堕ちた朔月の、甘い毒

堕ちた朔月の、甘い毒


今わたしは、お兄ちゃんのために料理を作っている。…二人きりだから、アサシンのカードを夢幻召喚して。

アサシンのカードによる夢幻召喚は、使用者に合ったハサン・サッバーハの力を引き出す。そのため、イリヤが使えば百貌のハサンになるし、わたしが使えば静謐のハサンになる。

静謐のハサンは毒の娘の再現。体液、爪、肌、吐息。その全てが猛毒を帯びている。…それが多量に混ざった静謐のハサンのチョコレートを食べても、お兄ちゃんは大丈夫だったという。

今こうしているのは、そんなお兄ちゃんの毒耐性が理由だ。藤丸立香お兄ちゃんにしか食べられない美味しい料理を、お腹いっぱい食べてもらうのだ。

…山の翁の力をこんなことのために使う、それに対する良心の呵責はとうに振り切っている。静謐のハサン当人も、山の翁としてより一人の少女として生きている節がある以上文句は言わせない。今のわたしを咎められるのは、恐らく初代“山の翁”だけだ。


「…うん、完璧」


味見をして、料理の出来栄えがかなり良いことを確認する。

握り寿司十貫、茶碗蒸し、天ぷら、蛤のお吸い物。夢幻召喚したこの手でいっぱい想いを込めて作ったから、たっぷり毒も込められてしまっている。毒性は皮膚接触時のおよそ百倍、粘膜接触時の数倍……普通なら完全な致死量だ。


(…でも、お兄ちゃんなら大丈夫)


これは立香お兄ちゃんのためだけに作った料理。立香お兄ちゃんにしか食べられない料理。そう思うとぞくぞくしてたまらなくなる。


「…召し上がれ」

「ああ、いただきます」


お兄ちゃんが料理を口に運び、咀嚼する。…その顔が綻んだ。


「美味しいよ。いつもより刺激は強いけどね」


その言葉を聞いた瞬間、わたしの全身を絶頂にも似た歓喜が貫いた。その感覚はお兄ちゃんが料理を口に運ぶ度に再現され、完食する頃にはわたしをすっかり発情させていた。


「…? 美遊?」

「───熱く、熱く、蕩けるように……あなたの体と心を焼き尽くす…♥ 『妄想毒身(ザバーニーヤ)』……ちゅ…♥」


お兄ちゃんに溢れんばかりの愛を伝えるため、宝具の真名開放を行いつつ口づけた。

無論、殺すことで愛を証明するなどという物騒なものではない。これは夜に咲く毒の花たる今のわたしが、お兄ちゃんにとってだけは好き放題手折ることのできる可愛らしい花に過ぎないと証明するためのものだ。


「んっ…♥ れる…♥ ちゅ……ちゅぷ…♥」


唇をより強く重ね、舌を絡め合い、互いの唾液を交換する。


「…ぷはっ…♥」

「ふ、ぅ…。…美遊、どうしたの?」

「気持ち、抑えられなくなっちゃって…♥ …今のはね? この姿でする初めてのキスなの。わたし、この姿でえっちなことまだしてないんだよ…♥」


…元の世界で経験した激しい戦いの中でも、この宝具の真価たる口づけや性交による粘膜接触は決して行わなかった。たとえそちらの方が宝具として強力でも、そういう対象ではない相手にこんなことをする気にはならなかったからだ。

けれど、立香お兄ちゃんは別。彼は静謐のハサンのキスを受けても死なない人。わたしの愛しいあなた。…わたしの、運命の人。


「───今更だけどさ、元の世界の“お兄ちゃん”のことは良いの?」

「もうっ、今は“あの人”のことは、言わないで…♥」


お兄ちゃんは意地悪だ。せっかくの逢瀬なのに、余計なノイズを走らせないでほしい。そもそも、“あの人”が今のわたしに触れたらすぐ死んでしまうではないか。そんなの、色々な意味で話にならない。


