圧倒

圧倒


神永 side in

「さて、お久しぶりですね」

両手を後ろにまわしにこやかにハインリヒがこちらへと話しかけてくる、月明かりに照らされている其の立ち姿には一切の隙がない。

「そうね、学校で戦って以来かしら?」

「ええ、あなたたちは随分と修羅場を潜ってきたようですね」

「貴方の方は随分のんびりしてたみたいね?」

「アッハッハ、手厳しい。こちらもこちらで厄介な相手を片付けてたんですよ?」

そう言って後ろ手から出したのはキャスターの傀儡兵の残骸だ

「街に巣食っていたこれらを駆除してたのは私達なんですよ?」

「…どういうことだ?」

「簡単なことですよ、貴方たちがサーヴァントと戦っている間に横槍が入らないように私たちが綺麗に掃除をしていた、それだけです」

…確かに違和感は感じていた、教会に向かった日以降キャスターの使い魔に襲われたことがなかった。

「でも、偶々遭遇しなかったってことも考えられるわ」

それを聞いた美作が疑問を投げつける、京都とひと口に言っても広いのだ、遭遇しないこともある

「確かに、ですが私たちの方針としてあなたたちのサポートを行いつつ勝機を伺うというものだったのは事実です」

そう言って手の残骸を投げ捨て服の内側からなにかの柄のようなものを取り出した、刃の着いていない剣のような…

「そして、最も勝率が高い状況に持っていくそれがランサーの策です」

魔力を通した瞬間、柄から刃が現れる。アレは…黒鍵!?

「ふふ、お喋りはこれくらいにしましょうか」

そして両手に複数の黒鍵を構えながら戦闘態勢に入る

「あくまで私の役割は足止め、貴方方にランサーの邪魔をさせないこと」

ですので──────死なない程度に留めて差し上げます。

その一言と共に黒鍵が投擲された。

「っ!?」

何とか紙一重で避ける、右腕に直撃はせずとも掠ってしまった。

「神永クン!?」

「大丈夫だ!それより目を背けんな!」

右腕に激痛が走りながらも鞄の中の式神達をハインリヒへと向かわせる、煩わしそうに黒鍵を振るいながら式神を払う。その隙を狙い美作は宝石を投擲する

「Nr. 4 Verspreiding(4番 拡散)!!」

投擲されたサファイアが扇状に広がりながら拡散弾のようにハインリヒへと向かっていく

「───む」

一瞬、表情を歪めながらも飛んできた宝石弾を全て両手の黒鍵で弾く。

「バケモンかよ…!?」

これが、代行者なのか…!?

「ふふ、貴方たちでは私を越えられそうにはありませんね。さて、では決着が着くまでそこで大人しくしていてくださいね」

その言葉と共に俺たちふたりを囲むように設置された黒鍵を起点に結界が貼られる。

「嘘っ!?」

「なっ!?」

「聖堂クラスの結界です、並の魔術師では破壊できませんのでそこでゆっくりしていてくださいね」

ここまで相手にされないのか…!!

…ライダー、もうお前に任せるしかない。

神永 side out

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