喧嘩ップルの海兵ルウタ1/2
Nera
世界の治安を維持する海軍本部の軍艦で女の怒鳴り声が響き渡る。
何事かと海兵たちが声の主の元へと駆けつけた。
そこには仁王立ちする准将と正座して頭を垂らしている大佐が居た。
「ルフィ!!真夜中の食糧庫で摘まみ食いをしてたでしょ!!」
腰に両手を当てて大佐を怒鳴るのは、軍艦の艦長であるウタ准将である。
ルフィと呼ばれた大佐は申し訳なさそうな顔をして黙り込んでいる。
「あんたがやらかした事について理解してるの!?」
「食糧の貯蔵庫を漁るなんて重罪よ!!」
例え大佐という高級士官であっても軍法会議どころか下手すれば死罪。
さすがに自覚があるのかウタの説教を反論する事無く受けていた。
しかし、17歳の幼馴染が反論しないせいで更にヒートアップしてしまった。
「何か発言したらどう?何故深夜にあそこに居たの!?答えなさい!!」
口では怒っているがウタは何度もルフィを無罪にしようと試みていた。
何故ここまで公開処刑のように説教しているかというと…。
『このままじゃルフィと離れ離れになっちゃうじゃない!!』
事の発端は食堂を通りかかった海兵が物音に気付いたのがきっかけだった。
別室で朝飯の仕込みをしていた料理長を呼んで2人が確認に向かうとルフィが居た。
それだけなら良かったのだが、不審な行動をしているせいで怪しまれてしまった。
尉官時代に食料の摘まみ食いの前科があるせいで現行犯でお縄についた。
『せめて最優先で私に一報入れてくれればよかったのに!!』
幸いにも料理長やコックたちによると喰われた食材は無いらしい。
なので准将権限で隠蔽しようとしたがよりによって大尉に報告が行ってしまった。
ウタ准将とルフィ大佐の直属の上官であるサカズキ大将から派遣された将校。
お目付け役の彼にバレてしまった以上、どうしようもない。
『ああ!!書類をチラつかせないで!!!』
大尉は書類が入ったケースを魅せ付けながら彼女の傍に居た。
若干19歳にして准将というエリートコースに居るウタを見定めるように見る男。
自分の対応を監査していると見抜いたウタはどんどん精神的に追い詰められた。
「ルフィ!!私はあんたの事を信じたいの!!だから状況説明をしなさい!!」
「……言えねぇ!」
「このバカ!!なんでよ!!」
ルフィを無罪にしようとしてもそれを証明する証拠が食料が減っていない事くらいだった。
むしろ前科があるせいでどう足掻いても彼を無罪にする事はできない。
厳命して事件の整理が付くまで大尉にサカズキ大将への報告を待ってもらっている。
ただの時間稼ぎでしかなく、このままではルフィが軍法会議に連行されるだろう。
「ごめん…言えない」
「もういい!!あんたは有罪よ!!罰として昼飯は抜き!!」
「ええぇ!?」
「ええじゃない!!」
ルフィと喧嘩しても2時間後には頭を下げて仲直りをすると決めているウタ。
既に説教から2時間半が経過しており、さっさと彼に頭を下げたかった。
しかし立場や環境のせいでそれができずに彼女はどんどん化けの皮が剥がれて行く。
「状況把握と原因究明ができるまであんたはずっと雑用よ!!いいわね!!」
ルフィは幼馴染の言葉を肯定するように頭を下げただけで反論はしなかった。
呆れた大尉がウタに発言しようとするが、逆にウタに睨めつけられて黙り込んだ。
「私からルフィを引き離す気なら八つ裂きにする」と言わんばかりの顔だった。
「はい!!あんたたち!さっさと持ち場に戻りなさい!!」
「は、はい!!」
集まって来た外野を無理やり解散させたウタ准将。
足が痺れて動けない幼馴染が回復するのを待って次の行動に出た。
「はい、雑巾と水が入ったバケツよ!」
「何をするんだ?」
「甲板を雑巾がけにして磨いておいて!」
さっそく雑用にしたルフィを甲板の掃除に駆り出した。
こんな事をしてもルフィの重罪が無くなるわけではない。
現に大尉は苦言を呈したいが、ウタに牽制されてできなかった。
『さすがにこれくらいなら大丈夫でしょ』
