地下に朝日は差し込まない
ドライバーの副作用は皆から理性と羞恥を奪い狂わせた。脳全てを性欲で占められたかのような発情症状の改善は中々進まず、とくに一際副作用が酷い日は熱に浮かされたまま誰ともなく互いに求め合うようになるのが常だった。
熱と狂気に捕らわれ、苦痛すら感じる快楽の只中に彼等はいた。
「んんあッ!ひっ…! ふっ、あははっ……!! すごいっ…! 気持ちいいよっ!! 清長くんっ!!」
「あ゛ぁッ…! は、ぁ…ッ!!! 正宗ぇ…!!」
「はぁっ…あっ…恭太郎ッ…! あっああひっあッ!?」
「はーっ…! はーっ…!! 熱い…!! 熱い熱い熱い!!! 止まらない…ッ!!」
寝室にすら辿り着こうともせずにその場で行為に耽溺する。以前あった仲間との性行為をすることの忌避感は強烈な発情と快楽により麻痺し許容量を超えた性欲にただ突き動かされる。
「イくっ、またイく!!! あーーッ!! やあーーッ!!!」
「うッ…ああああッ…!!! ふっ…あ…!!」
「あーーーーッ!!! きも、ちいいッ!! きもちいいぃぃッ!!はっ、はっ、アッ…!!」
「おっ…くっ…う、お゛お゛ッ…!! だめだ、まだッ…!! まだ全然足りないッ…!」
幾度となく絶頂するたびに脳がぶちぶちと壊れていくような衝撃に襲われる。誰かに突かれる度に思考が白く染まり何もかもが分からなくなって意識が落ちる。そしてまた突かれ、覚醒させられる。
「ははっ…あは…ぁ…! あ、んッ…っ…ひぁ…ッ…!」
「ふっ…ふっ…う゛…ッ…」
「…あ…ぁ……ッ…!」
「ふッ…! ふッ…!! あ゛あ゛ッ…!!」
荒い息とくぐもった声が地下の拠点に響く。もう何時間とまぐわい続けている。節操なく上下や体位を変え相手を変え、言葉も交わす余裕すらなく互いを貪り続けた。極度の疲労すら身体を動かさない理由にならない。
発情の熱は一向に冷めないまま、狂乱は続いた。
地上ではとっくに朝日が登り切った時刻にようやく理性が戻り始めた面々はよろよろと立ち上がりはじめた。どれだけの時間をまぐわいに費やしたのか最早誰一人分からなかった。
「…ふふっ…! 絶対今日こそは不具合直さないとね…!」
「出来る限りそうしてくれ」
「…私も協力しますよ、正宗」
「…空気が澱んでいる……気分が悪い…喉が痛い…」
「灰馬大丈夫か?」
「大丈夫なわけないだろう? 最悪だよ…」
「最悪なのは全員一緒ですよ、灰馬」
「全くだ…」
「ごめんねみんな!! 絶対に何とかするから!!」
もう二度とあんなことをしたくない、全員があんな快楽を知りたくなかったと思っていた。
だが、互いの肉体と性を深い部分まで刻みつけあった全員の身体は熱と快楽をすっかり覚え込んでしまっていた。発情に陥らずとも欲する気持ちを否定できなくなり、互いに求め合うようになるのは時間の問題だった。
皆一様に正気を擦り減らすばかりの戦いの最中、もたらされた快楽は狂気を加速させることになる。