・四月バ会議

・四月バ会議


壁も床も天井も全て、不気味なほど白い部屋。その中央には円卓があり、10つの椅子が並んでいる。そのうち8つは色とりどりの髪色をした少女達によって埋められている。それがこの部屋にある全てだった。


「そろそろ始めましょうか。皆さんようこそ、毛色会議(仮称)へ」


黒鹿毛の少女が開始を宣言すると、早速手を挙げたのは芦毛ツインテールのウマ娘だ。


「二つ質問いいかしら」


「はい、どうぞ」


「1、あたし達は何故ここにいるのか。2、その空席二つはなんなのか」


「順番にお答えします。1は知りません、気づいたらここにいました。2については片方は都合がつかないため、もう一人は体調不良です」


「そう…まあいいわ」


若干回答に不服そうながらも、とりあえず引き下がることにした様子で、黒鹿毛ウマ娘は進行を続ける。


「さて…今回の議題はずばり、お相手のことをどう思ってるかです」


そう言われた瞬間、面々はにわかにざわつく。


「私から時計回りに言っていきましょうか。えー、私は……なんとも思っていません。そういう条件だったから仕方なくシてあげているだけです」


「ウソ、やね?」


「えっ…!?いや、その……」


「カマ掛けただけやのに吃り過ぎですよ」


クスクスと笑う栗毛の少女に恐ろしく早いジャブを食らわされ、狼狽えてしまう。その瞬間、彼女は全員の警戒対象となった。


「そそういうあなたはどうなんですか」


そう聞き返されると、顎に人差し指を当て右上に視線をやり、愛らしい仕草で考えごとをする。


「ウチは…せやなぁ、あの人のこと好きですよ。オモチャとしてやけど」


「「お、オモチャ……」」


鹿毛と白毛の小柄なウマ娘達はその答えに戦々恐々とする。比較的純粋な彼女たちには理解しきれないものとして映ったようで。


「……では、次」


「あたし?うーん、相手実の弟なのよね…。弟だってことには変わりないんだけど、まあウマ娘になる前よりだいぶ素直に話せるようになったかなって気がするわ」


芦毛のウマ娘がそう答え、次は?と目配せすると青毛のメイドが口を開く。


「んー、御主人様は御主人様ですよ。無自覚攻め変態の御主人様です」


「確かにあの方、冴えない見た目に反してなんというか、激しい…ですわよね」


「ねー?」


メイドとその隣にいる尾花栗毛の令嬢は相手が同じであり、二人してこの場にいない男を好き放題に言う。


「えっと、次は自分…ですか?自分はその…大好きな先輩で、恋人です。えへへ…」


「あら、見せつけはるなぁ」


「砂糖吐きそうだわ」


これまでのウマ娘と違って惚気る鹿毛ウマ娘の甘い雰囲気に、まるでケーキを食べすぎたときのような重たさを感じる会議メンバーたち。


「次アタシでよか?アタシはうーん、あんまり考えたことないけど……一緒におったら安心するような気がするっちゃんね」


月毛ギャルの回答にいよいよ前半とは空気がガラリと変わって、最後の白毛ウマ娘へとバトンが渡る。


「わたしも…あんまりそういうことは考えないので、よくわからないのです…。でも、彼の暖かい腕の中に抱かれるのは、心地が良いのです」


「ここにいる全員分は回答が出揃いましたね」


前半と後半で雰囲気があまりに違うためなんとも言えないムードになる。


「では、次の議題ですが……」


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(ジリリリリ……)


「はっ……なんだ、夢か」


目覚まし時計で事故をなかったことにするトレーナーのようなことを言いながら、目が覚める。隣を見るといつものように下着姿で眠る黒鹿毛ロングのウマ娘がいて。


「それにしても…なんだったんだろうな」


こいつを含めた多数のウマ娘が、何やら会議のようなものをしている夢だったが。

するともしかして、他のメンバーもウマ娘化した元あにまん民だったりするのだろうか?


「……まあいいか」


夢で見た内容というのは、記憶しようと思わなければすぐ忘れるものだ。今もまた、別に記憶するようなものでもないと思ったので、夢の内容は朧気になっていっている。


「今日も1日、頑張るぞいっと」


そう言い終わってから今日が休みなのに気づいて、気合い入れた意味ないじゃんと思う俺であった。




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