罰則を与えて少しだけで罪を軽くしようとした准将。
若干19歳で将軍になってしまった彼女の認識は世間とズレている。
それでもルフィと一緒に居る為ならどんな手でも使うつもりだ。
「なんでだよルフィ!?どうしてこうなるの!?」
しかしルフィはやらかしてしまった。
彼女の視線の先には木箱や樽がバラバラに散乱している。
そして海水でびしょ濡れになったルフィが傍に安置されていた。
これにはウタが両手を顔を抑えて9歳まで精神が退行しまうほど衝撃的だった。
「ウタ准将、あなたの行為は何の意味もありませんよ」
大尉が書類に何かを書き込みながら上官に向かって発言してくる。
NO.3であるが実質、部隊の監督者でありサカズキ大将の発言に近い存在。
始末書や軍法会議の書類どころか、更に追加される勢いである。
「しょうがない!私の軍靴を磨いておいて」
「それならできるぞ」
「よし決まりね!早くやって!」
さすがに幼馴染の軍靴を磨くのにやらかさないだろう。
そう思ったウタは適当な木箱に腰掛けてルフィに靴を磨かせた。
ルフィは生き生きとして汚れた雑巾でウタの軍靴を磨いていた。
それをにこやかに微笑んだウタとそれを見守る海兵たち。
「って!さっきの雑巾で私の軍靴を磨くな!!」
「痛てぇええええ!?」
さすがに油汚れや煤が付いた雑巾で靴を磨かれればウタも激怒する。
愛でぶん殴られたゴム人間は痛みで甲板を転げ回った。
真面目にやっているのに怒られたルフィは徐々に拗ねていった。
「だって他に拭く物なかったし…」
「だったら言いなさいよ!!わざわざ汚れた雑巾で拭く事ないじゃない!!」
さすがに言葉足りずだったかとウタは反省したいが立場のせいでそれができない。
『このままルフィに嫌われていくのね』と半ば諦めた様子で開き直り始めた。
「逆に訊くけどあんたは何ができるのよ?」
「残飯処理!」
「反省していないから却下!」
「ええーーーーーー!!」
「ハァ、なんでこうなるのかな…」
ルフィに期待した自分が馬鹿だったと言わんばかりにウタは溜息を吐いた。
「ウタ准将!」
「…何か用?」
「……いえ、なんでもありません」
「そう、それならいいけど」
さすがに意味がない事をしているウタに提言しようと大尉が近づいた。
するとウタは半ば脅迫のように覇気で指を武装硬化して牽制した。
発言すれば超人的な体技の1つ“指銃”で突き刺されるという事で黙るしかない。
もちろん、この行為は減点対象であり彼女が書く始末書に追加される事となった。
「ウタ!!おれの一発芸に満足したら許してくれ!」
「はぁ!?なに勝手な事を言ってるのよ!?」
「だってよ!昼ご飯を抜いたらおれは動けなくなっちまうんだ!」
「それはそうだけど…」
「だから満足したら昼ご飯だけでも許してくれ!!」
動き回る関係かルフィの燃費は悪い。
一食抜くだけでも餓死しかねない状況になる。
幼馴染としてそれを知っている彼女はルフィの意見を聞き入れようとした。
「しょうがないわ…」
「さすがにそれはおかしくないですか?」
一発芸で罪が許されるなどあってはならない。
明らかに海軍の規則を逸脱したウタに大尉はついに苦言を呈した。
「海獣だああああああ!!」
「総員戦闘配置!!」
ちょうどその時に海から体高15m級の海獣が飛び出してきた。
ウサギの耳に鋭い歯から暫定的に兎魚と名付けられた海獣。
たまたま近くを通りかかった軍艦を襲撃しようと試みた。
「嵐脚“2分音符<ハルベノーテ> ”!!」
海兵が応戦しようとした矢先、海獣の首が吹っ飛んだ。
ウタが放った【六式】という体技の1つである“嵐脚”で首を刎ねたようだ。
頭という司令塔を失った海獣は生きる事を放置して海へと沈んで行った。
「…ごめん。聞こえなかったけどもう一度お願いしても良い?」
「いえ、なんでもありません」
「そう、それならいいわ」
海獣を5秒足らずで“飛ぶ斬撃”で瞬殺したウタが大尉に聞き返してきた。
完全に実力行使で脅迫してきた以上、大尉は黙るしかなかった。
