国際警察クダリの仮説

国際警察クダリの仮説


”『ゼロデイ』の黒幕”が存在する可能性を提示するクダリさんと

その仮説を聞くケシさん(ポピーちゃん)の会話イベント


(クダリ視点)



「……やっぱり これじゃ 説明が つかない」


ある日の夜、考えた仮説をホワイトボードにまとめながら独り言を呟く。

このパルデアに来てからはずっと解放軍、調査隊、スター団……

三つの組織を巡って『ゼロデイ』についての聞き込みを行ってきた。

大穴からパラドックスポケモンがやってきたこと……

そのパラドックスポケモンからみんなを守るために

七人のジムリーダーが犠牲となったこと……

『ゼロデイ』に起きた多くの悲劇を知った。


「みんなが 嘘を ついているとは 思えない

だけど あまりにも 話が 噛み合わない」


国際警察としてパルデアの調査を進め、『ゼロデイ』のことを知れば知るほどに

過去に調査した情報との矛盾が見つかり、新たな疑問が生まれていく。


(ぼくが 調査した 限り…… パラドックスポケモンは

古代と未来 それぞれで 縄張りを 争ってる

でも 『ゼロデイ』に 現れた パラドックスポケモンは

お互い 争うことなく 人々を 襲ったと みんなは 言ってる……

縄張り争いは おそらく ポケモン自体が 持つ 本能のはず

ポケモンが 本能に 抗う状況…… 考えられるのは……)


ぼくが思案に暮れていると、『コンコン』とノックの音が聞こえた。


「クダリさん いらっしゃいますか?」


この声は部屋を貸してくれている解放軍のリーダー、ケシさんだ。

ぼくは扉を開け、彼女を部屋に招き入れる。


「やあ ケシさん ぼくに 何か 用だったかな?」


「まだ 起きているのが 心配になって 様子を 見に来たのです

その目の下のクマ…… 近頃 ほとんど 寝てないのでは……?

そろそろ 休まれては どうでしょうか?」


彼女にそう言われてふと思い出す。

そういえばここ最近、一日に三時間くらいしか寝てないかも……?


「……心配かけて ごめんね

今 どうしても まとめて おきたい 仮説があって……

いい機会だから ケシさんにも 聞いて ほしい」


「……わかりました

お話が 終わったら しっかり 寝てくださいね?」


ぼくは二人分の紅茶をいれると、ケシさんに考えを話し始めた。

彼女は真剣な顔でぼくの話に耳を傾けてくれた。


─────────


(ここからケシ(ポピー)視点)


「……『ゼロデイ』では 互いに 争うことなく

古代と未来の パラドックスポケモンが 共に 行動していた……

なるほど 確かに 言われてみれば おかしな 状況ですね」


「最初は みんなの 思い違いかもって 考えたけど……

ぼくが 聞き込みをした人 みんなが 口を揃えて そう言ったんだ

嘘をつく 意味もないし これは 本当のこと なんだよね?」


「……ええ わたしも この目で ハッキリと 見ました」


そう答えるわたしの脳裏にはあの日の光景が蘇る。

思い出したくもない日だが、忘れてはいけない日……『ゼロデイ』。


「……そうなると 考えられる 可能性は 一つだけ

『ゼロデイ』は 人為的に 起こされた 出来事である 可能性だよ」


「……! それは つまり このパルデアに

『ゼロデイ』を 引き起こした

黒幕が 居る という ことですか……」


クダリさんから告げられた恐るべき可能性……わたしは思わず息を呑んだ。

まさかこのパルデアに裏切り者がいる……?


「うん…… 正直 ぼくも 信じたくは ないけどね……

でも この仮説が 正しければ みんなが 『ゼロデイ』に 見た物と

ぼくが 訪れてから 見た物が 噛み合わない 矛盾は 解消されるんだ

黒幕は 何らかの 方法で パラドックスポケモンを 操り

パルデア地方に 『ゼロデイ』を 引き起こした……

その後 操られていた パラドックスポケモンは 元に戻り

本能のまま 縄張り争いを 始め 今に至る……

ね? これなら すべての 矛盾に 説明が つくでしょ?」


「それが 本当だとしたら 黒幕は

何故 『ゼロデイ』を 引き起こしたのでしょう……?」


「……それは まだ わからない

ただ一つ 言えるのは ぼくは その黒幕を 決して 許せない ということだけ」


そう語るクダリさんの表情はいつもと変わらない笑顔なのに……

どこか怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。


「……ぼくの 仮説を 聞いてくれて ありがとう

それじゃ おやすみ ケシさん」


クダリさんはそう言い残して、椅子に座ったまま気絶するように眠ってしまった。

わたしは空っぽになった紅茶のカップを片づけると

眠っているクダリさんに毛布を掛け、静かに部屋を後にした。


「そろそろ わたしも 寝ないと……」


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