國神×枕はないけど乱暴されたことはある雪宮

國神×枕はないけど乱暴されたことはある雪宮


ぽたぽたと汗が落ちてくる。顔をしかめ、目を閉じた國神が、雪宮の上で動いている。強制されているせいか、ずいぶんと苦しそうだ。「嫌そうだ」というのとは違う。苦しんでいる。好きでやっていることではないから、そうなるのも当然なのかもしれないけれど。抱く側に回ったことのない雪宮には、その苦しみが想像できない。

”あのとき”はどんな感じだったっけ、と考えるが、そのときの記憶はぼんやりと靄がかって細部が思い出せない。覚えているのは下卑た笑みと、固く冷たい床の感触と、殴られた頬の痛みと、あまりに苦しくて胃の中のものをぶちまけたこと。

きっと、自分と相手しか知らないあの日の出来事。両親も何かされたことには感づいているが、何をされたかは知らない。

経験がある、と誰かに口にしたのは初めてだった。枕営業というのは嘘だが、誘われたことがないわけではない。芸能界の闇は本当にあったのだ、と驚いた。その相手に、マネージャーは烈火のごとく怒っていたが。

触れ合う部分が汗ばんで熱い。自分の肌もそうなっていることをふしぎに思った。二人で飲んだ薬のせいだろうか? それなら快感を得ていてもおかしくはないのに、圧迫感と熱を感じるばかりで雪宮の体は反応しない。

こっそりと繋がった下半身を覗く。ひっくり返った蛙のような体勢の自分、間抜けに揺れる萎えたままのそれ。そして開かれた両脚の間に、國神のものがずるずると出入りしている。大きいなあ、よく入ったなあ、と他人事のように思った。

動きが止まる。仰ぎ見ると、國神が雪宮の顔をじっと見ていることに気づいた。

「だいじょうぶ、平気だよ」

雪宮は努めて穏やかに微笑んでみせる。事実、平気だった。塗りこめられたローションのせいか、丁寧に慣らされたせいか、圧迫感はあっても痛くも気持ち悪くもない。少し股関節は軋むが、押さえつけられてもいない。呼吸は少し速いけれど、息苦しくはなかった。

「上手だね」

比べるものなど”あのとき”の相手しかいないが、”あのとき”のような苦痛を感じない。國神は初めてだと言っていた。才能があるのかもしれない。すごいなあ、ちっとも痛くないよ、上手だね。ぽろぽろ言葉をこぼしすぎて、気づけば國神はきゅっと唇を噛んでいる。

面白くないことを喋りすぎた。雪宮が口を閉じると、腰を掴んでいた手が離れた。國神は黙って身を倒し、シーツに両手をついた。それから雪宮の首筋に顔を埋めて、聞こえるか聞こえないかの声で、悪い、と一言。

律動が速くなる。國神の肌は汗で湿って、何より熱い。快感は遠いが、雪宮の肌も熱く、溶けあってしまいそうだった。

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