海軍本部に所属する海兵の階級は、基本的に強いほど上に行く事となる。
19歳で准将としての役職を持つ彼女は伊達ではないのだ。
「じゃあ、一発芸をやってみなよ!結果次第では昼ご飯は許してあげる!」
「ししし、今からおれは雪を降らせるぞ!」
「へえ、ゴム人間が!?やってみてよ!」
ゴムゴムの実を食べたゴム人間が雪を降らせる。
明らかに不可能な事だと理解しているウタは微笑みながら彼の芸を待った。
海獣が撃破されてやる事がなくなった戦闘要員たちもそれを見守った。
「ゴムゴムの~~粉雪!!」
ルフィが頭を指で掻きむしると白い粉が大量に降って来た。
確かに粉雪に見える。
「すごいわルフィ!!確かに粉雪を降らせてる!!」
「だろう!!もっと降らせるぞ!!」
両手を合わせて頬に当てて純粋にウタはルフィの芸に喜んだ。
さきほど怒っていた反動か可愛く見えた幼馴染を更に喜ばそうとルフィは尽力した。
調子に乗ったのか甲板を真っ白にするように粉を撒き散らしていく。
「…って!フケじゃないの!!なんでこんなに頭を洗って無いのよ!!」
「痛ぇえええええええええ!?」
ルフィが降らした雪の正体は頭皮の角質や油が固まったフケであった。
芸としてはウタは満足したが、結果としては更に怒らせる事となった。
「なんだよ!ウタだって満足したじゃねぇか!殴るなよ!!」
「うるさい!!どんな頭の洗い方をしてるのよ!!」
「おれの勝手だろう!!」
「義姉ちゃんとしてそれは見逃せない!!」
理不尽に殴られたと思ったルフィはようやくウタに抗議した。
負けじとウタも反論して口喧嘩で収まらず手が出そうになりつつある。
「やるか!?」
「やる気!?」
軍艦に乗っている部下全員が束に掛かっても絶対に勝てないほどの実力差がある。
そんな存在が本気で喧嘩しそうになって部下たちは左往右往しかできなかった。
「うおおおおおお!!」
「やああああああ!!」
真っ先に仕掛けたのはルフィだった。
ウタに飛び掛かろうとするが回避された挙句、脚を引っ掻けられた。
足払いをしたウタは、仰向けに倒れ込むルフィを甲板に押し倒した。
「クソ……」
「出たぁ!負け惜しみィ!!」
抱擁さえすればウタが大人しくなるとルフィが行動したが無駄だった。
逆に返り討ちにされてウタに耳元で囁かれて大人しくするしかない。
「あっ…」
ルフィの身体に覆い被さるようにウタが乗っており彼の顔の傍に彼女の頭があった。
そのせいでウタの股間にはルフィの股間にある膨らんだ部位が当たっていた。
思わず彼女は嬌声を漏らして一時的であるが全身の力が抜けた。
「うっ…」
ルフィも柔らかい双丘が当たっており鼻が安らぐウタの匂いを嗅いでしまった。
異性として認識する思春期まっしぐらの年齢の2人は幼馴染の肉体を味わっている。
「おっ!ついにおっぱじめるのか!?」
「脱げ!脱げ!!」
「やっちまえ!!」
「結婚する前に既成事実を作るなんてさすがだな!」
仰向けに倒れるルフィ大佐の股間にウタ准将が跨れば完全に情事となる。
色ボケ軍曹を筆頭に興奮した部下たちが歓声をあげる。
「私が勝ったんだから教えてよね?食糧庫で何をやってたの?」
「……言えねぇ」
「あっそ」
相変わらずルフィは真相を話さないのをもどかしく思うウタ。
それはともかく2人はまんざらでもないのか。
お互いが幼馴染を異性として認識させる部位が当たっても抵抗はしなかった。
むしろ、名残惜しいようでもう暫く触感と嗅覚を味わおうとしていた。
『それにしてもうるさいわね…』
部下たちがやたらと騒いでいて注意しようかと思った。
そしてウタは気付いてしまった。
仰向けに押し倒したルフィの股間に跨れば情事になっちゃうと…。
「違うの!!私はそんな気は無いの!!」
慌てて立ち上がって赤面しながらウタは必死に弁明をした。
しかし部下の興奮を止める事ができず徐々にウタは苛立っていく。
「「「「やれ!やれ!やれ!」」」」
「うるさい!!」
