圧倒

圧倒


ライダー side in

主殿に秘していた我が真名、このような戦場ではなく月明かりの下で2人きりの際に話したかった。

だがそれ以上にセイバーという恐ろしい難敵を前にそのような期待は木っ端微塵に砕け散った。

───格が違う

セイバーが構えた際の圧と魔力の鋭さ、これを感じて真名を秘したまま戦えると思う程私は自身の能力を驕ってはいない。無論凡百の英霊相手ならば勝てる、そう思えるほど今の霊基は強い。だがそれを上回る実力を持つ英霊が居た。ならば出し惜しみなどできない、それだけの話だ。

故に主殿に進言をする

「宝具を、使います。でなければ勝てません」

我ながら声が震えている、冷や汗などかいたのはいつ以来だ?あの逆落とし以来か。しかしこんな情けない姿の私へ主殿は真っ直ぐこちらを見据え

「わかった、決めてくれライダー」

ああ!主殿はなんてお優しい!武士としてこれ程までに信頼されるのはいつ以来だ!

「っ!はい!」

つい声が強くなってしまったのも仕方ないだろう、ならば信頼を寄せてくれた主殿の期待に応えなければ──!

「話は終わったようだな」

…冷水を掛けられた、主殿との会話が終わって即声をかけてくるとは余韻も何も無い

「律儀に待っているとはな、騎士道精神とやらか?」

ならばそんなもの捨ててしまえと言外に含めつつセイバーへと悪態を吐く

だがセイバーは何処吹く風といったように

「いや、マスターからの命でな『もし仮に相手のマスターとサーヴァントが会話しているのであれば終わるまで待ってやれ』との事だ、曰く『最後の会話を邪魔するほど私は無粋ではない』らしい」

淡々と事実のみを口にした、随分と自信のあるマスターのようだ。確かに彼我の戦力差を客観的に見たらその通りだろう、だがそれはそれとしてムカつく発言だ。

「そうか、ならば其方こそ最後の会話にならなければいいな」

言い返して宝具発動のために構える

「───これぞ、我が伝説のひとつ。我が肉体は鳥の如く水面を舞う!」

魔力を全身に奔らせる、壇ノ浦にて行ったあの跳躍を再現するため低くそれでいて脚に渾身の力を込める。

これぞ我が宝具、そして我が真名を現す宝具なり───

「『遮那王流離譚四景、壇ノ浦・八艘跳』!!!」

この加速は通常の戦闘時よりも最高速への到達速度が早くまた最高速度も常より高い。そして何より変幻自在に飛び回れるのでこの状況ではこの奥義が最も使いやすい。

自身の七つの分身と共にセイバーへと斬り掛かる。

セイバーは淡々と全て自身の肉体で受け止めている。

確か作戦を練っている際に美作殿が言っていたか

『ジークフリートという英霊は竜の血を全身に浴びて無敵の肉体を手に入れている』

成程、故にあの夜の太刀が通らなかったわけか。

そして今も尚攻撃を自身の身のみで受けている。そして私の攻撃の合間合間に繰り出される一太刀は全てが必殺と言ってもいい、一撃でも喰らえば致命的だ。

「は、ははは!!なんという絶技!それこそが竜を倒すに至った剣の技か!」

素晴らしい、だがなんて実直な剣だろう。

───故に、隙も読み易い。

「貰った!!!」

『だけど唯一無敵になっていない部位があるの、それが背中。菩薩樹の葉がかぶさって人としての部分が残ってしまったのそこを突かれて彼は死んでいるわ』

背中にある唯一の弱点、そこを突く───!

「甘い」

その一言と共に私は壁へと叩きつけられた。

ライダー side out


神永 side in

「───は?」

それしか声に出なかった、あれだけの速度と手数で斬りかかって尚セイバーには傷一つ着付いておらずライダーが吹き飛ばされた。

「───ごブッ、ゴホッ」

壁に叩きつけられた衝撃かあるいはセイバーの一撃を肩の鎧で受けたにもかかわらず衝撃が内蔵にまで届いたのかライダーは吐血をしている。

「俺の背中を狙っているのはわかり易かった、故にそこ以外は守らずに突いてくるの待った、それだけだ。」

セイバーは一歩、また一歩とライダーへと歩み寄っていく。ライダーは動こうにもダメージが深刻なのか逃げることすら出来ない。

「─あ、やめ」

俺が口を開いた瞬間、セイバーからとてつもない圧を感じた。肉食獣に睨まれた鼠というのはこういった感覚なのだろう、圧倒的上位者に狙われたモノは状況を把握しきれず動きが止まる。そして逃げる或いは何も出来ずに死を待つかの二択だ。もしくは

「あ"、主殿に殺意を向けだな"…!」

第三者による妨害によりそちらに標的が移るかだ。

ボロボロのライダーが太刀を支えに立ち上がった、少なくとも左肩の鎧は砕け散り左半身はボロボロ、まともに戦えるような状態では無い。だが

「───我が将には死んでなお立ち続けた男がいる」

「ならば、生きている私が倒れる訳にはいくまい…!」

その一言と共にライダーは太刀を構える。そして

「よく言ったぜ!ライダー!!!」

壁を結界ごとブチ破り、ゴールデンが乱入してきた。

神永 side out

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