地雷を回避できなかった羂索
あくまで世間話の延長として、何気なさを装った。興味を抱いているとは気付かれないように。
「そういえば宿儺、親友がいるんだってね?」
その瞬間、怖気が走った。肌がひりつく、背中を冷たいものが流れ落ち、息すらも止めていた。反射的にでも術式発動の構えをとれたのは奇跡と言える。尤も、そこから先は全く動くこと叶わないのだから大した意味はない。
押し潰されそうなほどの重圧感を発しているのは目の前の王だ。王はひとつ、まばたきをした。刹那。
「俺の交友に首を突っ込むつもりか?弁えよ、痴れ者め」
腕が飛ぶ。勿論私のだ。心底不快と言いたげな宿儺。首を飛ばされなかったのは気紛れの慈悲だ。更に踏み込もうものなら、今度こそ容赦なくその凶刃が私の頭を鞠のように転がしてしまうだろう。
止めどなく流れ落ちる血液。必死に反転を回しながら、表面上はなんでもないように笑う。
「すまないね、君達に首を突っ込む気はさらさらないよ」
「塵と帰りたくなくば疾くと去ね」
完全にお怒りの王に、今日はもうどうやっても駄目だろうと諦める。
どうやら私が考えていた以上に親友の存在は宿儺にとって地雷のようだ。私とて命は惜しい。意思を持つ災厄のような男の地雷に手を出す愚かは犯さない。
軽く頭を振り、親友についてを捨て去る。気を取り直して、どう宿儺の機嫌を取ろうかと明日へ思考を飛ばしていた。
まさかちとせ先の未来で、特大すぎる地雷を自ら設置するに留まらず思い切り踏み抜くことになろうとは、目的に向けて駆け出したばかりの私には到底知る由もないことだった。