堕ちる明星─①

堕ちる明星─①


アビドス高等学校と反アビドス連合との戦争において、ミレニアムサイエンススクールは最初に陥落した学校となった

戦力が半減し指揮系統も混乱しているゲヘナ、戦乱に乗じた政治的な内乱により行動が遅いトリニティ…これらを脅威ではないと判断したアビドス首脳陣はほとんどの戦力を一点に集中することを決定する

ハイランダーの鉄道も利用した電撃的な侵攻に、巡航ミサイルやドローンによる一方的なロングレンジ攻撃での短期決戦を想定していたミレニアムは対処しきれなかった


そして今、ミレニアムの最奥への道を閉ざすセキュリティを巡って熾烈なハッキング合戦が繰り広げられていた…


「っ…!監視カメラシステムダウン…やりますね、ハレ…!あちらにいるのが残念でなりません…!」

‘‘全知‘‘の文字のステッカーが貼られたゴーグル型デバイスを装着し、多数のコンソールの上でせわしなく白魚のような指を躍らせる車いすの美少女…

そう、特異現象捜査部とヴェリタスの部長にして全知の学位を持つ最強の超天才清楚系美少女ハッカーである明星ヒマリは自身の部室に迫る小鈎ハレ達を退け続ける不毛な戦いを強いられていた


ハッキングによりダウンした監視カメラとの連携をわずか一分ほどで回復させ、再度自動タレットと手動操作の機関砲によって隔壁にとりつこうとするアビドス生を蹴散らす…そのとき、けたたましいアラーム音がヒマリの鼓膜を叩いた

「隔壁の制御システムにエラー!?いつの間に…」

ゴーグルのスクリーン左方に表示されたアラートとエラーの文字、すぐさまカウンターハックとウイルスの用意をするヒマリの瞳にカメラ越しの下手人の姿が映り込む

ジリジリと壊れた液晶のような鮮やかな光を振りまきながら、何もなかった空間からビニールの雨合羽のような衣服を着たハレが現れた…

「ハレ…!」

鹵獲した光学迷彩を着て蹴散らされる雑兵に紛れて隔壁にアクセスした彼女に、ヒマリの手が一瞬止まる


(体からコードが…!?まさか端子を差し込んで制御回路から直接システムを!)

万が一…もしも万が一、私のハッキングやウイルスが機械ならざる彼女に重大な害を及ぼしたら

そう考えたヒマリが爆発物によるハレの物理的排除を試みるまでの僅かな時間で、次代の天才は電子の鉄壁を引きはがした


「よくがんばりました、ハレちゃん♡お手柄ですよ…♡」

ヒマリから奪い取ったデバイスを左手で弄びながら‘‘砂漠の魔女‘‘は自身の膝に頭を預ける少女に向かって蠱惑的に囁く

右手につまんだ白い立方体をハレの口の上で揺らし、両手を頭の後ろで組みながら苦々しげに睨みつけるヒマリに流し目を送る…

「ハナコ様の策あってこそです、あっ砂っ砂糖っ…はぁぁ…あはっキマり、すぎるぅ…あぁん♡」

高濃度サンド・シュガーの角砂糖を褒美として与えられ弓なりに背を反らしながらがくがくと震えて全身で絶頂を表現するハレ、魔女はしばらくそんな彼女を愛でるように撫でていた