逆上したウタは、どこから取り出したのか釘バットを構えた。
兵士たちが『しまった!やらかした!?』と思っても後の祭り。
上官侮辱罪で色ボケ軍曹を筆頭に兵士がかっ飛ばされて宙を舞った。
「なにやってんだあいつら?」
メインマストで見張りをしていた海兵は惨状を見下ろして呟いた。
数十人が戦闘不能となっており、息を切らした准将が釘バットを甲板に降ろす。
「准将!!」
「今度は何!?」
「昼食のお時間であります!」
「ありがとう」
昼食を知らせて来た伝令にウタは感謝の言葉を告げた。
それを聴いて嬉しそうに立ち上がったルフィは全速力で走り出した。
「待ちなさい」
「クソ…」
生命帰還で腕を伸ばしたウタに背中を掴まれたルフィは素直に立ち止まった。
ウタを怪我をさせたら元も子もないからだ。
「なんですかあれ?ウタ准将もゴム人間だったんですか?」
「知らんのか?准将は生命帰還の達人だぞ」
「ここだけの噂だがあの奇跡なプロポーションは生命帰還で誤魔化してるって話だ」
新入りは准将の腕が2m伸びて大佐の動きを止めた事に素直に驚いてしまった。
通信兵の1人がウタ准将の腕が伸びた真相を告げると傍に居た男が更に告げる。
たまたま通りかかった一等航海士の曹長は、准将の噂を小声で囁いた。
「聞こえてるわよ」
「「「すみませんでした」」」
実際に生命帰還で筋肉を誤魔化しているウタは他人事ではない。
ただ、その情報がファンに漏れるのを嫌う彼女は口で牽制をした。
謝罪して口籠った部下3名を満足してルフィを引き摺るように食堂へ向かって行く。
当のルフィは泣きそうな顔をして部下3名に向かって手を伸ばしながら連行された。
「何か言いたそうね?」
「ごめん、食べさせてくれ」
「あーあ、ルフィがやらかさなきゃ海獣のソテーが食べれたのにね」
ウタはお腹を空かせたルフィに見せつけるようにソテーを目の前に置いた。
お互いが向き合える席に座っており、1人は勝ち誇りもう1人は泣きそうだった。
「今からでも遅くないわ。あの夜の真相を話しなさい」
「おれを信じてくれ…」
「前科がある奴なんて信用しろというのは無理よ」
ソテーの肉をナイフで切り裂くと肉汁が溢れて来た。
今日はバジルソースを使っており、香ばしい匂いが2人の鼻をくすぐる。
一口サイズに切り取った肉を口に含んで咀嚼し美味しそうに味わう准将。
無念にもルフィはそれを見る事しかできない。
「……何か言いたそうね?」
「今日の8時に話すから食べさせてくれ…」
何故20時まで待たないのかウタには理解できなかった。
大尉は相変わらず書類を持ってきており、ウタは現実から逃げられていない。
それでもルフィの意志を見て少し考え込んだ後、溜息を吐いた。
「本当に全て話してくれるの?」
「ああ、絶対に」
「しょうがないわね。私の料理を分けてあげるわ」
コックたちがルフィにソテーを持ち出そうとしてコケそうになった。
それもそのはず、大尉に監視されているウタはそれができなかった。
妥協して自分の料理を分けるしかルフィに食する事はできない。
「いいのか?」
「部下の失敗は上司の責任だからね。原因究明ができるなら安いものよ」
さっさとルフィを無罪にして仲直りしたウタは必死に私情を堪えていた。
せめてルフィに嫌われない様に自分を罰して叱るだけの存在ではないと表明する。
彼女はフォークに肉を指して幼馴染の顔に近づけた。
「ほら食べさせてあげるから口を開けなよ」
「ありがとうな!あーん!」
「ほらあーん!」
席から立ち上がったルフィはフォークを口内で取り込んで肉を抜き取った。
優しくフォークが口内から去った瞬間、存分にルフィは肉を味わう。
「うめぇええええええええええええ!!」
「でしょ。海獣の肉とバジルソースがマッチして食感が癖になるよね」
「お代わり!」
「はいどうぞ」
ルフィは皿に肉を欲しがってウタは犬に餌付けをするように肉を次々に与えていく。
甘やかされた犬は、主人に甘える様に抱き着いてウタは優しくルフィの頭を撫でた。