「じゃあ、遠慮なく」

「ぁっ…♥」

「綺麗だよ、美遊…」


夢幻召喚の影響で露わになっているわたしの背中を、お兄ちゃんの指がゆっくりと這っていく。いささか扇情的に過ぎるこの衣装は、お兄ちゃんのツボを思いの外突いているらしい。


「あぁ…♥」


───滾る。狂おしい程の昂ぶりで子宮が、次いで全身が熱くなる。

兄妹愛とは似て非なるもの。性的なものを伴う強烈な愛情。…元の世界では、決して味わうことのなかったもの。


「わたしのマスター…♥ 全て、全て、あなたの御心のままに…♥」

「…良い子だ」


身を寄せると、そのまま抱きしめ返されてからいつもより低めの声で囁かれる。それにキュンキュンしていたわたしは、いつの間にかお兄ちゃんの手でベッドに放り込まれていた。

か細い声で「きゃっ…♥」と漏らすわたしの眼前に、お兄ちゃんのチンポが突きつけられる。


「舐めるんだ」

「ッ♥♥♥ はひっ…♥ ん、ちゅ…♥ ぬ、ぶぅ…♥♥♥」


わたしはお兄ちゃんの“命令”に従い、チンポを舌の上に乗せた。

…嫌な人の命令には従いたくないけど、お兄ちゃんは別。お兄ちゃんの命令は心地良くて、人としても聖杯としても満たされる。お兄ちゃんだけは特別なのだ。

じゅぽじゅぽと音を立てながら、お兄ちゃんのイケメンチンポを舐めしゃぶる。亀頭にキスを捧げ、裏筋を舐め上げ、玉袋にも舌を這わせていく。そうして毒の唾液をまぶしていき、チンポがてらてらと光り始めたところで、わたしはチンポを根本まで咥え込んだ。


「んむっ♥♥♥ はふ♥ ぢゅる♥♥ んうぅっっ♥♥♥」


頬張ったチンポは、歓喜の涙が出る程美味しかった。

少し汗臭くて、しょっぱくて、顎が外れるくらい大きく長いチンポ。わたしには、それがこの世の何より尊く思えた。

頭を前後させて、必死にチンポを刺激する。お兄ちゃんのために。


「じゅるっ♥ れる♥ ずぞぞぞぞッ♥♥♥」

「っ……イく、イくぞ美遊ッ…!」

「んじゅるっ♥♥ んむっ♥ んむぅぅぅっ♥♥♥」


お兄ちゃんの宣言と共に、チンポから命の素が迸る。鷲掴みにしたわたしの頭を思いっきり押し付けて行われたそれは、思わずうっとりするような熱さを持っていた。

喉を焼く灼熱の精液を必死に嚥下するわたしの姿を見て、ご満悦な様子のお兄ちゃんが頭を優しく撫でてくれる。…嬉しい。


「…お兄ちゃん……来て…♥」


レオタードに近い衣装をずらしてからタイツを破き、M字開脚でお兄ちゃんを誘う。他の人では呆気なく死んでしまう、藤丸立香お兄ちゃんだけが大丈夫な行為……愛のあるセックスを行うために。


「美遊、それ反則…!」

「ぁっ♥ …ぅあああ゛♥ あ゛ぁ゛ーっ♥ あ゛ーッッ♥♥♥」


お兄ちゃんがベッドに倒れ込み、その直後わたしに挿入した。


「すきっ♥♥♥ お兄ちゃんのチンポすきいっ♥♥♥ わたしの頭とおまんこぐちゃぐちゃにしてッ♥ 朔月も衛宮もエーデルフェルトも全部やめろってもっと叫んでっ♥ 藤丸美遊になれっていっぱい叫んでえぇぇッ♥♥♥」

「美遊ッ…! 美遊、美遊、美遊…!」

「お゛ぉ゛お゛っ♥♥♥ ふがいぃぃッ♥♥ お兄ちゃんのチンポ気持ち良いぃッ♥ わたしの全部お兄ちゃんのになるぅっ♥♥♥」


精一杯の淫語でお兄ちゃんを悦ばせると、興奮してくれたお兄ちゃんはピストン運動をより激しくした。同時に降ってくるキスの雨が、わたしの全身をいやらしく打つ。

触れてもらう度、抱きしめ合う度、唇を重ねる度、舌を絡め合う度、逞しいペニスで膣内を抉られる度、わたしはイリヤの「かっこいいお兄さん」という評が一字一句正しいことを実感する。