ハレを直接隔壁にアクセスさせる作戦は魔女の考えたものだった、そう理解したヒマリは声を震わせてハナコを糾弾する

「卑怯者…!貴女にもドブ水の汚名を贈らなければならないようですね…!」

そんな罵倒を気にも留めず、立ち上がった砂漠の魔女は厭らしい笑みを浮かべてヒマリに歩み寄る

「ふふっ♡ひどい言いようですね…こういうのは引っかかったほうの負けですよ、そうでしょう?全知さん♡」

「きゃあっ!」

そのままためらうことなくヒマリの乗る車椅子を蹴り倒し、地面に投げ出されたヒマリに馬乗りになった

「生意気を言う口はこれですか~?♡」

ヒマリの華奢な体から繰り出される貧弱な抵抗をやすやすと押さえつけ、魔女はヒマリの手と口元をガムテープでぐるぐる巻きにして拘束する


自力では逃げ出せず、助けも求められなくなったヒマリをもう一度車椅子に座らせた状態で縛り付けてハナコは満足げにほほ笑む

「うふふ…やっぱりヒマリさんは非力でかわいいです♡……でもやっぱりその頭脳はフリーにしておくのは危険すぎますね♡」

不穏な言葉とともに魔女は薄いシャツの見せつけるように開いた胸元にヒマリの顔を押し付けるように抱え込む

ヒマリの意識が砂糖漬けの花のような甘く妖艶な香りに包まれる…

「───‼──!──…!………」

「体の弱い貴女には特別な再教育プランを…♡楽しみにしていてくださいね♡」

フェロモン自体のヒマリには強烈すぎる興奮作用と、フェロモンを吸い込まないよう息を止めたことによる酸欠…ヒマリはしばらくモゾモゾと首をふって抵抗していたが、やがてガクンと震えて気を失った


次に目を覚ましたとき、ヒマリは拘束もなしに簡易的なベッドに横たわっていた

自身の記憶で先ほどまでいた特異現象捜査部の部室ではない、しかし見覚えのある液晶に囲まれた薄暗い部屋…

「…ここは、ヴェリタスの…」

「ようやく起きたんだ、部長」

ぼそりとぶっきらぼうに呼びかけられる

「ハレ…!」

重い体を何とか起こすと、自分が足を伸ばす先には回転いすの上でひざを抱えた気だるげなハレがいた


「やっぱりPCのスペック自体は古巣のほうがいいね、ハナコ様はアビドスMAXもちゃんと手配してくれたし最高効率で作業が進んだよ…先輩が寝てる間に他の用事は全部終わっちゃったよ、再教育しなきゃいけないのは部長が最後」

挑発するように口の端を吊り上げながら、濁った瞳のハレは隔壁で見せたコードをヒマリに向かって伸ばす

「っ…この清流のように澄み渡る精神を持つ天才ホワイトハッカーである私が貴女たちに屈するとでも?いいでしょう、私が最後だと言うのなら私こそがミレニアム最後の砦として、ハレ、あなたを…」

