには出来ないからな。行こう」
「うん」
ホーキンスは行動に移す際等、常に物事を占って決める。占った上で考えて、最善の道を選択し行動する。だが最近はその結果をドレークに聞いて、全てをドレークに判断してもらい行動するようになった。どこに行くにしても、ドレークが彼女の側に控えていた。
「…ドレークに聞かないとわからない」
彼女は良くそう言う様になった。多くの者は気付いていないが、一部の者はその異常さに気付いていた。もちろん、彼女のクルー達も、ジャックも。
ジャックは、ホーキンスが自分の不手際で貰った簪を折ってしまったと謝罪を受けた。淡々と話す彼女の目は、何処か正気を保っていない様に見えた。だがジャックは、彼女がドレークに無理矢理連れ去られた日から少し経った後に知っていた。既に贈った簪が折られて滅茶苦茶になっていたのも。どう見ても不手際や自然に壊れた物ではなく、人の力で壊された物だった。
…やったのはドレークと既に見抜いていた。彼女が最近おかしくなったのもドレークのせいだという事も。だがジャックはどうしていいか分からず、折れた簪をかき集めて、大切に保管していた。嬉しそうに付けていた彼女の思い出を、汚されたくなかった。
「…人間ってのはな、精神的に酷く追い詰められた時、自分を守る防衛本能で、相手を“好きだ”って脳が錯覚する事があるんだよ。ホーキンスだって今そんな感じだろ」
「…そんなの、愛でもなんでもねェ…偽物じゃねェか。酷ェ事されてるはずなのに、それが分からなくなって、生き方も滅茶苦茶になって……ホーキンスが、可哀想だ……」
「…まぁ、当人が幸せだと思ってんなら良いんじゃねェの?しかしドレークも意外とやるよなぁ。お前がぼやぼやしてたから盗られちまったな」
「兄御……!!」
「怒んな。…まぁ、側から見ても異常だよ。今のホーキンスは。…ホーキンスみてェに、追い詰められて相手を好きになっちまうのを……“ストックホルム症候群”って言うんだよ」