和サンタコス景虎vs貫徹デバフ晴信
「ふんふんふーん、ふんふんふーん♪」
足取りは軽く、荷物は重く。
赤と緑、白で装飾された廊下を駆ける。クリスマスまで後わずかな今日この頃カルデア内は浮き足だったサーヴァントたちが散見される。プレゼントを待つもの、プレゼントを用意するもの。カルデアは作戦期間に入っていない時期はなんらかしらのイベントで浮かれている。私としても酒席の名目はいくらだってあっていいと思っているから歓迎だ。
荷物が揺れないようそれなりに配慮しながらたどり着いた先はとある一人の個室。ノックもインターホンももう向こうが諦めているので省略だ。上機嫌な私は勢いよく扉を開け、部屋の主人へと挨拶をした。
「メリー・クリスマース!晴信!いやまあ少し早いのですが」
諦め悪く部屋から押し出そうとするのを防ぐため、扉から離れようとしたところで異変に気付いた。
「……あれ、晴信?」
いつもの『帰れ!』が聞こえない。広くはない室内を改めて見れば、目的の人物はベッドにだらしなく転がっていた。靴も脱いでおらず、コートが掛け布団がわりになっているあたりよっぽどギリギリでベッドに到達したらしい。
さてはてこの男に一体何が起こったのやら、あとでつまみに聞くのも一興だろう。だけど今はせっかく私が来ているのだ。
「おーい、起きてくださーい。いいお酒もらったんですよ、今なら私のお酌付きですよ起きろー」
ペシペシと叩くが唸るだけで起きる気配見えない。とりあえず靴は脱がせて、首元は元から緩い服装なのでそれ以上はまあいいか。
机に置いた紙袋に入っているのはもらったワインとおつまみ。早く呑みたいので早く晴信にも起きて欲しい。ちょっと一人で飲む気分ではないのだ。よっこいしょとベッドに乗り込み、彼の顔を近くから見ると顔色がよろしくない。場合によっては医務室へ連れて行こうかと、何もなければ思ったのだろう。
揺さぶるために近付いた時から気付いていましたとも。こいつ酒臭いしタバコ臭い。私以外に酔いつぶされたのか。
腹が立つ。ぜひとも私の酒でつぶし直してやろうとも。
「はーるのぶー」
顔をペシペシと叩きづつけるとようやく彼の目が開き始める。しかめっ面で唸りながらの一言はこれだ。
「………赤?」
「いえーい、可愛いサンタ景虎ちゃんですよ」
廊下を歩いている私の裾を必死の形相で「衣装を作らせていただけませんか」と掴んできたのはお鶴殿だった。「夏に思いっきり作ったせいか、製図までで衣装を作らない日々が辛くて辛くて……どうか……御慈悲を……」と共感できない要望をしょぼしょぼの顔で訴えてきた。
暇ではあったのでついていくと、工房にいたハベニャン殿と共に生き生きと動き出し、着付けも含めて数時間で作業は終わった。
「赤いですねえ」
鏡の前でくるりと回り衣装の確認をする。
「はい、サンタ衣装ですから赤いですね」
「いやー、流石にマスターと一緒にみんなにプレゼントを渡すサンタさんには手え出せないからさぁ。作らせてくれてサンキュー」
「和風サンタはまだですからシンプルでも被り要素はなし。いやあそれにしても良い仕事ができました!基本はミニのワンピースですが生地と前合わせ風の襟で一般的なものとは差異を、髪型はサイドテールにさせていただきましたが重心などで問題はございませんか?ええ、ありがとうございます。ああそれとボレロもありますが羽織られますか?」
矢継ぎ早の説明は衣服に興味の薄い私には半分ほどしか聞き取れなかった。作ってもらった側なのになぜか感謝の言葉を受けながら工房を後にする。これもなぜか服をもらった側なのにお礼として良いワインまで頂いてしまった。
そのまま夕食をとりに行けばいつもと違う服装はマスターとマシュ殿にも好評、さらには手荷物のワインに気付いたキャットからおつまみももらえて機嫌は上々なのだった。