「ルフィ、マナーがなってないわよ」
「だってよ」
「マナーは敵を作らない為の手段なの。ちゃんとマナーを守りなさい」
そう言いつつもウタこそ食事のマナーを守っていなかった。
ルフィに向けて肉を与える行為自体が出禁レベルである。
バカップル過ぎて昼食を食べていた海兵たちが気まずそうに食べて去っていく。
飛び火して巻きまれるのを避けた影響で食堂は閑散としていた。
「ぷはっ!食った食った」
ルフィが満足そうに腹をさするのを見てウタは両手で顔を隠した。
またしても彼を甘やかしてしまったと後悔している。
現に大尉が『何やってんだこいつ』と言わんばかりに無言で睨んでいた。
「しょうがない。書類でも処理しますか!」
ヤケクソニなったウタは山積みの書類を片付ける事にした。
「おっ!おれは雑用から解放されるのか!?」
「無理に決まってるでしょ!あんたは執務室で筋肉トレーニングよ!」
ルフィは解放されるのを期待したが無理であった。
ウタに掴まれて引き摺られながら食堂を後にした。
2人が部屋を出たのを見届けた料理長と調理班はなにやら相談を始めた。
まるでウタに隠し事をしているように紙でやり取りをしている。
「はいそこでスクワットでもやってて」
「えーーーー!!」
「執務室で動き回るのは厳禁!分かったらすぐにやりなさい…」
「やだ!つまんねぇ!……分かったよやるよ」
ウタの無理難題に抗議の声をあげるルフィだったがすぐに意見を取り消した。
彼女がすぐに仲直りしないのもそうであるが、泣きそうな顔をしていた。
ここでようやくルフィが彼女は必死に私情を我慢していると理解した。
黙って黙々と罰を受けているルフィに安心してウタは業務を開始する。
『えーっと、ドレスローザ国王によるウタライブのご相談…やるわけないじゃない』
執拗に七武海のお膝元でライブをしろという命令書。
ウタは一通り文面を眺めると適当な言い訳をして拒否した。
彼女の中では、七武海はクロコダイルの件で失墜している。
ましてや世界政府を脅迫した海賊なら尚更、彼の為にライブをする気はない。
『ああ!ムカつく!!』
ドフラミンゴとのやり取りを思い出したウタは苛立って仕事にならなくなった。
あのフラミンゴ野郎を豚箱にぶち込めればどれだけいいか。
普段ならルフィセラピーで癒されるがイライラのきっかけはルフィである。
彼に頼れない彼女は、引き出しを開けて常備している紙を取り出した。
『全部、シャンクスのせいだ!!あんたのせいで!!さっさとくたばって!!』
ウタは“赤髪のシャンクス”の手配書を手に取って力を入れた。。
そして武装色の覇気を両手で込めてくしゃくしゃにそれを丸めた。
ウタは部下に八つ当たりしない様にシャンクスを恨む事でストレスを発散している。
それを見た雑用は更に真面目に筋肉トレーニングをやっていく。
『おい!誰かなんとかしろよ』
『やべぇ!マジで怒ってるよ…』
下士官や士官たちも上官が激怒しているのに気付いている。
それでも誰も声をかけられないのは彼女が求めているのを知っているからだ。
いや、知っているからこそあえて声をかけていない。
「准将殿!訓練で身体を動かして気分転換されてはどうですか?」
「ナイスアイディア!さっそく採用よ!どうせならあなたたちも来なさい」
「「「「えっ?」」」」
「身体が鈍ってないか私が確かめてあげる!!」
空気が読めないバカのせいで下士官や士官もストレス発散に巻き込まれた。
歌姫という認識が強いが彼女の身体能力はルフィ大佐とほぼ互角。
海軍本部の将官クラスでは無いと訓練相手にすらならないほどの実力差があった。
「雑用さん、そこにあるタオル4つを持って私についてきなさい」
「なんで4つも必要なんだ?」
「顔を拭く用と身体を拭くようだから。口答えせずにさっさと持ってきて」
「わ、わかった」
ルフィも苛立ったウタには勝てずタオルを2つ持って彼女の後ろ姿に続いた。
そしてトレーニングルームでウタ准将による訓練が始まった。
喧嘩ップルの海兵ルウタ2に続く