哀しみを背負いし者……

哀しみを背負いし者……


 試作デリ石のやらかしで菓彩兄貴ツインズ(の中の人)のヤムヤム推しが暴走!

 一体化して怪物化した双子にーちゃんは世界中の女の子にキュアヤムヤムの衣装を着せようと暴れ回る。

 そんな怪物に、デリ石効果で都合よく変身能力を取り戻したデパプリ&キュアスカイ&キュアグレース(女子高生概念)が立ち向かった!


「兄さんたちめ、世界中の女の子にヤムヤムのチャイナ服コスプレを強要するとは、なんと破廉恥な!」

「ちょっとあまねん?らんらんそんな恥ずかしい格好してないよ!?」

「らんだからイヤらしくならないだけで、他の子が着たらエロすぎて危険だと何故わからんのだ!兄さん!」

「あまねん、それどういう意味かなぁ!?」

 妹からの糾弾と、推しキュアであるヤムヤムの悲痛な叫び声に激昂した怪物は【みんなヤムヤムのチャイナコスになってしまえビーム】を放った。

 避けようがない光の奔流を浴びたプリキュアたち。

 光が消えた後、そこに現れたのは……

「くっ…ミニスカートな上にスリットが深すぎて、お、お尻がハミ出て…ッ!?」

 短いスリット入りスカートを必死に押さえるキュアフィナーレと、

「む…胸の部分破けたぁ……」

 弾けた胸部分をかき合わせてもたわわな豊満が隠しきれないキュアプレシャス。

「胸は苦しいしお尻もハミ出そう…でもお腹周りだけはちょっと余裕あるわ。大丈夫よヤムヤム、私はまだ戦えるわ!」

「ここぴーはちょっと黙って」

「らん!?」

 死んだ魚のような目で仲間から拒絶され、キュアスパイシーはショックのあまり戦意を喪失した。

 そして部外者二人は、

「ちょっと私の方が身長高いのでスカートがいつもより短く感じますが、それ以外は問題ありません!」

 上半身はサイズピッタリ、でも下半身はヤムヤムよりスカートが短く見えるスラリと伸びた美脚が魅力のキュアスカイが張り切る一方で、

「ふわぁ……そっかあ……私、らんちゃんとほとんど変わらないんだぁ……そっかぁ……」

 高校生にもなって未だに色々未発達だった現実を突きつけられたキュアグレースは戦意を喪失していた。

「くっ、先輩みんなを一撃で戦闘不能にするなんて、なんと恐ろしいコスチュームでしょうか!?」

「らんらんが一番ダメージ受けてる気がするんだけどなぁ……」

「うわっ、ヤムヤム先輩まで!?だったらここは私がなんとかします。ヒーローの出番です!」

 キュアスカイは高々と跳躍し、そのしなやかな四肢を存分に振るって空中で回転する。

「ヒィィロォオオガァァルゥ!スカイッ、パー……」

 ビリィ、とコスチュームに裂け目が走った。スカイの体操選手並みの動きに、ヤムヤムのコスチュームは耐えきれず空中四散!!

「きゃ─」

 直前までの勢いはどこへやら、スカイは着地するとうずくまって怯えた小動物のようにプルプルと震えていた。

「…こ、こんな恐ろしい罠が仕掛けられてたなんて……」

「無いよ!?無いからね!?」

「こんなことされたら…私、もうお嫁にいけません……グス」

「らんらんの責任みたいに言うのやめて!?」

 肌も顕に泣き濡れるスカイの体に、その時、ふわりと白い布がかけられた。

「この白いマント…それにこの匂い……ッ!」

「大丈夫か、ソラ?」

「ブラックペッパー師匠!」

 駆けつけたブラぺは愛弟子の無事を確認すると、すぐに、

「ゆい──だけじゃなくて他のみんなは無事か!?」

 周りを見渡し、そして、

「いいい!?」

 速攻で目を逸らした。その逸らした先でヤムヤムと目が合った。

「良かった、華満だけはいつも通りだな」

「ホッとされると逆に傷つくよブラぺ。ていうか、グレースも露出的には無事だかんね!?」

「いや、花寺先輩はなんというか…別の意味で見てらんないっていうか……」

 私もう高校生なのに、とぶつぶつ呟きながら膝をつくキュアグレースの痛ましい姿から目を背ける、ブラぺは怪物を見据えた。

「まったく、妹が妹なら兄も兄か。華満のようなお子様体型が好みだなんて倒錯にも程があるぞ!」

「失敬だぞ品田、私への深刻な風評被害だ!」

「一番の被害者はらんらんだよぉ!?」

 ろりこぉぉぉん、と怪物が咆哮をあげて【MYCビーム】を放ち、ブラぺに直撃する。

「ぐ!?──て、痛くない?」

 とブラぺは怪訝に思うも、

「なんか下半身がスースーするな……って、うわあああ!?」

 誕生、たっくんヤムヤムチャイナコスフォーム。

 その姿に満足したのか怪物は勝手に浄化され、あまねはハートキュアウォッチでしっかり撮影し、そしてヤムヤムがこの無駄な戦いの果てに哀しみを背負った、その背後で、明日への希望を失ったキュアグレースから大量のトゲパワワが溢れ出していたのであった……


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