地獄調教カヨコ IF ~脱走のその後~
『おい、いつまで寝てる。さっさと起きろ。』
お客様の声が聞こえる。業務中に寝ちゃったみたい。早く起きなきゃ。
…お仕置き、やだなぁ…
『ほれ、もっと腰を振らんか!"番号付き"の分際で、このワシに動かさせる気か?』
ご高齢のお客様が、下から怒声を浴びせる。
ボテ腹やおっぱい、それにケツが重くて動きづらい…でも、しっかりおちんぽ様をシゴかなきゃ。
…私の…元の細くて、軽かったあの体を…返して…
『首絞めるのも疲れたな…なんだこのリモコン?呼吸制限?』
『ははっ!なるほどなァ!こりゃあ良いじゃねぇか!』
あ…ダメ…!そのリモコンのは本当につらいから…!
嫌…!嫌ぁ…!
「やめてぇぇぇぇ!!!」
「ハァ…ハァ…ハァ…ゆ、め…?」
「あ…またやっちゃった…」
私は全身汗まみれで目が覚めた。
見ればベッドは愛液と母乳でぐしょぐしょに濡れ、酷い不快感を伴っている。
大きなボテ腹は、あの頃に比べて肉割れの跡が目立つ様になっていた。
「もう大分経つのに…あ…通知来てる…」
外を見れば、丁度夕焼けが遮光カーテンから漏れ出ている。
仕事に合わせた昼夜逆転の生活は、とうの昔に慣れ切ってしまった。
「今日はドヤ街近くで立ちんぼか…支度しなきゃ…」
あの地獄からの脱走後、私は当然の様に路頭に迷った。
着る物も食べる物も住む家も無い。既に死んだ扱いで身分証も無い。
故に、働く場所もマトモなモノは何一つ無かった。
持っていたのは永続的に火照り、意思に反して男を求める身体とお腹の赤子だけ。
だから皮肉にも、肉欲を向けられ易くなったこの身体を使ってその日を生きるしかなかった。
産んだ子は職場が提供する養育施設に預けているが、その費用は法外なものだ。
やむを得ず借金をしたが、それもまた法外なものだった。
「完済まであと8年半…言っても仕方ないよね…」
首回りと背中に張り付いたままの、私の生命線を撫でながら独り言ちる。
脱走時は必死で気づかなかったが、今ならわかる。
私は”わざと”見逃されたのだ。こうなる事が、わかりきっていたから。
その気であれば、私は自分の足で地獄に戻されたに違いない。
主さ…あの男は、今もどこかで私を見て愉しんでいるのだろう。
「クソッ…」
あの男を思うと毒づく心と反しておまんこがびしょびしょに濡れる。
それが更に悔しさと惨めさを増幅させるが、涙を堪えて支度をし始めた。
肌面積の多い服に身を包み、ピアスを隠すため着れない下着の代わりにニプレスを貼る。
ファンデーションでタトゥーを隠し、見た目だけは綺麗な安いバッグを肩に掛ける。
これで全ての支度は整った。
「…行ってきます。」
私は薄汚く狭い賃貸に言葉を投げ、夜の街へと繰り出していった。
─────────────────
「そこのお兄さん、イイことしない?どう?」
「チッ…」
身体を擦りつける様にして誘惑する。
舌打ちされた。
「あ、そこのお父さん!一発ヌいていかない?口だけなら安くしとくよ?」
「…」
手で輪を作り、舌を出してフェラチオの仕草で誘惑する。
無視された。
「ねぇキミィ?お姉さんとイイことしない?」
「っ…!」
おっぱいを抱える様にして強調し、近づき誘惑する。
走って逃げられた。
─────────────────
「はあ…今日もお客さん、呼べなかった…早く借金返さないといけないのに…」
私は空が白みだした頃、家への帰路に就いていた。
最後に日の光が当たる場所で誰かといたのは何時だっただろう。
そう思うと、過ぎ去った取り戻せない過去が脳裏を過る。
「社長、ムツキ、ハルカ……先生…っ!」
「っ………ぐすっ…………うっ……………」
泣いても仕方ない。そんなことはわかっている。
こんな身体で、こんな状況で、助けてなんて言えない。
言った所で、私の身体は元には戻らない。
とんでもない額の借金も無くならない。
産んだ罪の無い子ども達も、無かったことになんてできない。
それにほぼ間違いなく、あの男の魔の手が皆にまで伸びてしまう。
だから私が独りで生きていくしか…他に道は無いのだ。
涙を拭い歩を進めると、気づけばボロアパートの錆びた階段が目の前にあった。
そして、だぽん、だぽんと揺れる大きな腹を抱えたまま階段を登ろうとした時だった。
「あ、やば...!」
私は思わず薄汚い階段の途中で蹲る。
自室を目前にして、それは来てしまった。
「結局...どのお客様が当てたのか...わからなかった...」
「うっ...!これで、何人目だっけ...?...10と...6?...7?」
結局、その人数すらもう把握していない。本当に、バカな母だ、私は。
今の職場の契約書。それは解釈が巧妙に隠され、避妊と堕胎を禁じる悪魔の契約書だった。
私はその事に気づかず、契約を結んでしまった。
禁則事項について告げられたのは脱走時に胎にいた子を預け、借金が出来たタイミングだった。
「どう、しよう...また、借金増えちゃう...」
預ける場所は職場が用意したそこしかない。
私が金を借りられるのも職場の子会社の金融機関しかない。
だから子が増える度に、借金は嵩んでいくことが確定しているのだ。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!う”ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「イ”………グぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!!!」
出産にも慣れ切っていた。
変えられてしまった身体は、産みの苦しみではなく凄まじいまでの肉悦を齎していた。
アッサリと赤子は産道を滑り落ち、大量の羊水と共に初めて空気に触れる。
そして───
「フギャァァ!オギャア!オギャア!」
とても大きな産声を上げて、産まれた。産んでしまった。
…今、私はなんて事を思ったのだ。こんなことを思うなんて、本当に、最低だ。
「ごめんね…ダメなお母さんで、ごめんね…!」
私は産んだ我が子を抱きかかえ、謝りながら自室に入っていった。