「あぁっ♥ ぅああぁっ♥ 幸せ、幸せだよぉっ♥ もっと、もっとシてお兄ちゃんっ♥ わたしは朔月でも衛宮でもエーデルフェルトでもなくてっ、お兄ちゃんだけの藤丸美遊なんだって刻みつけてぇぇッ♥♥♥」

「そのつもりだよ美遊…! 美遊がオレ専用のお嫁さん便器だってこと、しっかり刻みつけてやるからなッ!!」

「ほ、ォお゛っ♥ えへ、えへへぇ…♥ わたし朔月も衛宮もエーデルフェルトも捨てるっ♥♥♥ わたし、藤丸美遊はっ♥ 藤丸立香お兄ちゃんのことだけをっ、世界で一番愛してるよッ♥♥♥」


───あぁ。わたしが歴代山の翁の中で、静謐のハサンと一番相性が良い理由が分かった気がする。

普通の少女でありたいと願いながら、持って生まれた“道具”としての力を有効利用せんとする二律背反。

自分の行った悪事に対し、言い訳と自己正当化を重ねる卑劣な性根。

───ほら、卑しい性根同士お似合いだ。暗殺教団の生きた道具と朔月の生きた願望機、使われる立場同士何の違いがあるのか。

…だからこそ、そんな卑劣で見下げ果てた女を愛してくれる人には全力で応えたい。わたしの持てる全てを使った愛情表現で。


「!! 美遊ゥッ!!!」

「ッ♥♥♥♥♥ あ゛ァァアああーーーッッ♥♥♥♥♥♥♥」


わたしの絶頂と同時にお兄ちゃんも絶頂し、射精した。

熱いザーメンの濁流が、それを搾り取らんとしたわたしの膣内を蹂躙する。子宮へと到達したそれは過去の思い出を焼き尽くし、押し流し、わたしに新しい色彩を植え付けていった。

流し込まれた精液の熱さと粘りを感じていると、ぬぽんっ♥ とお兄ちゃんのイケメンチンポが引き抜かれる


「ォ゛ッ♥♥♥♥♥」


その拍子にチンポをコーティングしていた精液と愛液が飛び散って、褐色に染まったわたしの肌をいやらしく穢していった。


(…お兄ちゃんの愛の証…♥)


お兄ちゃんの愛の証、それは精液だけではない。全身に刻み込まれたキスマークもそうだ。

情事の最中執拗に繰り返されたキス、それによって全身につけられたそれがとても誇らしく思える。これは、わたしがお兄ちゃんのモノになった証だから。


「早くお兄ちゃんの赤ちゃん産みたいなぁ…♥」

「それは人理修復を終えてからね」

「はぁい…♥」


お兄ちゃんに撫でられるのが好きだと言ったイリヤの気持ちが今なら分かる。これは、麻薬だ。

…ああ、今度のバレンタインはアサシンのカードを夢幻召喚した状態で作るチョコ、なんてどうだろうか。静謐のハサンとは違う作り方で差をつければ、きっと喜んでくれるはずだ。


「えへへ…♥」


わたしを抱きしめ、尚も頭を撫でてくれるお兄ちゃんの胸板に頬を寄せ、全身を擦りつけて目一杯甘える。元の世界のことも、イリヤのことすらも頭から吹き飛んだわたしの脳みその中には、お兄ちゃん以外何も残っていない。


「お兄ちゃん、今日はこのまま寝て良い?」

「良いけど、どうして?」

「落ち着くの、すごく…♥」

「その顔は落ち着いてるっていうより興奮してる感じだけど……まあ良いか。じゃあ、おやすみ美遊。後始末は朝に回そう」

「うんっ♥ おやすみお兄ちゃん♥」


そうしてわたしは、脳みその中を幸せだけでいっぱいにしながら眠りについた。

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