因縁
※原作ガン無視、ヴィオラさんと婦長のポジション入れ替えました。原作の展開どうしてくれんねん案件ですが許して
「やはりお前か」
決戦渦中の情熱の島、硝煙と悲鳴沸き起こる中。自らの退廃的にして崇高な人生の目的である「smile」に、突然と湧き出た「小虫共」。ドフラミンゴは苛立ちも過ぎたのか寧ろ上機嫌であった。彼は見つけたのだ、「得物1匹」を。
「 “鋼鉄の天使”」
「得物」はまるで動けない。確かにドフラミンゴが長年頼ってきた最高幹部であるトレーボルを倒す実力があったものの、今や連戦続き満身創痍のようだ。睨み、敵意を示してはいるが、彼女の目の前までゆっくりと近づいても指一本動かせない。ドフラミンゴは幼少期に「家族(ハリボテ)」とピクニックに行った際の狩りを思い出した。猿ぐつわに捕らわれた狐を思い出した。
「チンケな策を弄して・・・・・・随分と盛り上げてくれたなぁ」
「ドフラミンゴ・・・!」
近くに落ちてあった巨大メスを拾おうとするその手を、ドフラミンゴは容赦なく踏みつける。
「うっ・・・!」
「ちょろちょろとしつこいんだよ、化け狐。工場の破壊からコロシアムの制圧まで・・・・・・お前にも“ゴッド”と同じく星5つでもつけてやりたかったがな」
手を踏みつけていた右足を離し、そのままナイチンゲールを瓦礫の方に蹴り飛ばした。
ガシャン!!
「先に他の奴等に殺されてちゃ面白くねェからな。デザートは最後まで取って置くものだ」
彼女は動けず項垂れたままだ。意識は残っているようだが、そうでなくては面白くない。
「フッフッフッ・・・・・・何だ、その目は」
「お前は、絶対に・・・」
「絶対に?・・・フッフッフ!口は達者だなァ?」
「絶対に、許さない・・・・・・!!」
「そんなに憎いか?お前の故郷を壊滅させるように手引きしたおれが」
彼女の首根っこを掴んだ。
「知ってるンだろう、二年前の第二次北の海戦争の事実を」
「何せシュタンダルテにはsmileの原料であるsadを精製する資源が満ちていたのでな。資源と武器を交換する、正当な交易というわけだ。ついでに奴等にもおれの計画に噛ませてやろう、と約束しただけだ。天上金の半額化を条件にな!」
「お前の所属していた部隊、お前の住んでいた街、全てが粉々になった。クリミアは戦争に勝ったとはいえ復興のために天上金も支払えず、もしかしたら政府からも除名されるかもなァ」
「おのれ、貴様・・・・・・!」
「その正当な復讐の刃、か」
ドフラミンゴのサングラスには彼女のメスが映っている。
「悔しいだろう?結局どれ程足掻いても、現実はこうなるのさ」
「待ちなさい!」
突如、第三者の声が。
「レベッカ!」
「ホゥ・・・」
「今すぐフローレンスさんを離して!」
レベッカはコロシアムで罵声を浴びていた時の甲冑とは違い、あの「忌々しい女狐」の衣装を身につけている。成程、愚かな大衆が騙されるわけだ。少なくとも、甲冑を身に纏えば顔は判別不可能であり、それに髪の色も似ている。
「いけません、ここから離れ・・・」
「丁度良い、お前にも機会をやろう」
ドフラミンゴが左手を動かした。放たれた糸はレベッカに絡み、彼女を文字通り支配した。右手からの糸はナイチンゲールの両腕を縛り上げた。
「洗礼の機会だ。今後、誰かを殺してでも生き残らねばならない時もくるだろうからな」
「なッ・・・」
「やめ、やめて」
ドフラミンゴの脳裏には、あの日「紛い物」の父を撃ち抜くあの情景が。ナイチンゲールの脳裏には、あの日己を逃すために政府に銃口を向けた上官の姿が。同時に浮かび上がった。
(そうだ、お前も抱け、あの感情を。あの銃を握っていた掌に残ったあの重さを与えてやろう)
(ダメ、これではあの日と同じ。レベッカに大きな後悔と絶望を、救えなかった悲しみを与えてしまう)
「レベッカ」
落ち着いた、静かな声だった。
「・・・目を閉じて。力を抜くのです。ドフラミンゴの能力に、抵抗するのです」
「無駄だ、そんなことをしたところで・・・」
レベッカを操る糸は自由自在。彼女はそのまま大剣を振り上げた。
「い、いや、そんな」
「さぁ、そのまま来い・・・・・・!」
「レベッカ、私は貴方を恨みはしません!このことは、忘れてください!」
「・・・シャンブルス!」
「フンガァ~~~~!!!!」
突如現れたルフィの額が、レベッカの刃を弾いた。続いて能力を用いローも出現した。
「麦わら、ロー・・・・・・!!」
「ルーシー!」
「おれの仲間に何すんだァ!!!お前は・・・」
「二人とも下がってろ、ここは・・・」
「「おれがヤツを倒す!!」」
「フッフッフッフッ・・・・・・良いだろう、やはり殺すならお前等からだ!」
『逃げろ、フローレンス!ここはおれが稼ぐ!』
ナイチンゲールは、彼を思い出さずにはいられなかった。あの日逃げ出してからずっと続いた逃避行。覚めなかった悪夢。自分を責め続けた夜。
-だが、夜明けは近い。解放の刻は、すぐ側だ。