喜べ歌姫。君の願いはようやく叶う
レイレイウタ「♪〜♪♪〜」
サニー号のキッチンで、わたしは歌いながら中華鍋を振るう。
人間に戻ったらわたしは、人形の時には出来なかったいろんなことに挑戦した。
歌うのはもちろんだけど、最近はサンジ君に教わってこうやって料理作るようになった。
ウタ「でーきた!うん、美味しそう!」
完成したのは特製激辛麻婆ラーメン!
調味料はウソップとチョッパーが協力して作ってくれた、辛そうで辛くない、むしろ辛かったことを脳が認識しようとしてくれないラー油!
ウタ「うぅ~ん、美味しい…!」
ズズーっと麺を啜り、ハムハムと具の麻婆豆腐を匙で口に運ぶ。
何度も失敗を繰り返し、試作段階でつまみ食いしたルフィの舌に大ダメージを与え、チョッパーの鼻を数日使い物にならなくしたことも、今ではいい思い出だ。
サンジ「な、なあウタちゃん。コックの俺が言うのもどうかと思うが、本当に美味しいのか…?」
ウソップ「明らかに人間が食べていい色をしてないんだが、体は大丈夫なんだよな…?」
サンジ君とウソップが冷や汗をかいてるけど、こんなに美味しいものが体に悪いはずないよ?
ウタ「大丈夫だよ?それに人形の時は何にも食べられなかったし、匂いも分からなかったから、この刺激が癖になるの!
あ、それとサンジ君。デザートもお願いね♡」
丼一杯をまるごと平らげたわたしは満足してサンジ君にデザートをおねだりした。
サンジ君は釈然としない表情をしながらも口直しにパンケーキを作ってくれた。
ーーー約一月程前ーーー
ウタ「う〜ん、変な夢みちゃったなァ…」
ロビン「あら、どうしたの?」
ウタ「あ、ロビン!実はね…」
わたしは今朝観た奇妙な夢についてロビンに語った。
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夢の中でわたしは、奇妙な喋るステッキの力でファンシーな衣装に変身して戦っていた。
その私には同じように喋るステッキで変身する友達もいて、彼女やその他の仲間と一緒に街の平和を脅かす存在と戦っていた!
とっても楽しい夢だったんだけど、途中で場面が切り替わった。
…荒廃した町並みを、夢の中では私と親友だった可愛らしい白髪の女の子が一人で歩いていた。わたしはその子の背後霊のように、実体も持たずについていっているようだった。
その女の子はお腹が空いたのか荒廃した街唯一、まともに営業していたご飯屋さんに入った。
…なんだか本当にコックさん!?という見た目のとってもマッチョで渋かっこいい声のおじさんが女の子に振る舞った料理にわたしは目を見開いた。
“麻婆ラーメン”
わたしはその料理に魅力されてしまった。
残念なことに、女の子は食べることを拒否して、なのに何故か食い逃げ扱いで追い出されちゃった。
夢の中で、実態はなく食べられるはずもないのにわたしの眼はその“麻婆ラーメン“に釘付けだった。
???「食うか?」
ウタ?「食う!」
なんと麻婆ラーメンを作った店員さんは、何故か見えないはずの、そもそもその世界に存在していないはずのわたしに目を向けて、麻婆ラーメンを食べさせてくれた。
夢の中だけど、辛そうで辛くない、一周回って辛くないと脳が認識する程の刺激で長い間人形として食べることも痛みを感じることもなかった私にとって未知の感覚だった!
ウタ?「ごちそうさまでした!」
???「フム…。少女よ、そろそろ帰りなさい。“ここ”は君のいるべき場所ではない」
ウタ?「ありがとう、おじさん。美味しいご飯まで食べさせてくれて」
おじさんにお礼を言ったあと、わたしの意識は急速に薄れていった…。
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ロビン「随分と具体的な夢ね?」
ウタ「うん。時々、ウタワールドの中みたいなはっきりした感覚のある夢を見るの。ただ、今回は普段ともかなり違って、そもそもわたしが全く知らない世界のお話だったんだ」
ロビン「でも、ちょっと楽しそうね。」
ウタ「うん!それにね、お陰でちょっとやりたいことができたの
!」
そうしてわたしは夢で見たあの麻婆ラーメンを再現するために、一味を巻き込んだ一大プロジェクトを実行することになったのだ!
因みにこうして開発したラー油が、ウソップの新兵器扱いで戦いにも投入されることになるのは、もう少し先の話。