「それにしてもサンタかぁ、晴信さん赤いサーヴァントにかたっぱしから話しかけてたし見せてあげれば?」
と言ってきたマスターに乗ったわけではないが確かに見せびらかすのも一興だろう。
まあそんなわけで見てもらわなければ話が始まらないのだ。
起きた晴信に早速このサンタ服を見せてあげるため離れようとしたところ……で伸びてきた手につかまれ、私は待ても言えぬままベッドに引きずり込まれてしまった。
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やらかした、と悔いるのはいつだってその結果に気付いた後だ。
「んぐぇ……サーヴァントの体だからって馬鹿しすぎたか」
喫煙室で仲良くなった連中と酒を飲みながらの麻雀。負けたやつは強いものを一気飲み、それを見ながら周りもまた酒を飲む。煙たい部屋の中、楽しさと酩酊で時間を忘れた馬鹿騒ぎは赤い婦長殿の突撃により強制解散となった。
捕まってからの徹底看護の暇さとスリリングさは聞いただけだが是非にとは言えないものだ。言葉も交わさぬまま三々五々と逃げた中で俺は運良く逃げ切れた。
そして走り出したことで気付く己の体調の悪さ、ザルの自覚がある俺がこうなるとはいったいどれだけ時間が経っていたのやら。
「うわ、徹夜かと思っていたらもう昼すぎてんじゃねーか」
婦長殿は朝になったから呼びにきたのかと思ったが、それを越して今の時間まで馬鹿をしていたのなら誰かから通報でも入ったのかもしれない。そういえば途中何人かは寝たりまた参加したりをしていたような気もする。それを全通では確かにこの不調具合にもなるだろう。
あーくそ、だめだ、走ったのともろもろの自覚で体調不良が一気に追いついてきた。とりあえず寝たい、後のことは後で考えよう。そう思ってなんとか俺はベッドにたどり着いたのだった。
バシバシとまだ酒で痛い頭がさらに外部から叩かれる。やめたかと思えばやはり止まらない。延々と叩かれた頭は地面に埋まるかと思うほどだ。やめさせなければ、そう思いなんとか開けた目の先には。
「………赤?」
赤い服を着た景虎がいた。
…
……
………まだ寝てんだな俺。
赤い服の景虎なんぞ現実にいるとは思えん、あれは白い女だ。
夢か……夢ならまあ好きに動いても構わんだろう。
そう思えば体は軽くなり、自身から離れかけた腕を掴み引くと、その細い身体は簡単に転がってきた。ああやはり夢だったか。
抱きしめた背に着ているジャケットを引き下ろすと、その下に布地はなく白い背中が目の前に現れる。普段は髪でシルエットさえ見えない部分。一見無防備のようで、常在戦場が常のこの女がここをさらけ出すのは驕りではない無防備さを感じれて気味が良い。なるほどこの夢を作った自分はなかなかセンスがよろしい。
さらけ出された肩から首へと舌を這わせながら手を下へとやるが素足の手触りがない。目をやると赤いスカートの先に黒のタイツが伸びていた。
めんどくせぇ、破るか?と生地を引っ張ると、触られるごとにびくつき吐息を漏らしていた口から「ちょっと、何するつもりですか!」と叱られたのではいはいとスカートの中に手を突っ込んでタイツを膝まで下し、現れた白い腿を戯れにくすぐる。
ついでにどっこいしょと上半身を起こして景虎を自分に寄りかからせた。
「あなた、何がしたいんです」
と彼女が赤く上気した顔をうろん気に歪めてこちらを見上げてくるが、自分の色に染まった女を見ればそりゃ嬉しかろうよ。それも我の強い白い女がだ。
「赤が似合うな、おまえは」
あくまで着ている服なので破れたらそれまでのためうかつに動けない(ジャケットで腕、タイツで足微拘束)景虎さんを夢だと思って好き勝手する晴信さん書きたかったけどエロを書く才能がなかったよ