話す間にもゆるゆると伸びてくるコードから遠ざかろうとヒマリはベッドの上を後ずさる

彼女がベッドから落ちる前に、その背中を甘く豊満な肢体が受け止めた

「それはとっても楽しみです♡私も再教育室室長として張り切っちゃいますよ♡」


哀れな犠牲者を背後からゆるりと抱きしめ、吐息を感じさせるように耳元に唇を寄せて魔女は囁く

「一緒に楽しみましょうね…♡」

魔女の熱く柔らかい舌がヒマリの長く尖った耳の上をツツっと滑った

「ひゃ…っ///」


不意打ちに思わず嬌声を漏らしたヒマリの首筋にハレのコードが突き刺さり、ついで彼女を背後から抱きしめるハナコの首にも同じものが刺さる

「体の弱いヒマリさんに直接砂糖を投与するとODの危険性があるので…今からこのコードを通してハレちゃんの感じる快楽だけを流し込みます♡」

「ま──」

悲鳴か、抵抗の声か

ヒマリが何か言う前に片手で口を塞ぎ、砂漠の魔女は笑って続ける


「ハレさん、もっと近くに…このホースからはサンド・シュガーを含むサイダーが出てくるんです、すぐに効いてきますからね~♡」

「はい…ハナコ様…♡」

恍惚とした表情で口を開くハレに向かって、魔女の袖口から出てきたホースが伸びていく

押さえつけられ涙目で首を横に振る程度の抵抗しかできないヒマリを尻目に、その先端がハレの口に潜り込んだ

「では、ご賞味あれ♡」

瞬間、ハレ/ハナコ/ヒマリの口に溢れる至上の甘味


甘く刺激的な炭酸が幸福感と共に弾け、心地よく喉を流れ落ちる感覚までもが共有される

「あああっっ!だっだめですっこんなっ!嫌あぁぁ!」

意識を染め上げる幸福感ともはやあの甘さしか考えられなくなるほどの快感に叫びながら身をよじる…しかしヒマリの顔はハレと同じように蕩けた笑みを浮かべてしまっていた

「えへへ…♡どうして?きもちよさそうじゃん…いや気持ちいいのか、私と同じなんだし」

ハレはそう言いながら半ばハナコに体を預けて横たわるヒマリの上に覆いかぶさる


「つながってる状態なら…部長を気持ちよくすれば私もハナコ様もシアワセってことだよね…」

「ひっ……」

「うふふふ…♡ハレさんが積極的で私も嬉しいですよ♡」

砂漠の魔女と配下の魔人は妖しく笑いながら未だに快楽に体が慣れずに動けないヒマリを前後から挟むように密着していく

「ほら、私たちに全部委ねて…♡」

「砂糖の感覚を受け入れて」

するすると衣服の内に忍び込む二人の手を止めさせる余裕は、既にヒマリにはなかった

「やっ…あぁ…♡」


どこにふれられてもきもちいい

この感覚自分の身体のものなのか、それとも眼前で蕩けた表情で嬌声をあげるハレのものなのかもわからない

「えへ…ッいひぃ…!らめれす、も、とけちゃ…んお゛っ//」

舌を出した情けない表情でベッドにつっぷすヒマリとハレ、その横で魔女は息を整えながら最後の一手に思考を巡らせる

「はぁ、はぁ…ふぅ…♡私もちょっと口寂しくなってきちゃいました♡」

そう言いながら取り出したのは、この前ハレに与えていた特別な角砂糖

それが目に入った途端、息も絶えだえのヒマリが焦ったように口を挟む

「ちょっと、まってください…!そんなものを…今…!」


一口でハレがあれほど乱れていたものを食べられたら、今そんな信号を流し込まれたら

今度こそ本当に────

「私もそろそろ甘いものを食べたいんです、ハレちゃんも疲れてきてるみたいですし…その邪魔をするならもっと頼み方を工夫した方がいいんじゃないですか?」

今までの態度が嘘のように冷酷に言い放つ

これは自尊心の強い彼女をへし折り屈服させる第一歩だ、まずは徹底的に敗北と快楽を教え込まなければならない

「ッ…!ほ…本当に、抵抗してお二人の手を煩わせてしまい…!申し訳ございませんでした…はぁ、だからその角砂糖だけは…」

ヒマリは乱れた下着を最低限直す余裕もなく、慌てて土下座の姿勢を取って嘆願した

彼女自身の自尊心を深く、深く傷つけながら


「…つまらないですね、発想力が貧相すぎてびっくりしました♡」

砂漠の魔女は冷たい言葉に顔を上げたヒマリの頬に手を添え、有無を言わせずその唇を奪った

「────⁉」

甘く熱い舌に口蓋を、頬の裏を激しく撫ぜられてヒマリは声にならない驚愕の叫びと共に小さく達する

唇を離すことなく舌を絡め…唾液を交換し…息が切れるほど長く、甘ーい接吻を味わわされた


腰が抜けたように倒れこみ、焦点の合わない目で自分を見上げるヒマリに魔女は優しく言い聞かせる

「次からは私に砂糖を口にされたくないときはキスをねだるようにするといいですよ、全‘恥‘さん♡」

「部長ばっかりずるい…私にもして、ハナコ様」

「ふふ、感覚は共有していたでしょう?欲張りですね…♡」

ハレから口内を舐られる感覚、そして興奮のあまり自らを慰め始める感覚を共有されながら、ヒマリは気を失った…

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