和の竹葉
スレの内容から考えたんだよ察しろ華のバレンタインの季節、任務や休みが中々合わず2月14日……はとうに過ぎ16日。一人の男が本命のチョコを貰うために延期と謳いながら奮闘している頃。周りの女性達は友チョコや本命を男性に上げはじめ、俗に言うイチャイチャモードに入ったところ。
「坂野、柘……酒のもうぜ……」
「お、酒って聞いてきたぜ」
無精ヒゲの草臥れた男は二人に声をかけた。一人は女性で成人しているが、もう一人は少年でまだ未成年の学生、酒は到底呑めない。そこにもう一人、混ざろうと人影が三人の上にできる。
「混ぜてくれ…僕も貰ってないんだ」
「そうしよう……ほら、俺もチョコ作ったし……」
ほいよっと軽く袋に入ったチョコを投げ渡す。中身を取り出し食べ始める、遠い目をしながら黄昏れはじめた。
哀愁漂う二人の男性に対し、少年は誰かから貰ったシュークリームを頬張っていた。
「え?」
この空気を刺すように、手作りのお菓子を口に運んでいる。
「ああ、そうか、うん……おいしいかい?」
「はい!」
男性二人に影が出来るだろう輝かしさに、心は一滴、零れていく。二人の心情は(貰えなかった)に包まれていたが、傷を舐め合うように酒に溺れる手段を取る。
「ほれ、呑むか」
度数が高すぎるものを渡して一瞬で潰れたり、爆散したり。ついには喉が死にかけた時。水色の髪を三つ編みにしている少女が側にやってきた。
「なんでバレンタインなのに街中で酒を飲んでる人がいるのだろうか……?」
「んまいからだよ、俺の元にはいいさけそろってんよ〜」
「……そ、そうですか」
酒瓶を抱え、鹿座雲の肩に腕を伸ばしてだる絡みを始める酔っぱらいに、水を操れるからと言う理由で未成年飲酒を進める酔っぱらい。
「極・初心者用だ」
「……これ飲んだ方がいいんですかね?」
悩みはしたが色んな思考が巡り合った結果、丁重にお断りした。
「んぐっ!? ん、んん〜!」
シュークリームをバクバク食っていた緑髪の少年は喉を詰まらせ、近くにあった飲み物で流し込む。手元にある飲み物は二人の酔っぱらいが所持している、そう。つまりは酒だ。
初心者用を飲んだとは思えないぐらいに急速に顔が火照っていく、度数が高めだったかもしれない。
「……それ!?」
咄嗟に気づいたのは冷静であろう鹿座雲。水をとってこようか悩んだが、アルコールが身体に吸収される前に取り出そうと考案する。すぐに少年を安静にして、一つの案を実行しようと飲みかけのペットボトルを取り出して水を口に含む。
「……んむ」
優しく唇に口付けをして、水を胃に流す。数秒もすると口を離し、鹿座雲はペッとアルコールを吐き出した。
「ゲホッゲホッ!」
アルコールの刺激される味が口内に残る感覚に咳き込む、勘でしたことだが上手くいった。さようなら、私のファーストキス……キスは酒の味でした。と今後も語る。
「……」
「起きましたか? まだ暫く安静にしていてくださいよ」
「俺、酒で……」
「やっつけ本番でしたが上手くいったようで何よりです」
さて、この事は水に流しましょう。術式の名の通り、と鹿座雲はチョコで舌を誤魔化す。坂野は意識が無かったため、この出来事は覚えていない。が、光景を確認している酔っぱらいが二人いる。
「おいおい、こりゃあ……三角関係か!?」
「ぇぷ……違うやろ……多分……」